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91 偶像崇拝
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王子派とお姫さま派の両陣営を、一夜にしてほぼ壊滅状態に追い込み、それぞれの身柄を処理した私たち第七部隊は、ちょっと寄り道をして神殿に立ち寄りました。
あれからどうなっているのか気になったからです。さすがに白いモフモフ軍団は目立つので、少し離れた場所にて待機、留守はリースさんに任せます。悪さをしたら毛をむしっていいと言っておきました。
神殿内部はなんとなく閑散としていました。
時間帯云々ではなくて、どことなく活気が失せたというか。
あと、そこかしこに小さなお地蔵様みたいな彫り物が、やたらと目につきます。前に来たときには、あのようなモノは見当たりませんでした。
しげしげ眺めると、オカッパ頭の市松人形を模したモノに見えなくもありません。
きっと気のせいでしょう。
「あれ? これって花蓮さまじゃないんですか」
そんなことをセラーさんが言いましたが、私は何も聞えませんったら聞えません。気のせいと言ったら、気のせいなのです。
かつて巨大な女神像が祀られてあった場所に行くと、そこには小さなお堂が建っており、明け方近くにも関わらず、熱心にお祈りをしている老婆の姿がありました。
後ろ姿になんだか見覚えがあるなぁーと眺めていると、しばらくしてようやく思い出しました。異世界に召喚された直後に、王城内にてずっと私のお世話をしてくれていたお婆ちゃんメイドです。
そんな彼女が曲がった腰を一層曲げて、熱心にお祈りをしています。
悪いとは思いましたが聞き耳を立てます。すると彼女は病気になった孫娘の回復を祈っているではありませんか! なんだかんだでお世話になった方ですし、ここはひと肌脱がねば女が廃るというもの。
老婆に気づかれないように、忍び足にてお堂の裏に回った私は、こっそりと鞄の中から取り出したお薬を彼女の前に置きます。手を合わせて祈るのに夢中の彼女は気づきません。これは元から私の鞄の中に入っていたモノ。ゴリマッチョなオジ神様の御配慮、それを少しばかりお裾分け。
「敬虔なる者よ、汝にコレを与えよう。用法用量を守り、服用するがよい」
声音を変えて話しかければ、老婆がびっくり仰天!
危うく昇天しそうなほどの驚きぶりを見せますが、目の前に山と積まれたお薬を見て、涙ながらに感謝してくれました。薬は神様印ですので、きっと大丈夫でしょう。
渡すモノを渡せば、こっそりと退散します。
「なんだかんだで花蓮さまもノリノリじゃないですか。これはいよいよ教団を立ち上げるべきなのかもしれませんね」とセリーさん。もちろん全力で拒否です。そんなことをしたら、一生、口を利きませんから。
「でもすでに本国ではカルト的人気ですよ。花蓮さまって……」
「マジでっ!」
セラーさん曰く、ゴーレムファイト創始者である私の名を冠した記念大会「花蓮杯」、多額の寄付金により救われた堤の記念碑を筆頭に、「花蓮基金」から配当される分配金によって、多くの校舎の改修や設備の充実が計られ、その功績を称える石像やら石碑は数知れず乱立、数々の食の革命を成したがゆえに、多くの飲食店ではお守り代わりにその姿絵を額に入れて飾り、数々の冒険譚を綴った書籍は大ベストセラー、子供たちの憧れの人ランキングでは、ここしばらく魔王様やガラシャさまを抑えて一位を獲得し、今では魔王城の中央塔を皆が「花蓮の塔」と呼ぶ……等々、つらつらと出るわ出るわ。
これには私も頭を抱えるしかありませんでした。
花蓮基金ってなんなの……、あっ! 商人さんに丸投げしていた利益が元本か!
適当に処理しておいてとはお願いしましたが、まさかそんな律儀に処理していようとは……。
あれからどうなっているのか気になったからです。さすがに白いモフモフ軍団は目立つので、少し離れた場所にて待機、留守はリースさんに任せます。悪さをしたら毛をむしっていいと言っておきました。
神殿内部はなんとなく閑散としていました。
時間帯云々ではなくて、どことなく活気が失せたというか。
あと、そこかしこに小さなお地蔵様みたいな彫り物が、やたらと目につきます。前に来たときには、あのようなモノは見当たりませんでした。
しげしげ眺めると、オカッパ頭の市松人形を模したモノに見えなくもありません。
きっと気のせいでしょう。
「あれ? これって花蓮さまじゃないんですか」
そんなことをセラーさんが言いましたが、私は何も聞えませんったら聞えません。気のせいと言ったら、気のせいなのです。
かつて巨大な女神像が祀られてあった場所に行くと、そこには小さなお堂が建っており、明け方近くにも関わらず、熱心にお祈りをしている老婆の姿がありました。
後ろ姿になんだか見覚えがあるなぁーと眺めていると、しばらくしてようやく思い出しました。異世界に召喚された直後に、王城内にてずっと私のお世話をしてくれていたお婆ちゃんメイドです。
そんな彼女が曲がった腰を一層曲げて、熱心にお祈りをしています。
悪いとは思いましたが聞き耳を立てます。すると彼女は病気になった孫娘の回復を祈っているではありませんか! なんだかんだでお世話になった方ですし、ここはひと肌脱がねば女が廃るというもの。
老婆に気づかれないように、忍び足にてお堂の裏に回った私は、こっそりと鞄の中から取り出したお薬を彼女の前に置きます。手を合わせて祈るのに夢中の彼女は気づきません。これは元から私の鞄の中に入っていたモノ。ゴリマッチョなオジ神様の御配慮、それを少しばかりお裾分け。
「敬虔なる者よ、汝にコレを与えよう。用法用量を守り、服用するがよい」
声音を変えて話しかければ、老婆がびっくり仰天!
危うく昇天しそうなほどの驚きぶりを見せますが、目の前に山と積まれたお薬を見て、涙ながらに感謝してくれました。薬は神様印ですので、きっと大丈夫でしょう。
渡すモノを渡せば、こっそりと退散します。
「なんだかんだで花蓮さまもノリノリじゃないですか。これはいよいよ教団を立ち上げるべきなのかもしれませんね」とセリーさん。もちろん全力で拒否です。そんなことをしたら、一生、口を利きませんから。
「でもすでに本国ではカルト的人気ですよ。花蓮さまって……」
「マジでっ!」
セラーさん曰く、ゴーレムファイト創始者である私の名を冠した記念大会「花蓮杯」、多額の寄付金により救われた堤の記念碑を筆頭に、「花蓮基金」から配当される分配金によって、多くの校舎の改修や設備の充実が計られ、その功績を称える石像やら石碑は数知れず乱立、数々の食の革命を成したがゆえに、多くの飲食店ではお守り代わりにその姿絵を額に入れて飾り、数々の冒険譚を綴った書籍は大ベストセラー、子供たちの憧れの人ランキングでは、ここしばらく魔王様やガラシャさまを抑えて一位を獲得し、今では魔王城の中央塔を皆が「花蓮の塔」と呼ぶ……等々、つらつらと出るわ出るわ。
これには私も頭を抱えるしかありませんでした。
花蓮基金ってなんなの……、あっ! 商人さんに丸投げしていた利益が元本か!
適当に処理しておいてとはお願いしましたが、まさかそんな律儀に処理していようとは……。
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