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236 星骸二十三号VSギガンテック赤べこ
しおりを挟むついに互いの姿がしっかり視認できる距離にまで接近する。
『オォォォォ……オニ……オニイ……チャ――――――ンゥヌヌヌゥゥゥ……』
歓喜の雄叫びをあげ、星骸二十三号は枝垂へと駆け出した。
それはまるで幼子がお気に入りのオモチャのもとへ向かうかのよう。
ただし星骸二十三号は女型の巨人である。
そんなのが劣情のままに突っ込んでくる。
まともの受けたら虚弱体質の星クズの勇者なんて、たちまちプチっと潰されてしまうだろう。
だけど枝垂はその場から動かない。
正面から向かってくる星骸二十三号を見据えながら、自身はひたすら星のチカラを練ることに集中する。
兄恋し……、枝垂を欲する妄執のみが色濃く宿っている星骸二十三号が猛然と迫る!
それこそラグビーでトライを決めるときのような勢いだ。
結果、求める相手が木っ端みじんに粉砕するであろうことなんて、まるで頓着していない。
しかしここで兄と妹との再会に水を差す者があらわれた。
互いの距離が百メナレ――メナレというのはギガラニカ世界の長さの単位、1メナレでだいたい1メートルぐらい――を切るかというところで、星骸二十三号の横合いから突っ込んだのは赤べこのフセであった
フセはオウランの輝石を装着することで、たちまち巨大化して「ギガンテック赤べこ」へと変身する。
ギガンテック赤べこの突進攻撃!
ドンッと腹の底に響くような、とてつもなく重たく鈍い音がして、巨体同士が激突する。
星骸二十三号にとっては猛牛が突っ込んできたようなもの。
枝垂にばかり気をとられていた星骸二十三号は、これをまともに受けた。
が、のけ反りよろめくも倒れず、踏みとどまった。
ばかりか、すぐさま両腕をのばしてはギガンテック赤べこの頭部をつかんだところで、首を脇の下とはさみこんでは、自分の腕を相手の首に巻きつけ、腰を入れてカラダをひねりながら相手をも巻き込むようにしてぶん投げた。
首投げ!
首投げは相撲の決まり手のひとつにて、土俵際に追い詰められたさいに逆転を狙う捨て身の技でもある。では、どうして捨て身なのかといえば、両腕を首にかけることにより、まわしが無防備になるからだ。相撲にとってまわしを取られるのは、極めてマズイ状況になる。
よもやの反撃を受けて、ギガンテック赤べこの身が宙を舞い派手に横転した。
地響きとともに盛大に砂煙が舞う。
地面に叩きつけるかのようにして豪快に投げられ、ギガンテック赤べこは立ち上がれない。
砂塵煙る中、動けないギガンテック赤べこ、これを星骸二十三号はまたいで、悠々踏み越えようとする。
でもその時であった。
フセが突っ込んだのとは逆方向の横合いにてピカッと光る何かがあらわれた。
飛梅さんであった。
光ったのは、彼女が亜空間収納の「梅蔵」より自動転送された専用装備を瞬間装着したからである。
枝垂の能力にて出した『ポテトチップス梅おかか味。トレーディングカード付』を食べ続けては、コツコツカードを集めること幾星霜。
☆印が五つのレジェンドレアの虹色綺羅カードからゲットした装備類。まばゆく輝くは上品な黄金色の地金、表面に描かれている梅の花は夜光貝などの貝殻を用いる螺鈿細工のようにて、まるで蒔絵(まきえ)のごとき美しさ、荘厳さと風雅さを兼ね備えている。
これこそが「飛梅専用装備最上位版フルアーマー・フルセット」である。
ちなみにこの装備カードを引き当てたのはディラ王妃であった。圧倒的な引きの強さにより、ひとりでコンプリートという偉業を成し遂げた。
肉弾戦を得意とする飛梅さんの能力を何倍にも引き出す彼女専用の装備、唯一の欠点といえばその見映えの豪奢っぷりのせいで、戦場の華となることであろうか。とにかく目立ってしょうがない。
だからこそ、飛梅さんはギリギリまで装着することなく潜んでいた。
枝垂にばかり目を奪われ、突っ込んできたギガンテック赤べこはぶん投げた。
巨体同士がぶつかった余波で周囲には砂煙が垂れ込めている。
千載一遇の好機到来!
すっかり油断していた星骸二十三号、その胸元にある一華の顔へとめがけて、飛梅さんが天翔ける。
自身を弾丸と化し、唸る拳が一華の額に浮かぶ真紅の宝石を打つ!
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