77 / 101
77 勇者ごぼう抜き作戦
しおりを挟む
「えぇーっ! 皇帝にプロポーズされたのに断ったの! なんてもったいない……、超玉の輿なのに」
食堂にて先の遠征について宮原さんとお話をしていたら、素っ頓狂な声を上げられてしまいました。集まった周囲の視線が痛いです。どうやら彼女は地位に目が眩んでいるようなので、懇々と教えて上げました。
王妃様なんてなるもんじゃないって、苦労ばかりでシンドイだけだって、あんなのやってたら眉間に深い皺が刻まれて、顔面小じわだらけになって、ストレスでイボ痔を拗らせて、寿命を縮めるだけだって……、そうしたら、いつの間にやら背後に立っていたガラシャさんに、もの凄い笑顔でオカッパ頭を鷲掴みにされました。
「ほほーう、花蓮の目には、私はそのように見えていたのだな」
いえいえ、あくまで世間一般の偏見に塗れた意見を述べただけで、決してガラシャさまのことでは……ああ、そんなに力を入れないで下さい、私の頭は皆さま方と違って、卵の殻のようにデリケートなんですから。
言い訳は聞いてもらえず、そのまま訓練場に連行されて、散々に的にされました。
そりゃあ、もう、必死に逃げましたとも。岩をも軽く貫通する銀色のレーザーみたいな攻撃なんて、当たらなくても怖いものは怖いのです。死と紙一重の逃避行は、精神をガリガリ削ってくれました。
たっぷり三時間も絞られて、私はヘロヘロになって塔の上の自室に戻りました。
するとリースさんが台所で包丁を研いでいました。
ときおり切れ味を確認しながら、「皇帝殺す」とか呟いていましたが、聞かなかったことにしておきます。もしものときはセラーさんに取り抑えるようにお願いしましたが、無理だと断られてしまいました。
そんなこんなで久しぶりにのんびりと魔王城で過ごしていると、勇者組の窮状を報せる情報が続々と入って来ました。
他国に渡った連中は初めこそ、丁重に持て成されていたようですが、所詮は元高校生のガキどもです。組織での在り方、人の使い方、その他諸々の社会生活に必要な経験が足りなさすぎて、すぐに馬脚を現したようで、すっかりお荷物扱いされているんだとか。
なまじっか勇者なんて肩書があるから増長するんですよ。自分が特別だなんて思い上がった子供が辿る末路なんてこんなものでしょう。それでも一人ぐらいは巧い事やれても良さそうなものなのに、さすがは後先も考えずに行動するだけのことはありますね。そんな人たちは放置しても構わないでしょう。
問題は王国に残ったクラスメイトたちです。露骨に王子やお姫様に媚びれるようなタイプは、上手に渡世を渡っているようですが、教室の生態ピラミッドの下層域に生息する大人しい子たちは、そういうのが苦手です。そのせいでかなりご苦労なさっている様子。
モンスター相手に手間取っている子たちに、人間を斬れとか、同窓の子を殺せとか、ちょっと無理があるでしょうに。なにせ彼らは私と違って、互いがちゃんとした顔見知りなんですから。
でもね、その辺の方たちって、けっこう知識が豊富だったり、特定の分野に秀でていたりするんですよねぇ。趣味に生きる! みたいに。
そこんところ、どう? って宮原さんに訊ねてみたら、何人か面白そうな子がヒットしました。
人類連合がいい具合に傾いていることですし、ここいらで勇者組をごそっと引き抜きませんか、と魔王様と宰相様に提案すると、「花蓮の好きなようにやってみろ」との了承を得ました。
そこで砦にいるアルティナさんやフリージアさんにも協力を仰ぎ、「勇者ごぼう抜き」作戦を敢行することとなりました。
作戦なんて大袈裟なことを言っていますが、たんに王都にて目星をつけたクラスメイトらを、掻っ攫ってはドラゴンにて空輸直送便しちゃおう、という雑な内容です。
彼らを押し込めるコンテナは工房長に頼んで作ってもらいました。箱型ながら内部はカプセルホテルのようになっており、中に放り込んだら、到着するまでグッスリという仕掛けがついています。さすが工房長、相変わらずいい仕事をしてくれます。
今回の作戦では主に女子を中心にして、あとは男子もついでに適当に拾ってくる予定です。
食堂にて先の遠征について宮原さんとお話をしていたら、素っ頓狂な声を上げられてしまいました。集まった周囲の視線が痛いです。どうやら彼女は地位に目が眩んでいるようなので、懇々と教えて上げました。
王妃様なんてなるもんじゃないって、苦労ばかりでシンドイだけだって、あんなのやってたら眉間に深い皺が刻まれて、顔面小じわだらけになって、ストレスでイボ痔を拗らせて、寿命を縮めるだけだって……、そうしたら、いつの間にやら背後に立っていたガラシャさんに、もの凄い笑顔でオカッパ頭を鷲掴みにされました。
「ほほーう、花蓮の目には、私はそのように見えていたのだな」
いえいえ、あくまで世間一般の偏見に塗れた意見を述べただけで、決してガラシャさまのことでは……ああ、そんなに力を入れないで下さい、私の頭は皆さま方と違って、卵の殻のようにデリケートなんですから。
言い訳は聞いてもらえず、そのまま訓練場に連行されて、散々に的にされました。
そりゃあ、もう、必死に逃げましたとも。岩をも軽く貫通する銀色のレーザーみたいな攻撃なんて、当たらなくても怖いものは怖いのです。死と紙一重の逃避行は、精神をガリガリ削ってくれました。
たっぷり三時間も絞られて、私はヘロヘロになって塔の上の自室に戻りました。
するとリースさんが台所で包丁を研いでいました。
ときおり切れ味を確認しながら、「皇帝殺す」とか呟いていましたが、聞かなかったことにしておきます。もしものときはセラーさんに取り抑えるようにお願いしましたが、無理だと断られてしまいました。
そんなこんなで久しぶりにのんびりと魔王城で過ごしていると、勇者組の窮状を報せる情報が続々と入って来ました。
他国に渡った連中は初めこそ、丁重に持て成されていたようですが、所詮は元高校生のガキどもです。組織での在り方、人の使い方、その他諸々の社会生活に必要な経験が足りなさすぎて、すぐに馬脚を現したようで、すっかりお荷物扱いされているんだとか。
なまじっか勇者なんて肩書があるから増長するんですよ。自分が特別だなんて思い上がった子供が辿る末路なんてこんなものでしょう。それでも一人ぐらいは巧い事やれても良さそうなものなのに、さすがは後先も考えずに行動するだけのことはありますね。そんな人たちは放置しても構わないでしょう。
問題は王国に残ったクラスメイトたちです。露骨に王子やお姫様に媚びれるようなタイプは、上手に渡世を渡っているようですが、教室の生態ピラミッドの下層域に生息する大人しい子たちは、そういうのが苦手です。そのせいでかなりご苦労なさっている様子。
モンスター相手に手間取っている子たちに、人間を斬れとか、同窓の子を殺せとか、ちょっと無理があるでしょうに。なにせ彼らは私と違って、互いがちゃんとした顔見知りなんですから。
でもね、その辺の方たちって、けっこう知識が豊富だったり、特定の分野に秀でていたりするんですよねぇ。趣味に生きる! みたいに。
そこんところ、どう? って宮原さんに訊ねてみたら、何人か面白そうな子がヒットしました。
人類連合がいい具合に傾いていることですし、ここいらで勇者組をごそっと引き抜きませんか、と魔王様と宰相様に提案すると、「花蓮の好きなようにやってみろ」との了承を得ました。
そこで砦にいるアルティナさんやフリージアさんにも協力を仰ぎ、「勇者ごぼう抜き」作戦を敢行することとなりました。
作戦なんて大袈裟なことを言っていますが、たんに王都にて目星をつけたクラスメイトらを、掻っ攫ってはドラゴンにて空輸直送便しちゃおう、という雑な内容です。
彼らを押し込めるコンテナは工房長に頼んで作ってもらいました。箱型ながら内部はカプセルホテルのようになっており、中に放り込んだら、到着するまでグッスリという仕掛けがついています。さすが工房長、相変わらずいい仕事をしてくれます。
今回の作戦では主に女子を中心にして、あとは男子もついでに適当に拾ってくる予定です。
5
お気に入りに追加
1,644
あなたにおすすめの小説
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ
もぐすけ
ファンタジー
シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。
あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。
テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるイルリアは、婚約者から婚約破棄された。
彼は、イルリアの妹が婚約破棄されたことに対してひどく心を痛めており、そんな彼女を救いたいと言っているのだ。
混乱するイルリアだったが、婚約者は妹と仲良くしている。
そんな二人に押し切られて、イルリアは引き下がらざるを得なかった。
当然イルリアは、婚約者と妹に対して腹を立てていた。
そんな彼女に声をかけてきたのは、公爵令息であるマグナードだった。
彼の助力を得ながら、イルリアは婚約者と妹に対する抗議を始めるのだった。
※誤字脱字などの報告、本当にありがとうございます。いつも助かっています。
【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる