112 / 226
111 侵略者
しおりを挟む
現在、かつてないほどのピンチにオレは直面している。
武力ならばいかようにも立ち向かおう。それだけの経験と鍛錬は積んできたつもりだ。
だが今回は違う。為す術がない。
侵略行為を黙って見ていることしか出来ない。
《オレは絶対にコイツには勝てない》
三日前、クロアが何やら拾ってきた。
薄汚れた毛玉の塊、四肢はある、形状からして犬っぽい何かだ。なにせ目が三つもあるからな。額に第三の目とかってちょっと格好いい。
なんでも裏庭の隅っこで、蹲っていたのを見つけたらしい。
浅く呼吸はしているものの、グッタリとして目も閉じられたまま。
「ムーちゃん、お願い」
金髪美少女がオレにおねだり。
近頃では、オレがアイテム収納内に色々と溜め込んでるのを知っているので、ときおりこのような手段を打ってくるようになった。とんだ小悪魔である。
まぁ、別にイケずをする理由もないし、とりあえずオレ様印の元気が出るお薬を出していやる。ちなみに成分を抑える代わりに、味を調整して子供でも飲める甘い味に仕上げてある。
何故だかオレが作るポーション類は、効能が増すほどに味が落ちていく。最高レベルの薬に関しては、飲んで死ぬほど苦しむか、飲まずに死ぬかの究極の二択を迫られるほどの味だ。なにせ死の森の屈強なモンスターどもが、泡を吹いてぶっ倒れるぐらいに不味いからな。
クロアがスプーンにてチビチビと飲ましてやると、毛玉はすぐに息を吹き返す。
半日も経つ頃にはすっかり元気を取り戻して、ガウガウと甘噛みするまでに回復。念のために一晩オレが付きっきりで様子を見て、翌朝には普通に出された食事をムシャムシャ。もう大丈夫かなぁ、と思ったら今度はその体の汚れが気になった。そこで洗浄技能を発動してキレイにしてやると、中から現れたのは真っ白なモフモフ。毛艶も素晴らしくサラサラで、手触りは言うことナシ。
これにクロアとルーシーさんが速攻で陥落。
次にメイドさんらも、あっという間に篭絡されてしまった。
女の子らは特にモコモコに弱いからな。
オレに洗濯物を押し付けて、モフモフを囲んでは、きゃあきゃあ騒いでいる。
《いや、別に手伝うのは構わないのだが、君たちはそれでいいのか?》
そんな心配をしていたらメイド長のエメラさんが寄ってきた。
あー、怒られると思っていたら、エメラさんもモコモコの方へ。
まさかのメイド長まで堕とすとは、これにはオレもビックリ。
そういえば……、改めて思い返してみればこの屋敷って、この手の生き物がほとんどいない。せいぜい馬舎にいる連中ぐらいだが、アイツらは伝説の覇王が乗るような、胸筋ムキムキだから、たとえ女子供といえども気安く触れさせない。自分が認めた相手にしか肌を許さない鋼鉄の操の持ち主。オレだって何度も馬房に足を運んで、せっせと身の回りの世話を手伝ったりして、ようやくだからな。
その点、この白いのはお手軽だ。手を伸ばせばすぐそこに癒しが、この誘惑に抗える者はそうはいまい。なんだかんだで、みな日頃のお仕事で疲れているからな。
などと余裕をかましていたら……。
クロアがコイツと一緒になって、ベッドで寝ていたのを皮切りに、わずか数日のうちに次々とオレの居場所が奪われていった。
わふわふと可愛らしい声で鳴いてはクロアの隣を占領し、ルーシーさんのけしからんお胸に抱かれ、メイドたちに囲まれてちやほやされ、ついには料理長からクッキーまでこっそりと貰っている。
何と言う奴だろう。恩を仇で返すとはこのことだ。
今ではもう、みんなオレのことなんて見向きもしない。所詮は便利な雑用係ぐらいにしか考えていなかったのか? などと憤慨もしたが、すぐにしゅんとへこむ。だってそうだろう。誰だって得たいの知れない謎生物の青いスーラなんかより、モコモコのふわふわの白い方がいいに決まっている。
本当はもう少しクロアの成長を見守るつもりだったが、もはや彼女にとって、オレは必要ないのかもしれない。それにヒトの心は移ろうもの。どんなお気に入りだって、いずれは飽きて忘れられてしまう時が来る。きっとそれが今ということなのだろう。
ならば立つ鳥後を濁さず。粛々とオレはここを去ることにしようと思う。
爺には黙って行くとしよう。下手に声をかけたら面倒になりそうだしな。エメラさんに渡してある子機の分体は、タイミングをみて抜け出すように指示しておけばいいだろう。
何年も世話になったクロアの部屋をざっと見渡す。
ここに来てから本当に色んなことがあった。
最後がこんな別れになることに、一抹の寂しさは隠せないが、この苦い想いもまた、いずれはオレの中で溶けて混ざり合って一つになることだろう。
《いざ、さらば。みなさま、どうかお元気で》
オレはクロアの部屋の扉をそっと閉めた。
屋敷を出て行こうとしたところで、肝心な人への挨拶をするのを忘れていることに気がついた。裏の林の奥に住み着いているナイスガイなドリアードのドリアードさんと、コギャルという名のドリアードの友人たち。コギャルは別にいいがドリアードさんには散々に世話になったし、きちんとお別れの挨拶しておくのが筋であろう。
そう思って彼のもとへと向かったら、林の奥にでっかいモコモコがいた。
「あー、ムーさん、丁度よかった。今夜にでもお願いしようと思っていたところだったんだよ」
「チーッス。ムーにーやん。ゲンキっすかー」
木の表面に浮いた顔は皺くちゃなのに、声が超爽やかさんなドリアードさんが、いきなり声をかけてきた。コギャルは相変わらずのようで何より。
《えーと、それはそうと、そちら様は一体どなた?》
「こちらはランドハイターのハロさん。とりあえず触手回線を開いてあげてくれないかな」
促されるままにデッカイのに触手を伸ばして回線を繋ぐ。
すぐに相手が話かけてきた。
「お初にお目にかかります。私、ハロと申します。この度は愚息がご迷惑をおかけしまして、申し訳ありませんでした」
ぴょこんと頭を下げるデッカイの。
すると額あたりの毛が動いて、そこに三つ目の瞳が姿を現した。
《愚息って、もしかしてあの子の……》
「はい。母でございます。あの子ったら、私がほんのちょっと目を離した隙にいなくなってしまって。慌てて匂いを追って来ましたら、宅様で手厚く保護されているご様子。一時は永遠の別れも覚悟しておりましたが、もうなんてお礼を申していいのやら」
ヨヨヨと嬉し涙を浮かべるハロさん。改めて間近でよく見てみれば犬というよりは狐に近い姿をしている。あの子に比べて毛も随分と長い。でも何よりも気配がまるで感知できないことが驚きだ。
「あぁ、それはこの毛のおかげです。なんでだか探知系の魔力を吸収して働きを阻害しちゃうんですよ。おかげで敵に見つかりにくいですし、狩りも楽なんですが、油断しているといきなりバッタリなんてこともありますから」
訊ねてみたらあっさりと答えてくれた。
「さて、こうして子供の無事が確認出来たのまでは良かったんだけど、お母さんが姿を現したら騒動になると思ってね。だったら君にお願いしようかと、相談していたところだったんだよ」
ドリアードさんに言われて、ハロさんも「どうかお願いします」と頭を下げてきた。もちろんオレに否はない。迷子が母親のところに帰る、当たり前のことだ。ただ問題はすっかり懐いているクロアたちである。いきなり消えたら、さぞや心配することであろう。
そこでハロさんにはもう一晩だけ、ここで待っていて貰うことにした。その間にオレが算段をつけると約束をして。
とりあえず貯蔵していたお菓子類や食べ物なんかを大量に放出しておく。
《ちゃんと任されたから心配せずに、これでも食べて待っていてくれ》
「重ね重ねの御配慮、ありがとうございます」
「いつも悪いね。ムーさん」
「ニーやん、ゴチになるっス」
《いいから、いいから、じゃ行ってくるから。明日の朝、オレが合図をしたらハロさんは顔を出してくれ》
「かしこまりました」
オレはドリアードさんにその場を預けて、急いで屋敷へと戻る。
目当ての人物はメイド長のエメラさん。助力を請うならあの人しかいない。まだ起きてくれているといいんだけど。
翌朝、オレから事情を聞かされたエメラさんが、クロアにすぐ近くに母親が迎えに来ていることを報せると、彼女は「よかった」と言って、実にあっさりとモコモコを手放した。幼くして母を亡くしているからこそ、母子は一緒にいたほうが良いと考えているのだろうか。それに比べて隣にいた大人のはずのルーシーさんの方が、未練たらたらである。
「別れに立ち会われますか?」
「ううん。やめておくわ。だって泣いちゃうもの」
エメラさんの言葉にクロアはそう答えた。
母親への引き渡しはオレとエメラさんによって、つつがなく行われる。
ハロさんが姿を現すと、一目散に駆けていく小さなモコモコ。
母は子の首を咥えると、軽く礼をしてそのまま林の奥へと消えて行った。
その姿が完全に見えなくなるまで見送ってから、オレたちは屋敷へと戻る。
「三つ目の白い長毛……ランドハイターですか。獣人たちからは、神獣として敬われている幻のモンスターですよ。本当に貴方といると驚かされっぱなしです」
《えっ! そんなに凄い奴だったのか。道理でまるで気配がわからなかったハズだ》
「ええ、噂には聞いていましたが凄い能力です。あの巨体で領都の警備網どころか、こちらの警備体制をも、あっさりと潜り抜けているんですから」
《そうだな……、ところでクロアの奴は大丈夫かな》
「そうですね。先ほどはあのように強がっていましたが、きっと寂しい想いをしておられるかと。だからムーさん、お願いしますね」
《しょーがねぇなぁ。承りましょう》
青いスーラがプヨンポヨンと跳ねていく。
自分を必要としてくれている少女のもとへと。
その後ろ姿を銀髪のハーフエルフが優し気な眼差しで見ていた。
武力ならばいかようにも立ち向かおう。それだけの経験と鍛錬は積んできたつもりだ。
だが今回は違う。為す術がない。
侵略行為を黙って見ていることしか出来ない。
《オレは絶対にコイツには勝てない》
三日前、クロアが何やら拾ってきた。
薄汚れた毛玉の塊、四肢はある、形状からして犬っぽい何かだ。なにせ目が三つもあるからな。額に第三の目とかってちょっと格好いい。
なんでも裏庭の隅っこで、蹲っていたのを見つけたらしい。
浅く呼吸はしているものの、グッタリとして目も閉じられたまま。
「ムーちゃん、お願い」
金髪美少女がオレにおねだり。
近頃では、オレがアイテム収納内に色々と溜め込んでるのを知っているので、ときおりこのような手段を打ってくるようになった。とんだ小悪魔である。
まぁ、別にイケずをする理由もないし、とりあえずオレ様印の元気が出るお薬を出していやる。ちなみに成分を抑える代わりに、味を調整して子供でも飲める甘い味に仕上げてある。
何故だかオレが作るポーション類は、効能が増すほどに味が落ちていく。最高レベルの薬に関しては、飲んで死ぬほど苦しむか、飲まずに死ぬかの究極の二択を迫られるほどの味だ。なにせ死の森の屈強なモンスターどもが、泡を吹いてぶっ倒れるぐらいに不味いからな。
クロアがスプーンにてチビチビと飲ましてやると、毛玉はすぐに息を吹き返す。
半日も経つ頃にはすっかり元気を取り戻して、ガウガウと甘噛みするまでに回復。念のために一晩オレが付きっきりで様子を見て、翌朝には普通に出された食事をムシャムシャ。もう大丈夫かなぁ、と思ったら今度はその体の汚れが気になった。そこで洗浄技能を発動してキレイにしてやると、中から現れたのは真っ白なモフモフ。毛艶も素晴らしくサラサラで、手触りは言うことナシ。
これにクロアとルーシーさんが速攻で陥落。
次にメイドさんらも、あっという間に篭絡されてしまった。
女の子らは特にモコモコに弱いからな。
オレに洗濯物を押し付けて、モフモフを囲んでは、きゃあきゃあ騒いでいる。
《いや、別に手伝うのは構わないのだが、君たちはそれでいいのか?》
そんな心配をしていたらメイド長のエメラさんが寄ってきた。
あー、怒られると思っていたら、エメラさんもモコモコの方へ。
まさかのメイド長まで堕とすとは、これにはオレもビックリ。
そういえば……、改めて思い返してみればこの屋敷って、この手の生き物がほとんどいない。せいぜい馬舎にいる連中ぐらいだが、アイツらは伝説の覇王が乗るような、胸筋ムキムキだから、たとえ女子供といえども気安く触れさせない。自分が認めた相手にしか肌を許さない鋼鉄の操の持ち主。オレだって何度も馬房に足を運んで、せっせと身の回りの世話を手伝ったりして、ようやくだからな。
その点、この白いのはお手軽だ。手を伸ばせばすぐそこに癒しが、この誘惑に抗える者はそうはいまい。なんだかんだで、みな日頃のお仕事で疲れているからな。
などと余裕をかましていたら……。
クロアがコイツと一緒になって、ベッドで寝ていたのを皮切りに、わずか数日のうちに次々とオレの居場所が奪われていった。
わふわふと可愛らしい声で鳴いてはクロアの隣を占領し、ルーシーさんのけしからんお胸に抱かれ、メイドたちに囲まれてちやほやされ、ついには料理長からクッキーまでこっそりと貰っている。
何と言う奴だろう。恩を仇で返すとはこのことだ。
今ではもう、みんなオレのことなんて見向きもしない。所詮は便利な雑用係ぐらいにしか考えていなかったのか? などと憤慨もしたが、すぐにしゅんとへこむ。だってそうだろう。誰だって得たいの知れない謎生物の青いスーラなんかより、モコモコのふわふわの白い方がいいに決まっている。
本当はもう少しクロアの成長を見守るつもりだったが、もはや彼女にとって、オレは必要ないのかもしれない。それにヒトの心は移ろうもの。どんなお気に入りだって、いずれは飽きて忘れられてしまう時が来る。きっとそれが今ということなのだろう。
ならば立つ鳥後を濁さず。粛々とオレはここを去ることにしようと思う。
爺には黙って行くとしよう。下手に声をかけたら面倒になりそうだしな。エメラさんに渡してある子機の分体は、タイミングをみて抜け出すように指示しておけばいいだろう。
何年も世話になったクロアの部屋をざっと見渡す。
ここに来てから本当に色んなことがあった。
最後がこんな別れになることに、一抹の寂しさは隠せないが、この苦い想いもまた、いずれはオレの中で溶けて混ざり合って一つになることだろう。
《いざ、さらば。みなさま、どうかお元気で》
オレはクロアの部屋の扉をそっと閉めた。
屋敷を出て行こうとしたところで、肝心な人への挨拶をするのを忘れていることに気がついた。裏の林の奥に住み着いているナイスガイなドリアードのドリアードさんと、コギャルという名のドリアードの友人たち。コギャルは別にいいがドリアードさんには散々に世話になったし、きちんとお別れの挨拶しておくのが筋であろう。
そう思って彼のもとへと向かったら、林の奥にでっかいモコモコがいた。
「あー、ムーさん、丁度よかった。今夜にでもお願いしようと思っていたところだったんだよ」
「チーッス。ムーにーやん。ゲンキっすかー」
木の表面に浮いた顔は皺くちゃなのに、声が超爽やかさんなドリアードさんが、いきなり声をかけてきた。コギャルは相変わらずのようで何より。
《えーと、それはそうと、そちら様は一体どなた?》
「こちらはランドハイターのハロさん。とりあえず触手回線を開いてあげてくれないかな」
促されるままにデッカイのに触手を伸ばして回線を繋ぐ。
すぐに相手が話かけてきた。
「お初にお目にかかります。私、ハロと申します。この度は愚息がご迷惑をおかけしまして、申し訳ありませんでした」
ぴょこんと頭を下げるデッカイの。
すると額あたりの毛が動いて、そこに三つ目の瞳が姿を現した。
《愚息って、もしかしてあの子の……》
「はい。母でございます。あの子ったら、私がほんのちょっと目を離した隙にいなくなってしまって。慌てて匂いを追って来ましたら、宅様で手厚く保護されているご様子。一時は永遠の別れも覚悟しておりましたが、もうなんてお礼を申していいのやら」
ヨヨヨと嬉し涙を浮かべるハロさん。改めて間近でよく見てみれば犬というよりは狐に近い姿をしている。あの子に比べて毛も随分と長い。でも何よりも気配がまるで感知できないことが驚きだ。
「あぁ、それはこの毛のおかげです。なんでだか探知系の魔力を吸収して働きを阻害しちゃうんですよ。おかげで敵に見つかりにくいですし、狩りも楽なんですが、油断しているといきなりバッタリなんてこともありますから」
訊ねてみたらあっさりと答えてくれた。
「さて、こうして子供の無事が確認出来たのまでは良かったんだけど、お母さんが姿を現したら騒動になると思ってね。だったら君にお願いしようかと、相談していたところだったんだよ」
ドリアードさんに言われて、ハロさんも「どうかお願いします」と頭を下げてきた。もちろんオレに否はない。迷子が母親のところに帰る、当たり前のことだ。ただ問題はすっかり懐いているクロアたちである。いきなり消えたら、さぞや心配することであろう。
そこでハロさんにはもう一晩だけ、ここで待っていて貰うことにした。その間にオレが算段をつけると約束をして。
とりあえず貯蔵していたお菓子類や食べ物なんかを大量に放出しておく。
《ちゃんと任されたから心配せずに、これでも食べて待っていてくれ》
「重ね重ねの御配慮、ありがとうございます」
「いつも悪いね。ムーさん」
「ニーやん、ゴチになるっス」
《いいから、いいから、じゃ行ってくるから。明日の朝、オレが合図をしたらハロさんは顔を出してくれ》
「かしこまりました」
オレはドリアードさんにその場を預けて、急いで屋敷へと戻る。
目当ての人物はメイド長のエメラさん。助力を請うならあの人しかいない。まだ起きてくれているといいんだけど。
翌朝、オレから事情を聞かされたエメラさんが、クロアにすぐ近くに母親が迎えに来ていることを報せると、彼女は「よかった」と言って、実にあっさりとモコモコを手放した。幼くして母を亡くしているからこそ、母子は一緒にいたほうが良いと考えているのだろうか。それに比べて隣にいた大人のはずのルーシーさんの方が、未練たらたらである。
「別れに立ち会われますか?」
「ううん。やめておくわ。だって泣いちゃうもの」
エメラさんの言葉にクロアはそう答えた。
母親への引き渡しはオレとエメラさんによって、つつがなく行われる。
ハロさんが姿を現すと、一目散に駆けていく小さなモコモコ。
母は子の首を咥えると、軽く礼をしてそのまま林の奥へと消えて行った。
その姿が完全に見えなくなるまで見送ってから、オレたちは屋敷へと戻る。
「三つ目の白い長毛……ランドハイターですか。獣人たちからは、神獣として敬われている幻のモンスターですよ。本当に貴方といると驚かされっぱなしです」
《えっ! そんなに凄い奴だったのか。道理でまるで気配がわからなかったハズだ》
「ええ、噂には聞いていましたが凄い能力です。あの巨体で領都の警備網どころか、こちらの警備体制をも、あっさりと潜り抜けているんですから」
《そうだな……、ところでクロアの奴は大丈夫かな》
「そうですね。先ほどはあのように強がっていましたが、きっと寂しい想いをしておられるかと。だからムーさん、お願いしますね」
《しょーがねぇなぁ。承りましょう》
青いスーラがプヨンポヨンと跳ねていく。
自分を必要としてくれている少女のもとへと。
その後ろ姿を銀髪のハーフエルフが優し気な眼差しで見ていた。
1
お気に入りに追加
359
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
御者のお仕事。
月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。
十三あった国のうち四つが地図より消えた。
大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。
狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、
問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。
それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。
これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる