下出部町内漫遊記

月芝

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077 最終決戦! 破

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「きゃーっ」

 新生ニンバのコクピット内でわたしは悲鳴をあげた。
 すぐ近くを幾筋もの閃光が駆け抜けては工場敷地内を切り裂き、建屋や煙突などを薙ぎ倒す。
 母船からの攻撃だ。
 わたしたちが超長距離攻撃をくり返すこと八度目にして、ついにこちらの位置が特定されてしまった。
 これによりブロックランド中に散開していた敵勢が、工場跡地へとわらわら集結しつつある。
 一枝さんいわく、こういう状態を『四面楚歌』というそうな。詳細は割愛するけど、ようは孤立無援ということ。

 主力である対空砲を肩に担ぎつつ、ライフル片手に応戦せねばならないから、わたしとカクさんは大忙しだ。
 ジンさんもまた装填作業をこなしながら、新生ジープに搭載してある銃座の光線銃やミサイルに大砲を、自動操縦でバンバンぶっ放しては応戦している。
 とはいえ、このままでは時間の問題であった。
 けれども、もはやあとには引けない。
 よって作戦を続行する。

「次弾装填完了! いくぞ、音と衝撃に備えろ」

 ジンさんが叫ぶなり――

 ドォゴオォォオォォォオォォォォオォォォォォーン!

 轟雷が鳴り響き、九発目の榴弾が発射された。
 放たれた弾丸が螺旋に回転しては突き進む。射線上にいた敵勢を蹴散らし、敵陣に穴をうがち、母船へと着弾する。

 ドン! ときて、パラララララ……

 母船の表面にて大きな破壊の華が咲く。
 中心にて大きな爆発が起こっては、星が尾を引きながら放射状に飛び散るようにして小さな爆発が連鎖する。
 その姿はまるで夜空に打ち上げられた花火のよう。

 ぐらり。

 ついに母船がかたむいた。
 これまでのわたしたちの砲撃により、内部でも破壊が進行しているようで、船体のあちこちから黒煙があがっている。
 なまじ図体が大きいのが仇となって、維持できずに自壊も始まっているっぽい。
 高度もかなり下がってきている。
 蓄積されたダメージにて、もはや青息吐息。

 とはいえ、こちらも限界を迎えつつあった。
 対空砲を支え続けていた新生ニンバの機体は、そこかしこがずっとギシギシきしみっぱなしにてイヤな振動が続いている、いつ壊れてもおかしくない。
 連続で砲撃を行ったせいか、ブロック同士の連結部分が浮いており、対空砲そのものもバラバラになりそう。
 なのにデカアリと小型のUFOらの襲撃は苛烈を極め、もはや迎撃が追いつかないほど。
 この危機的状況をかんがみて。

「くっ、もってあと一発といったところか。こうなったら次で決めるしかない」

 ジンさんの言葉に、わたしとカクさんはうなづき、一枝さんも「チチチ」とさえずり、その小さなくちばしを母船へと向けた。

 わたしはボタンを押して、自分たちの機体の周囲に複数の小樽をばら撒く。
 コロンコロンと散らばった小樽たちは、すぐさまシューシューと勢いよく煙を吐き出し始める。
 こうして煙幕を張っては、群がってくるザコどもの目をくらましつつ、最後の一発を見舞うべくすみやかに準備を整えていく。
 習うよりも慣れろとはよく云ったものにて、装填作業も十回目ともなればかなりスムーズ、ちゃっちゃと終えたところで。
 いざ発射という段になって「ぬ? これは……しばし待て」と制止したのはカクさんであった。

「ちょっと、どうしたのよ? ぐずぐずしていたら撃てなくなっちゃう」
「そうだぞ、急がないと」

 わたしとジンさんはそう急かすも、カクさんはただ「待て」をくり返すばかり。
 そうしたら「あ、アレをご覧よミユウ」と一枝さんがパタパタ羽ばたき。
 煙幕の切れ間からチラッと見えたのは母船の姿だ。ズンズンこっちに近づいてきている。
 いいや、それだけじゃない。あれは……下降をしているのだ。
 ついに高度を維持できなくなったらしい。グゥオングォンと腹の底に響く駆動音を響かせながら、こちらへと向かってきている。
 傍目にはゆっくりした動作に見えるが、それは体が大きいからだ。実際にはかなり速い。
 ほどなくして工場跡地の上空へと差しかかるだろう。

 カクさんが待ったをかけた意図が読めた。
 どうやら母船がここまできたところでトドメを刺すつもりのようだ。
 そうとわかれば、やるべきことをするまで。
 新生ニンバの操作を担当しているわたしは、砲身を担ぎ直しては煙突のように立てて、砲口を真上へと向けガッチリ抱き固定する。

 待つことしばし――

 ついにその瞬間が訪れた。
 巨大円盤が上空へと差しかかり、無防備な腹が見えた。キラキラしており、まるでビルだらけのメトロポリスを逆さまにしたよう。
 そんなメトロポリスの中心には大きな穴があいていた。
 何かがすっぽりと抜け落ちたかのようなスペース。
 その正体は、わたしたちが最初の砲撃にて破壊したあの円筒状の箇所にて。艦載されている敵機が出入りしていたハンガーデッキ。
 奇しくも一発目に破壊したのと同じ箇所であった。
 ちょうどいい具合に穴の奥が丸見えとなっていたもので、そこを目がけて。

「撃てーっ!」

 司令官代行の一枝さんの号令の下、ラストショットが放たれた。
 射出された砲弾は真っ直ぐに天へと向かって飛んでいき、穴の中へと吸い込まれていく。
 そしてしばしの緊迫した沈黙の後に、母船はボカンと大爆発を起こした。
 わたしたちの勝利である。

「やったね!」
「ふむ。しぶとい相手じゃった」
「やれやれ、どうにかなったか」
「なんとか第五の試練もクリアだねえ」

 喜びに湧く下出部防衛隊の面々。
 かくしてブロックランドの平和は守られた。
 とおもわれたのだけれども……

 母船が頭の上から落っこちてきちゃったもので、わたしたちは「あんぎゃあ~~」


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