下出部町内漫遊記

月芝

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074 巨大円盤、降臨!

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 下出部防衛隊の拠点はガレージにて――

 一角怪獣ゴジマデの迎撃に成功するも、相討ちとなったニンバ。
 ゴジマデの爆発に巻き込まれてバラバラにされてしまった。
 なのに、どうしてわたしとジンさんが無事なのかといえば、脱出装置のおかげである。

 コクピットに冷房設備はなかったけれども、いざという時のための備えはしてあった。
 危機的状況のさなか、カクさんが脱出用のスイッチを押してくれたことで、座席ごと機体の外へと射出された。
 おかげで助かったのだけれども、ぶっちゃけものすご~く怖かった。

 そこいらの遊園地にある絶叫マシンなんて目じゃない!

 なにせもの凄いスピードで100メートルばかり上空にまで高らかと打ち上げられたあげくに、おもちゃみたいなペラペラのパラシュートのみを頼りに、ふらふら地上へと舞い降りてこなければならないのだから。
 しかも爆風のオマケ付きである。
 マジで死ぬかとおもった……
 思い出すだけでガクブル、わたしはおへその辺りがキューッと痛くなっちゃう。

 壊されたのはニンバだけではない。
 改造ジープも大破した。
 ジープを運転していたジンさんも内臓が飛び散ってバラバラになったけど、彼はもともと人体模型なのでへっちゃら。パーツを拾い集めるのはけっこうたいへんだったけど。
 なお一枝さんはいち早く脱出しており無事であった。

 現在の防衛隊の戦力は大幅に低下している。
 このままでとても戦いを継続できないとあって、急遽、二号機と新型車の制作に着手しているところだ。
 一度組み立てたことあるので要領はわかっている。
 だから作業そのものはサクサクと進んでいる。
 もちろん一号機をそっくりそのまま再現するのではなくて、改良も施す。

 まずは足回りの強化だ。
 バカ正直に自分の足でちんたら走っていたら、とてもではないが追っつかない。
 そこでローラーを取りつけて、シャーッと走れるようにした。

 あとは武器もチェンジ。
 大砲の威力はなかなかのモノだったけど、ゴジマデにはあまり効いていなかった。そのためもっぱら棍棒として使っていたぐらいである。
 この反省を踏まえて、次のは大型のライフルっぽいのにした。
 よりピンポイントを狙い撃つことで一点突破の貫通力を重視した。

 近接戦闘用の武器も用意する。
 とはいえ、あまり兵装を揃えてもかさ張って持ち運べないので、ふだんは縮めておき必要に応じてジャキンとのばせる警棒を作った。これならば腰に差しておけば、さして邪魔にはならないだろう。
 カクさんはちょっと不満そうだけど、今回はコレでガマンしてもらうしかない。
 他にも細々としたモノを作ったので、それについてはまた追々と。

 新型車の方は、車体はほとんど変わらず。
 その代わりに武装を山と詰んだ。
 いくら強力とはいえ銃座の光線銃だけでは火力が心許ないので、ミサイルやら大砲も搭載する。
 これでジンさんは引き続き援護射撃をしながら、わたしたちのサポートに徹するとのこと。

  〇

 突貫にてどうにか作業を終えたのは三時間後。
 さすがにへとへとである。
 良い子はもう寝る時間になっていたこともあって、わたしも仮眠室のベッドで「おやすみなさい」とゴロンと横になるも――

 ビィイィィィィーッ!
  ビィイィィィィーッ!
   ビィイィィィィーッ!

 けたたましい音が拠点内に鳴り響いたもので、わたしはびっくりして跳ね起きた。

「――っ! 警報? でもいままでのとは様子がちがう」

 これまでのサイレンは「ウ~ウ~」という音だったのに。
 わたしは急ぎベッドから出て、みんなの居るところへと向かおうとするも、不意にグラリとして視界が上下左右にブレる。廊下の途中で建物全体が激しい横揺れに襲われたもので「きゃーっ」
 とてもではないが立っていられない。
 わたしはその場でしゃがみ込んでは、両手で頭をかばいつつ揺れが収まるのを待つ。

 時間にすればほんの数分のことだろうが、やたらと長く感じた。
 震動はなおも続いているけれども、ようやく激しい揺れが収まったもので、わたしはヨロヨロと立ち上がった。

 控室の方もくちゃくちゃになっており、壁面に設置されてあるモニターも大きくかたむきヒビが入っている。
 それでも映像は表示されており、ジンさん、カクさん、一枝さんらは画面を食い入るように見つめている。
 だからわたしも見た。そして「ひっ」とおもわずのけぞり口元を手で押さえた。

 映し出されていたのは巨大な円盤だ。
 レッドクィーンやゴジマデなんて比べものにならないほどの超大さにて、おそらくはブロックランドの街の三分の一、もしくは半分ほどにも相当するかも。
 そんなのが夜空に浮かんでは一方的に街を攻撃している。
 さっきの震動は円盤によるものであったのだ。
 悪夢のような光景である。
 あまりのことに、わたしたちは絶句。
 このタイミングでスピーカーから聞こえてきたのは――

『ガーガー……敵の母船が出現した。下出部防衛隊は総力を結集しこれを迎撃せよ』

 いよいよ第五の試練の儀も大詰め、最終決戦である。
 とはいえ、さすがに大きすぎでしょう!
 しかも空の上とか、あんなのいったいどうすりゃいいの?


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