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65 偽女神の福音
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目標をゲットした私たちは一目散に王都を脱出して、魔族領に帰還しました。
ずっとアルティナさんの背中の上で空輸です。
宮原さんは、間近にしたドラゴンの迫力でポテンと気を失ってしまいました。
そんなポニーテールの彼女を、これ幸いと縄でグルグル巻きにして、一気に運んじゃいました。
関所とか面倒なので、王都郊外から飛び立ち、夜陰に紛れて、ぶっ飛ばしてもらいました。
砦を経由して、私の軌跡を辿るかのように魔王城へと連れて来られた、宮原さん。
個性豊かな魔族の方々に泡を吹いては倒れ、じきに慣れたと思ったら、今度はその繁栄ぶりに目をぱちくりしている姿は、可愛らしかったです。
髪型や口調などが、どこかザックリとして男勝りなのに、よく気を失ったり、趣味が料理っていう点がギャップがあっていいですね。
魔王様との謁見を済ませて、そのまま厨房に突撃して、料理長や他のゴツイ面々ともすぐに意気投合、晴れて厨房勤めと相成りました。
彼女はいちからカレーが作れるお人なので、新しい環境に慣れた頃を見計らって、お願いしてみるつもりです。
「……に、しても魔族ってみんな凄いよね。こんなのに喧嘩売るって、人類連合は馬鹿なのかな」
魔族領での新生活に慣れるにしたがって、王国の連中が言っていた嘘を知り、現実を目の当たりにして、宮原さんがしみじみと仰いました。
「ぶっちゃけると、うちのリースさんだけでヤれますね。蛇神さま降臨で連合なんて一方的に蹂躙です。王国程度なら、厨房の皆さんだけでも楽勝です。魔王様が本気だしたら、大陸ごと沈没です」
「マジでか! 私、魔王様のこと、ちょっと冴えないおっさんかなって思ってたんだけど」
「騙されてはいけません。人化を解いたら魔王城より巨大です。拳一発で大概のモノが粉砕です。魔王剣という強力無比な武器もあるそうですし、なによりあのガラシャさんの旦那が、ショボいわけないじゃないですか」
「あー、あのカッコいい人でしょう。前に食堂にきたときに、わざわざ声をかけてくれたんだ。王妃様なのに気さくで素敵、あっちのクソ連中とは大違いだよ。ただし騎士団長は除く」
宮原さんお話しでは、王様はふんぞり返ってブヒブヒ命令口調、王子は上からのエロ目線で盛った猿、お姫さまは目の奥が笑ってなくて笑顔が怖い、他の貴族や神官どもは露骨過ぎて反吐がでる、唯一、騎士団長さまだけが、丁寧かつ親身になって接してくれたんだとか。そういえば訓練でも一番、熱心に指導なさっていましたよね。
勇者組の跳ねっかえりの野郎どもも、彼の言葉にだけは耳を傾けていたらしいですし、みなの良き兄貴分といったところですかね。教師になったら、いい先生になりそうです。
「ところでさぁ、なんで沢良宜さんは、塔の上の女神さま扱いされてんの?」
「……いろいろあったんですよ。気がついたときには、もう手遅れでした」
遠い目をする私に、「そっか、あんたも色々と大変だったんだなぁ」と宮原さん。
すみません。たいして苦労はしていません。すべて成り行きです。運と逃げ足だけで、ここまで来てしまいました。ただ、流れに身を任せていたら、こうなっていました。
でも、それは黙っておきます。だって怒られたくありませんから。
そんなこんなで魔族領は、新たな異世界人の住民を得ました。
彼女のもたらした元の世界の料理の知識に、料理長の腕と情熱が合わさって、これにより魔族領の食文化は、加速度的に進化していきます。
そして、そんな人材をもたらした、私の評価も当人の預かり知らぬところにて、勝手にうなぎ昇りするのでした。
ずっとアルティナさんの背中の上で空輸です。
宮原さんは、間近にしたドラゴンの迫力でポテンと気を失ってしまいました。
そんなポニーテールの彼女を、これ幸いと縄でグルグル巻きにして、一気に運んじゃいました。
関所とか面倒なので、王都郊外から飛び立ち、夜陰に紛れて、ぶっ飛ばしてもらいました。
砦を経由して、私の軌跡を辿るかのように魔王城へと連れて来られた、宮原さん。
個性豊かな魔族の方々に泡を吹いては倒れ、じきに慣れたと思ったら、今度はその繁栄ぶりに目をぱちくりしている姿は、可愛らしかったです。
髪型や口調などが、どこかザックリとして男勝りなのに、よく気を失ったり、趣味が料理っていう点がギャップがあっていいですね。
魔王様との謁見を済ませて、そのまま厨房に突撃して、料理長や他のゴツイ面々ともすぐに意気投合、晴れて厨房勤めと相成りました。
彼女はいちからカレーが作れるお人なので、新しい環境に慣れた頃を見計らって、お願いしてみるつもりです。
「……に、しても魔族ってみんな凄いよね。こんなのに喧嘩売るって、人類連合は馬鹿なのかな」
魔族領での新生活に慣れるにしたがって、王国の連中が言っていた嘘を知り、現実を目の当たりにして、宮原さんがしみじみと仰いました。
「ぶっちゃけると、うちのリースさんだけでヤれますね。蛇神さま降臨で連合なんて一方的に蹂躙です。王国程度なら、厨房の皆さんだけでも楽勝です。魔王様が本気だしたら、大陸ごと沈没です」
「マジでか! 私、魔王様のこと、ちょっと冴えないおっさんかなって思ってたんだけど」
「騙されてはいけません。人化を解いたら魔王城より巨大です。拳一発で大概のモノが粉砕です。魔王剣という強力無比な武器もあるそうですし、なによりあのガラシャさんの旦那が、ショボいわけないじゃないですか」
「あー、あのカッコいい人でしょう。前に食堂にきたときに、わざわざ声をかけてくれたんだ。王妃様なのに気さくで素敵、あっちのクソ連中とは大違いだよ。ただし騎士団長は除く」
宮原さんお話しでは、王様はふんぞり返ってブヒブヒ命令口調、王子は上からのエロ目線で盛った猿、お姫さまは目の奥が笑ってなくて笑顔が怖い、他の貴族や神官どもは露骨過ぎて反吐がでる、唯一、騎士団長さまだけが、丁寧かつ親身になって接してくれたんだとか。そういえば訓練でも一番、熱心に指導なさっていましたよね。
勇者組の跳ねっかえりの野郎どもも、彼の言葉にだけは耳を傾けていたらしいですし、みなの良き兄貴分といったところですかね。教師になったら、いい先生になりそうです。
「ところでさぁ、なんで沢良宜さんは、塔の上の女神さま扱いされてんの?」
「……いろいろあったんですよ。気がついたときには、もう手遅れでした」
遠い目をする私に、「そっか、あんたも色々と大変だったんだなぁ」と宮原さん。
すみません。たいして苦労はしていません。すべて成り行きです。運と逃げ足だけで、ここまで来てしまいました。ただ、流れに身を任せていたら、こうなっていました。
でも、それは黙っておきます。だって怒られたくありませんから。
そんなこんなで魔族領は、新たな異世界人の住民を得ました。
彼女のもたらした元の世界の料理の知識に、料理長の腕と情熱が合わさって、これにより魔族領の食文化は、加速度的に進化していきます。
そして、そんな人材をもたらした、私の評価も当人の預かり知らぬところにて、勝手にうなぎ昇りするのでした。
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