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224 第二十二次・星骸討伐戦 終結
しおりを挟む十本の角と七つの頭を持ち、黙示録の獣に近しい容姿にて降臨。
のちにオオカミ、ヘビ、ハリネズミ、グリズリー、ヤギ、ブタ、ライオン――七体の人面獣身へと分裂し猛威を振るった星骸二十二号の討伐戦も、いよいよ大詰め。
残るはライオン型だけかとおもわれたのだけれども……
「――っ!」
グリズリー型へと突き込まれたランスが、その腹部に深々と突き刺さっては先端のドリルが激しく唸っている。
にもかかわらずグリズリー型が倒れない?
どころか口元から血を垂らしながらゲラゲラゲラ……人面を歪ませ笑っては、みずからランスを掴み、より深く突き入れてはがっちりくわえこんで離さない!
白銀のケンタウロスがいくら抜こうとしてもビクともせず。
ならばと白銀のケンタウロスは四本腕のうち、自由になる二本の腕にてショートソードの二刀流を放ち、追い打ちにてグリズリー型の息の根を完全に止めようとする。
突き、突き、突き……至近距離から怒涛の突きを繰り出す。
これによりグリズリー型のカラダがみるみる朱に染まっていく。
だというのにゲラゲラ声はやまなかった。グリズリー型は笑い続けている。
判断ミスであった。
こうなる前に白銀のケンタウロスはランスを手放し距離をとるべきであった。
なのに白銀のケンタウロスのパイロットはムキになって、つい倒すことにばかり意識が向かう。ヒトを載せているがゆえに臨機応変に戦える一方で、搭乗式の人力ならではの弊害が最悪のタイミングで出てしまう。
まんまとグリズリー型の策にはまってしまった白銀のケンタウロス、無防備に晒されている人馬の背へと忍び寄っていたライオン型が襲いかかった。
ライオン型が大きく跳躍する。
振り上げた凶爪と口元の牙が赤い、そのほの暗い陰鬱とした赤みはよく熱しられたハンダゴテやヒートカッターの先端を彷彿とさせる。それすなわち、これまでの攻撃とは質がちがうということである。いかに頑丈な甲冑を身につけているとはいえ、白銀のケンタウロスもただではすむまい。きっと無惨に切り裂かれる。
……はずであった。
そんな未来を変えたのは、連合軍の本陣後方より飛来した一本の矢である。
矢といっても大きいものだ。それに後部から火を吹き飛ぶ姿は、さながら巡航ミサイルかのよう。
推進力を持つ矢は命中する。
首筋のうしろ辺りにズブリと刺さった矢ごと、ライオン型のカラダが一瞬にして掻き消えた。矢の勢いにて彼方へと持っていかれたのだ。
やがて矢は推進力を失い、荒野へと落ちた。これによりライオン型は地面に縫い留められることになる。
血反吐をはきながらもまだ生きており、ジタバタ足掻いては矢から逃れようとするライオン型であったが、次の瞬間――
ボンッ!
矢が閃光とともに爆ぜて血肉が散乱する。ライオン型のカラダを内側より粉砕した。
どうやらこの矢は戦闘用ゴーレムたちが使用していた武器の上位版であったらしい。
では、いったい誰がそんなシロモノを撃っては、白銀のケンタウロスの窮地を救ったのかというと……
『おい、いつまで呆けているつもりだ? とっととその死にぞこないを仕留めよ』
聞こえてきたのは魅惑的なジャズシンガーのごとき、やや擦れたハスキーボイス。居丈高な物言いなのに、不思議と反発は覚えない。むしろ自然と首を垂れてしまう風格が宿っている。
声の主はムクラン帝国の女帝スフォルツア・ウル・ムクランであった。
世界最大の軍事国家を統べる女帝が、新造した飛空艇にて満を持しての登場!
真打は遅れてやってくるとばかりに悠然とあらわれたとおもったら、一番おいしいところを掻っさらっていく。
先ほどの矢は飛空艇からの攻撃であったのだ。
女帝より発破をかけられ、ハッとした白銀のケンタウロスが動き出す。
一対一となったものの、グリズリー型はすでに死に体である。
勝負はほどなくしてついた。
白銀のケンタウロスが勝鬨をあげ、荒野に割れんばかりの大歓声が湧き起こった。
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