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71 獅子身中の虫
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わずか五日、王子の身辺警護中に、二度ほど奇禍に見舞われました。
一度目は私がお供で城内のお庭を歩いていたら、頭上から植木鉢が! とっさに王子を蹴飛ばして事なきを得ました。おかげで王子は腰の打撲だけで軽傷です。
二度目は寝室にて毒を持つ蟲が出たので、セラーさんが滅却処分をしました。おかげで部屋の中はスッキリ、さっぱり。もちろん王子は無事です。家具類はすべて駄目になりましたが、これも尊い犠牲でしょう。
だというのに、後でお付きのメイドさんに、グチグチとお小言を頂戴しました。「仕事が雑すぎる」とのことです。
見周りと称して城内を散策していると、貴族たちの逢引き現場に遭遇しました。もちろん、野暮な真似なんてしませんよ。じーっとしばらく見つめてから、無言で立ち去ろうとしたら、何故だか金貨が詰まった袋を強引に手渡されてしまいました。べつにそんなことをしなくても誰にも話しませんよと言ったのですが、是非にとのことなので、ありがたく懐に入れました。
なおも散策を続けていると、今度は物陰にてヒソヒソと話す男女の声が……。
またもや逢引き現場か? と思ったのでこっそりと覗いてみると、何やら様子がヘンです。頭からフードつきのマントを被った男が、若いメイドさんに詰め寄っています。
「やるんだ、弟さんを助けたいんだろう?」
「無理です、そんなこと出来ません」
二人の会話を盗み聞きしていると、どうやらメイドさんの弟さんがご病気で、多額の治療費が必要らしい。ですがそんなお金はすぐに工面できない。そこにつけ込んで男が何か悪い事をさせようとしている。
ピンときた私は、物陰より踊り出て、男に向かって銃を乱射。
激しい銃声が轟き、ゴム弾と麻痺弾をポコポコ受けて、フード男は悶絶。
騒ぎを聞きつけてやってきた騎士たちに、「なんか怪しいから、とりあえず厳しく取り調べておいて」と言って丸投げします。ただし、訳ありメイドさんの身柄はこちらで預かりました。そして彼女から事の経緯を説明してもらうと、あの男から王子の食事に毒を盛るようにと、持ちかけられていたことが判明しました。
冴えわたる私の勘、どうやらアイツは真っ黒だったようです。
このメイドさんには正式に証言を頼み、そのお礼と忠義の褒美として、先ほど手に入れた金貨の詰まった袋を渡しておきました。これで弟さんを治してやるがよいです。
こんな感じで未然に陰謀を一つ潰して、王子の下に戻ると、お付きのメイドさんに「護衛がフラフラと出歩くな」と怒られてしまいました。裏でしっかりお仕事をしていたと説明したのですが、まったく信じてもらえませんでした、何故?
捕まえた男は口が堅く、何も話そうとしません。
せっかくの情報源を前にして、指を咥えているだけの城の人間たち。
業を煮やしたセラーさんが、ちょちょいと闇の技術を使って、さくっと白状させました。口を割らせた方法の詳細は怖いので聞いていません。
判明する地下組織、芋ずる式に掴まっていく獅子身中の虫たち。連中の毒牙は、かなり城内の奥深くにまで浸透しており、王族らの一歩手前にまで伸びておりました。危く手遅れになるところでしたよ。ですが此度のことで城内からは、とりあえず敵勢力を一掃することに成功します。スッキリしたおかげで、城内の人事担当が穴埋めに悲鳴を上げていますが、それは私の預かり知らぬこと。
なお、この大掃除の手柄は、すべて王様の手腕ということにしておきました。こうでもしないと求心力の低下は避けられませんから、ひいては王子にも火の粉が及びそうですしね。
あとは城外で蠢いている害虫どもを始末すれば、私の任務も完了です。
一度目は私がお供で城内のお庭を歩いていたら、頭上から植木鉢が! とっさに王子を蹴飛ばして事なきを得ました。おかげで王子は腰の打撲だけで軽傷です。
二度目は寝室にて毒を持つ蟲が出たので、セラーさんが滅却処分をしました。おかげで部屋の中はスッキリ、さっぱり。もちろん王子は無事です。家具類はすべて駄目になりましたが、これも尊い犠牲でしょう。
だというのに、後でお付きのメイドさんに、グチグチとお小言を頂戴しました。「仕事が雑すぎる」とのことです。
見周りと称して城内を散策していると、貴族たちの逢引き現場に遭遇しました。もちろん、野暮な真似なんてしませんよ。じーっとしばらく見つめてから、無言で立ち去ろうとしたら、何故だか金貨が詰まった袋を強引に手渡されてしまいました。べつにそんなことをしなくても誰にも話しませんよと言ったのですが、是非にとのことなので、ありがたく懐に入れました。
なおも散策を続けていると、今度は物陰にてヒソヒソと話す男女の声が……。
またもや逢引き現場か? と思ったのでこっそりと覗いてみると、何やら様子がヘンです。頭からフードつきのマントを被った男が、若いメイドさんに詰め寄っています。
「やるんだ、弟さんを助けたいんだろう?」
「無理です、そんなこと出来ません」
二人の会話を盗み聞きしていると、どうやらメイドさんの弟さんがご病気で、多額の治療費が必要らしい。ですがそんなお金はすぐに工面できない。そこにつけ込んで男が何か悪い事をさせようとしている。
ピンときた私は、物陰より踊り出て、男に向かって銃を乱射。
激しい銃声が轟き、ゴム弾と麻痺弾をポコポコ受けて、フード男は悶絶。
騒ぎを聞きつけてやってきた騎士たちに、「なんか怪しいから、とりあえず厳しく取り調べておいて」と言って丸投げします。ただし、訳ありメイドさんの身柄はこちらで預かりました。そして彼女から事の経緯を説明してもらうと、あの男から王子の食事に毒を盛るようにと、持ちかけられていたことが判明しました。
冴えわたる私の勘、どうやらアイツは真っ黒だったようです。
このメイドさんには正式に証言を頼み、そのお礼と忠義の褒美として、先ほど手に入れた金貨の詰まった袋を渡しておきました。これで弟さんを治してやるがよいです。
こんな感じで未然に陰謀を一つ潰して、王子の下に戻ると、お付きのメイドさんに「護衛がフラフラと出歩くな」と怒られてしまいました。裏でしっかりお仕事をしていたと説明したのですが、まったく信じてもらえませんでした、何故?
捕まえた男は口が堅く、何も話そうとしません。
せっかくの情報源を前にして、指を咥えているだけの城の人間たち。
業を煮やしたセラーさんが、ちょちょいと闇の技術を使って、さくっと白状させました。口を割らせた方法の詳細は怖いので聞いていません。
判明する地下組織、芋ずる式に掴まっていく獅子身中の虫たち。連中の毒牙は、かなり城内の奥深くにまで浸透しており、王族らの一歩手前にまで伸びておりました。危く手遅れになるところでしたよ。ですが此度のことで城内からは、とりあえず敵勢力を一掃することに成功します。スッキリしたおかげで、城内の人事担当が穴埋めに悲鳴を上げていますが、それは私の預かり知らぬこと。
なお、この大掃除の手柄は、すべて王様の手腕ということにしておきました。こうでもしないと求心力の低下は避けられませんから、ひいては王子にも火の粉が及びそうですしね。
あとは城外で蠢いている害虫どもを始末すれば、私の任務も完了です。
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