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36 食券
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待てどもガラシャさんは戻ってこなかった。
ぼけっと待っているのも暇なので、日課の創世魔法を繰り返して、せっせと文房具造りに精を出す。なんだかよくわからないのですが、いくらでも出せるんですよね、コレ。キリがないので、とりあえず千個ずつで止めていますが、魔力の消費量が少ないんでしょうか。
沢山出せるのはいいのですが、後で纏めて整理するのがちょっと大変です。
とりあえずリースさんの反応からして、色鉛筆は魔族領でも売れそうなので、いざという時のために溜め込んでおきましょう、他の品はおりおり様子見でしょうか。
そんなことを考えながら作業に没頭していたら、早や陽が暮れてしまいました。最上階から眺める夕陽のなんと美しいこと。これを独り占めとは、なんとも贅沢な話です。
翌朝、ベッドから起きると、リビングにて揃って土下座をしている方々がいました。なかにはアルティナさんより私の身柄を引き受けた士官や、ここまで案内して下さった犬耳青年の姿もありました。
「これはいったい……」
困惑する私に、彼らを引っ立ててきたガラシャさんが言いました。
「どうやらこいつらが伝言を回している間に、連絡ミスが起きたようだ。推薦状も関係ない部署の書類に紛れ込んでいたし……、花蓮、済まなかったね。本当なら賓客としてもてなすハズだったのに、こんな場所に押し込めたりして」
ガラシャさんにまで頭を下げられてしまい、こっちのほうが大恐縮です。
こんなところって、私にしてみれば夢のタワーマンション暮らしなのです、むしろご褒美なのです。だから素直に「気にしないで下さい」と告げると、土下座の方々から涙ながらに感謝されてしまいました。どうやらここに連れて来られる前に、かなりガラシャさんからお灸を据えられたご様子。可哀想に、みなげっそりと頬はこけ、目の下に深い隈をつくり、明らかに憔悴しきっています。よほど怖かったのでしょう。
朝一からのちょっとした騒動の後、土下座の皆様を見送っていると、ガラシャさんがふとリビングのテーブルに出しっぱなしにしていた、文房具に目を留めました。
「花蓮、これは何だい?」
興味があるようでしたので、ノートに鉛筆で適当に文字を書き、これを消しゴムで消すという一連の動作を見せると、えらく不思議がられました。どうやら魔族領でもインクのペン字が普及しているらしく、このような道具は見たことがないとのことです。
売れるかと訊ねたら、売れるとの回答が得られました。どうやら私はこっちでも喰いっぱぐれはなさそうです。とりあえず一式をお近づきの印にとプレゼントしたら、もの凄く喜んでくれました。
なお私の滞在先は相談の上、このままにしておいてもらうことにしました。
なにせここ、居心地いいですから。お世話役はすぐに手配して下さるとのことで、どうやらお弁当生活とはお別れのようです。あれはあれで良かったのですが、さすがに客人に、毎食、弁当とか魔族の沽券にかかわると言われてしまっては、我儘を通すわけにもいきません。
さらば、焼肉弁当、また会う日まで。
「なんだ? アレがそんなに気に入ったのかい。だったら五階の食堂に行けば、いつでも買えるぞ。花蓮は客人だから後で食券の束を渡して置く、それで好きなだけ購入するといい」
おかえり、焼肉弁当。そして、こんにちわ、タダ券。
お世話役の人が来たら、ある程度、自由に出歩いていいとの許可も頂けました。どうやらガラシャさんは相当に地位の高い人のようですね。正直、気になります、でも私は訊ねませんよ、うっかり藪をつついてなんてことになったらゴメンですから。
今日も危機察知がいい仕事をしてくれています。
ビビビとこう予感が働くのです、触れるな危険って。
ぼけっと待っているのも暇なので、日課の創世魔法を繰り返して、せっせと文房具造りに精を出す。なんだかよくわからないのですが、いくらでも出せるんですよね、コレ。キリがないので、とりあえず千個ずつで止めていますが、魔力の消費量が少ないんでしょうか。
沢山出せるのはいいのですが、後で纏めて整理するのがちょっと大変です。
とりあえずリースさんの反応からして、色鉛筆は魔族領でも売れそうなので、いざという時のために溜め込んでおきましょう、他の品はおりおり様子見でしょうか。
そんなことを考えながら作業に没頭していたら、早や陽が暮れてしまいました。最上階から眺める夕陽のなんと美しいこと。これを独り占めとは、なんとも贅沢な話です。
翌朝、ベッドから起きると、リビングにて揃って土下座をしている方々がいました。なかにはアルティナさんより私の身柄を引き受けた士官や、ここまで案内して下さった犬耳青年の姿もありました。
「これはいったい……」
困惑する私に、彼らを引っ立ててきたガラシャさんが言いました。
「どうやらこいつらが伝言を回している間に、連絡ミスが起きたようだ。推薦状も関係ない部署の書類に紛れ込んでいたし……、花蓮、済まなかったね。本当なら賓客としてもてなすハズだったのに、こんな場所に押し込めたりして」
ガラシャさんにまで頭を下げられてしまい、こっちのほうが大恐縮です。
こんなところって、私にしてみれば夢のタワーマンション暮らしなのです、むしろご褒美なのです。だから素直に「気にしないで下さい」と告げると、土下座の方々から涙ながらに感謝されてしまいました。どうやらここに連れて来られる前に、かなりガラシャさんからお灸を据えられたご様子。可哀想に、みなげっそりと頬はこけ、目の下に深い隈をつくり、明らかに憔悴しきっています。よほど怖かったのでしょう。
朝一からのちょっとした騒動の後、土下座の皆様を見送っていると、ガラシャさんがふとリビングのテーブルに出しっぱなしにしていた、文房具に目を留めました。
「花蓮、これは何だい?」
興味があるようでしたので、ノートに鉛筆で適当に文字を書き、これを消しゴムで消すという一連の動作を見せると、えらく不思議がられました。どうやら魔族領でもインクのペン字が普及しているらしく、このような道具は見たことがないとのことです。
売れるかと訊ねたら、売れるとの回答が得られました。どうやら私はこっちでも喰いっぱぐれはなさそうです。とりあえず一式をお近づきの印にとプレゼントしたら、もの凄く喜んでくれました。
なお私の滞在先は相談の上、このままにしておいてもらうことにしました。
なにせここ、居心地いいですから。お世話役はすぐに手配して下さるとのことで、どうやらお弁当生活とはお別れのようです。あれはあれで良かったのですが、さすがに客人に、毎食、弁当とか魔族の沽券にかかわると言われてしまっては、我儘を通すわけにもいきません。
さらば、焼肉弁当、また会う日まで。
「なんだ? アレがそんなに気に入ったのかい。だったら五階の食堂に行けば、いつでも買えるぞ。花蓮は客人だから後で食券の束を渡して置く、それで好きなだけ購入するといい」
おかえり、焼肉弁当。そして、こんにちわ、タダ券。
お世話役の人が来たら、ある程度、自由に出歩いていいとの許可も頂けました。どうやらガラシャさんは相当に地位の高い人のようですね。正直、気になります、でも私は訊ねませんよ、うっかり藪をつついてなんてことになったらゴメンですから。
今日も危機察知がいい仕事をしてくれています。
ビビビとこう予感が働くのです、触れるな危険って。
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