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05 居残り

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 転校初日、緊張した面持ちで、これから通うことになる高校に登校した黒髪の少女。
 どこかぼんやりとした風のオッサン男性教師に、教室まで連行されていく。
 賑やかな教室は二人が一歩足を踏み入れた途端に、しんとなる。
 みなの好奇な視線が見知らぬ少女へと注がれる。

「お前ら、転校生の沢良宜花蓮(さわらぎかれん)さんだ。仲良くしてやってくれ。……と、いかん、出席簿を忘れてきた。ちょっと取ってくるから、適当に自己紹介でもしててくれ」

 無情にも転校生を放置して、足早に教室を出ていく担任教師。
 これには教壇付近に取り残された私も「えー」である。いきなり転校生を押し付けられた形になるクラスメイトらも、戸惑いを隠せません。
 なんともいえない空気が流れる中、真っ先に動いたのは一人の男子生徒でした。

「僕はこのクラスの委員長をしている山本大樹(やまもとだいき)、よろしくね」

 今時珍しい黒髪黒目の黒縁眼鏡男子が爽やかに挨拶をしてきました。いかにもクラスのまとめ役といった感じの人です。どうやら気まずい空気を察して、斬り込み役を買ってくれたのでしょう。とりあえず挨拶に応じて、私がペコリと頭を下げようとしたとき、教室中の床一面に、巨大な光の輪が出現しました。近頃ではすっかり見慣れたアレです。
 そう思ったときには、すでに体が動いていました。廊下へと続く扉に体当たりをぶちかまし、教室より脱出する。廊下側に倒れた扉ごと転がり出た私が振り返った時には、教室中が光に包まれており、一瞬だけ明滅したと思ったら消えて、後には誰の姿も残っていませんでした。

「ふー、危ないところでした」

 立ち上がった私は、新品の制服のスカートの裾を払い、埃をとる。
 かなり派手に扉を押し倒したので、その音に驚いた隣の教室の先生や生徒たちが、どうしたのかと寄ってきました。ちょうどその時に担任の先生も、出席簿片手に戻って来ました。

「嘘だろ……、誰もいない。まさかのボイコットか! おい、沢良宜、みんなどこにいったんだ?」

 先生に訊ねられましたので、消えたと正直に話したら、そのまま職員室に連行されて軟禁されてしまいました。そっから先は学校中が上を下への大騒ぎです。なにせ白昼堂々と校内より、生徒たちが集団失踪してしまったのですから。警察にも連絡がいって刑事らが生徒たちの荷物を調べると、財布から携帯電話まですべて残されてある。つまりみな身一つで消えてしまったことも、事態の混乱に拍車をかけました。
 唯一の事件の目撃者である私は、警察からも学校からも散々に問い詰められました。しかし同じことしか答えようがありません。だから私はずっと「みんな光に包まれて消えてしまった」と繰り返すことしか出来ません。わずかな時間で小柄な私に何も出来ないのは一目瞭然なので、関与こそは疑われませんでしたが、当分の間、自宅待機を命じられてしまいました。
 こうして私の転校初日は終了したのです。

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