星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

文字の大きさ
上 下
236 / 242

236 星骸二十三号VSギガンテック赤べこ

しおりを挟む
 
 ついに互いの姿がしっかり視認できる距離にまで接近する。

『オォォォォ……オニ……オニイ……チャ――――――ンゥヌヌヌゥゥゥ……』

 歓喜の雄叫びをあげ、星骸二十三号は枝垂へと駆け出した。
 それはまるで幼子がお気に入りのオモチャのもとへ向かうかのよう。
 ただし星骸二十三号は女型の巨人である。
 そんなのが劣情のままに突っ込んでくる。
 まともの受けたら虚弱体質の星クズの勇者なんて、たちまちプチっと潰されてしまうだろう。
 だけど枝垂はその場から動かない。
 正面から向かってくる星骸二十三号を見据えながら、自身はひたすら星のチカラを練ることに集中する。

 兄恋し……、枝垂を欲する妄執のみが色濃く宿っている星骸二十三号が猛然と迫る!

 それこそラグビーでトライを決めるときのような勢いだ。
 結果、求める相手が木っ端みじんに粉砕するであろうことなんて、まるで頓着していない。
 しかしここで兄と妹との再会に水を差す者があらわれた。
 互いの距離が百メナレ――メナレというのはギガラニカ世界の長さの単位、1メナレでだいたい1メートルぐらい――を切るかというところで、星骸二十三号の横合いから突っ込んだのは赤べこのフセであった

 フセはオウランの輝石を装着することで、たちまち巨大化して「ギガンテック赤べこ」へと変身する。

 ギガンテック赤べこの突進攻撃!
 ドンッと腹の底に響くような、とてつもなく重たく鈍い音がして、巨体同士が激突する。
 星骸二十三号にとっては猛牛が突っ込んできたようなもの。
 枝垂にばかり気をとられていた星骸二十三号は、これをまともに受けた。
 が、のけ反りよろめくも倒れず、踏みとどまった。
 ばかりか、すぐさま両腕をのばしてはギガンテック赤べこの頭部をつかんだところで、首を脇の下とはさみこんでは、自分の腕を相手の首に巻きつけ、腰を入れてカラダをひねりながら相手をも巻き込むようにしてぶん投げた。

 首投げ!

 首投げは相撲の決まり手のひとつにて、土俵際に追い詰められたさいに逆転を狙う捨て身の技でもある。では、どうして捨て身なのかといえば、両腕を首にかけることにより、まわしが無防備になるからだ。相撲にとってまわしを取られるのは、極めてマズイ状況になる。

 よもやの反撃を受けて、ギガンテック赤べこの身が宙を舞い派手に横転した。
 地響きとともに盛大に砂煙が舞う。
 地面に叩きつけるかのようにして豪快に投げられ、ギガンテック赤べこは立ち上がれない。

 砂塵煙る中、動けないギガンテック赤べこ、これを星骸二十三号はまたいで、悠々踏み越えようとする。
 でもその時であった。

 フセが突っ込んだのとは逆方向の横合いにてピカッと光る何かがあらわれた。
 飛梅さんであった。
 光ったのは、彼女が亜空間収納の「梅蔵」より自動転送された専用装備を瞬間装着したからである。

 枝垂の能力にて出した『ポテトチップス梅おかか味。トレーディングカード付』を食べ続けては、コツコツカードを集めること幾星霜。
 ☆印が五つのレジェンドレアの虹色綺羅カードからゲットした装備類。まばゆく輝くは上品な黄金色の地金、表面に描かれている梅の花は夜光貝などの貝殻を用いる螺鈿細工のようにて、まるで蒔絵(まきえ)のごとき美しさ、荘厳さと風雅さを兼ね備えている。
 これこそが「飛梅専用装備最上位版フルアーマー・フルセット」である。
 ちなみにこの装備カードを引き当てたのはディラ王妃であった。圧倒的な引きの強さにより、ひとりでコンプリートという偉業を成し遂げた。

 肉弾戦を得意とする飛梅さんの能力を何倍にも引き出す彼女専用の装備、唯一の欠点といえばその見映えの豪奢っぷりのせいで、戦場の華となることであろうか。とにかく目立ってしょうがない。
 だからこそ、飛梅さんはギリギリまで装着することなく潜んでいた。

 枝垂にばかり目を奪われ、突っ込んできたギガンテック赤べこはぶん投げた。
 巨体同士がぶつかった余波で周囲には砂煙が垂れ込めている。
 千載一遇の好機到来!
 すっかり油断していた星骸二十三号、その胸元にある一華の顔へとめがけて、飛梅さんが天翔ける。
 自身を弾丸と化し、唸る拳が一華の額に浮かぶ真紅の宝石を打つ!


しおりを挟む
感想 138

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

器用さんと頑張り屋さんは異世界へ 〜魔剣の正しい作り方〜

白銀六花
ファンタジー
理科室に描かれた魔法陣。 光を放つ床に目を瞑る器用さんと頑張り屋さん。 目を開いてみればそこは異世界だった! 魔法のある世界で赤ちゃん並みの魔力を持つ二人は武器を作る。 あれ?武器作りって楽しいんじゃない? 武器を作って素手で戦う器用さんと、武器を振るって無双する頑張り屋さんの異世界生活。 なろうでも掲載中です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明
ファンタジー
 伊東誠明(いとうまさあき)35歳  都内の大学病院で救命救急センターで医師として働いていた。仕事は順風満帆だが、プライベートを満たすために始めた婚活も運命の女性を見つけることが出来ないまま5年の月日が流れた。  そんな時、久しぶりに命の恩人であり、医師としての師匠でもある秋津先生を見かけ「良い人を紹介してください」と伝えたが、良い答えは貰えなかった。  自分が居る救命救急センターの看護主任をしている萩原さんに相談してみてはと言われ、職場に戻った誠明はすぐに萩原さんに相談すると、仕事後によく当たるという占いに行くことになった。  終業後、萩原さんと共に占いの館を目指していると、萩原さんから不思議な事を聞いた。「何か深い悩みを抱えてない限りたどり着けないとい」という、不安な気持ちになりつつも、占いの館にたどり着いた。  占い師の老婆から、運命の相手は日本に居ないと告げられ、国際結婚!?とワクワクするような答えが返ってきた。色々旅支度をしたうえで、3日後再度占いの館に来るように指示された。  誠明は、どんな辺境の地に行っても困らないように、キャンプ道具などの道具から、食材、手術道具、薬等買える物をすべてそろえてた。  3日後占いの館を訪れると。占い師の老婆から思わぬことを言われた。国際結婚ではなく、異世界結婚だと判明し、行かなければ生涯独身が約束されると聞いて、迷わず行くという選択肢を取った。  異世界転移から始まる運命の嫁ちゃん探し、誠明は無事理想の嫁ちゃんを迎えることが出来るのか!?  異世界で、医師として活動しながら婚活する物語! 全90話+幕間予定 90話まで作成済み。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

天才ピアニストでヴァイオリニストの二刀流の俺が死んだと思ったら異世界に飛ばされたので,世界最高の音楽を異世界で奏でてみた結果

yuraaaaaaa
ファンタジー
 国際ショパンコンクール日本人初優勝。若手ピアニストの頂点に立った斎藤奏。世界中でリサイタルに呼ばれ,ワールドツアーの移動中の飛行機で突如事故に遭い墜落し死亡した。はずだった。目覚めるとそこは知らない場所で知らない土地だった。夢なのか? 現実なのか? 右手には相棒のヴァイオリンケースとヴァイオリンが……  知らない生物に追いかけられ見たこともない人に助けられた。命の恩人達に俺はお礼として音楽を奏でた。この世界では俺が奏でる楽器も音楽も知らないようだった。俺の音楽に引き寄せられ現れたのは伝説の生物黒竜。俺は突然黒竜と契約を交わす事に。黒竜と行動を共にし,街へと到着する。    街のとある酒場の端っこになんと,ピアノを見つける。聞くと伝説の冒険者が残した遺物だという。俺はピアノの存在を知らない世界でピアノを演奏をする。久々に弾いたピアノの音に俺は魂が震えた。異世界✖クラシック音楽という異色の冒険物語が今始まる。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 この作品は,小説家になろう,カクヨムにも掲載しています。

処理中です...