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11 黄色い葉
しおりを挟むトレントのギャバに教えられたヒントを頼りに、森の小道を注意深く見つめながら歩いていると、タピカが声をあげました。
「あっ! 見つけた」
タピカが指さす方には新緑の葉をたくさんぶら下げた木の枝。
その中に一枚だけ黄色い葉が混ざっている。
「本当だ、それに形がちょっと他のと違うね」とルク。
他の葉は小舟のような形をしているのに、この葉だけがホットケーキを四つに切ったうちの一つのような形をしている。
「でかしたぞ、タピカ。でもこんなの、よほど気をつけていないと、きっと見逃しちゃうよ」
兄のフィオやみんなからも褒められて、「えへへ」と照れるタピカ。
「さて、あとはこいつをどうするかだよなぁ」
ルクの背にくくられたままのカラスのセンバが、首だけを動かしながらつぶやく。
それこそが一番の問題。
「とりあえず、ちぎってみる?」とルク。
「食べたら魔法がとけるとか」とタピカ。
「うーん、トレントのギャバは、なんと言ってたっけかな」とセンバ。
センバの意見を聞いて、あの時、ギャバが言っていた言葉を、よくよく思い出してみるフィオ。
彼はたしか、こう言っていた。『目印は黄色い葉だ』と。
「目印……、目じるし……、めじるし……か。それってつまり見て、知るためのしるしってことだから……。ひょっとしたら!」
なにごとかをひらめいたフィオ。
黄色い葉のある枝の下までいくと、後ろ足にてぴょんと立ち上がり、周囲をきょろきょろ。
そして、何かを見つけたらしく、「やったー」とよろこびの声をあげました。
フィオの突然の行動に、ふしぎそうな顔をしていたルクとタピカとセンバ。
そんな彼らにフィオは言いました。
「やっぱり思ったとおりだ。ほら、ここからあっちを見てみて。あそこにも黄色い葉が見えるでしょう」
フィオのいるところから、彼が見ている方角と同じ方を眺める一行。
そこには確かに一枚の黄色い葉の姿が。
「なるほど、黄色い葉が目印ってのは、こういうことだったのかい。あとはコレをたどって、行ったり来たりすればいいわけか」
「なるほどー、それにしてもフィオはすごいなぁ」
センバとルクは感心しきり。
「そうとわかれば、兄ちゃん、さっさと行こう」
「ああ、みんなも見落としがないか、しっかり探してくれよ」
黄色い葉を見つけると、そこから道の前後を見渡す。
するとつい先ほどとは違う場所にて、新たな黄色い葉を発見。
それを目指してゾロゾロと移動する。
真っ直ぐの道を行ったり来たりする一行。
その回数が十五を超えたとき、ふいに目の前の景色がかわりました。
これまでは同じような真っ直ぐな森の小道だったのが、一転して開けた空間に。
森の奥をぽっかりと丸くくり抜いたような場所。
そこにあったのは、小さな畑、小さな花壇、小さな窓がある赤茶けた屋根の家。どれもこれもがこじんまりとしている。
「あれが……、魔女の家……、なのかな?」
フィオもどこか自信なさげ。
ようやく森の迷路を抜け出せたと思ったら、目の前に姿を見せたのは、わりと普通の家。
魔女の住居と言われても、ちょっと信じられないほどに、ありふれたモノでした。
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