星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

文字の大きさ
上 下
219 / 242

219 決戦兵器

しおりを挟む
 
「な、なんだアレは……」
「デカいぞ!」
「戦闘用ゴーレム、なのか?」
「しかしあの形状は何だ」
「えっ、ウマ?」

 上空から戦場の様子を見守っていた飛空艇ヒノハカマのブリッジがざわつく。
 みんなの視線を釘付けにしていたのは自陣内のある場所だ。
 クランコスタとドラゴポリスが管理していた、大きな棺桶のような鉄の箱があったところ。
 シュウシュウと白煙をあげながら、箱の蓋がゆっくりと開き、なかから白銀の巨人があらわれた。

 甲冑を身につけた騎士のような勇ましい姿にて、その威容にふさわしい立派なランスをたずさえているのだが、とにかく大きい。
 推定六十メナレ――メナレというのはこちらの世界の長さの単位、1メナレでだいたい1メートルぐらい――ようは、列車の車両が五つ分ぐらいと同じということ!
 すべてが規格外であり、なによりも目をひくのはその下半身だ。
 腰から下が馬体となった半獣半人であるケンタウロス。
 ギガラニカ世界に獣人はいるが、このタイプはいない。それゆえにブリッジ内は騒然としていた。

「あれが……リリン姉さまのおっしゃっていた新兵器なのね」
「なんと珍妙な。しかしあの姿がハッタリでないとすれば、相当な機動力と突進力があるとおもわれます」
「すごい、まるでアニメやゲームに登場する巨大ロボットみたいだ」

 エレン姫、ジャニス、枝垂らはすっかり度肝を抜かれて目をぱちくりするばかり。
 通常、ゴーレムは地属性の魔法をベースにして造られている。
 形状の維持および操作には高度な地魔法の技術が必要だ。また大きくなればなるほどに維持するのに必要な魔力量が増えることと、自重による稼働域への負担もあって、実戦投入に耐えうるのはせいぜい三から五メナレ程度の大きさまで。
 しかし白銀のケンタウロスは通常の機体の優に十倍以上を誇っている。
 これまでの常識を覆す存在、それを可能としているのは、おそらくドラゴポリスの持つ高い魔道具造りの技術なのだろう。

 ヒノハカマのブリッジ勢が驚愕していると、白銀のケンタウロスがやにわに前足を高らかにあげては棹立ちとなった。
 いななきこそは聞こえないものの、変わりに低いウィーンという音がする。搭載している動力の魔道機が唸りをあげているのだ。
 呼応するかのようにして、装甲の繋ぎ目にて青白いラインが光る。それに連動してポッ、ポッ、ポッと人馬体の各関節にも光が点灯していく。
 まるでイルミネーションみたいだ。

「おしゃれで、カッコいいなぁ」と枝垂は感嘆するばかりであったが、エレン姫は「ウソでしょう」と絶句する。

 エレン姫が顔をひきつらせたわけは、各関節にて光る輝石たちである。
 どれもこれも一級品の粒ぞろいにて、かつてコウケイ国に襲来した海の大型化獣のラッコステイから回収されたモノに近しい高品質ばかり。
 中央のオークションに出せば、とんでもない値がつくような輝石をふんだんにあしらった贅沢な造り、それらを御するにはより大きなチカラが必要となることより、動力部には落陽水晶体を用いているとおもわれる。
 いったいいくら注ぎ込んでいるのやら、想像するだけでクラクラ眩暈がしてくる。

 採算度外視のロマン超兵器の登場、にわかに沸き立つ連合軍陣営。
 それらを横目に白銀のケンタウロスの前足が地につくのと同時に、今度は後ろ足が跳ねた。
 とたんにその足下が盛大に爆ぜ、爆煙が巻き起こり、その巨体が勢いよく前へと飛び出す。
 ランスをかまえた白銀のケンタウロスが、進路上にあったすべてを蹴散らし猛然と突き進む。向かうは星骸二十二号のところである。
 ジャニスが予想した通り、凄まじい突進力であった。あっという間に自陣を飛び出し距離を詰めていく。

 駆けるほどに加速していく。
 それとともに手にしたランスの先端が風を巻き込みギュルギュルと高速回転を始めた。
 ただのランスじゃない、ドリルだ! より貫通力と破壊力を持たせる仕様となっている。

 十本の角と七つの頭を持つ獣と、白銀のケンタウロスと。
 くしくも異形の四つ足同士の対決となった。
 土煙をあげながら向かってくる白銀のケンタウロスに対して、これまで防戦一方であった星骸二十二号が初めて攻撃を行う。
 十本の角と角の間にてバチバチと放電現象がしたとおもったら、放たれたのが雷撃である。いったん空へとあがった雷光が、途中でいくつもに分裂したとおもったら地へと降り注ぐ。
 雷鳴が轟きドカン! ドカン! 次々とカミナリが一帯に落ちた。
 だが白銀のケンタウロスはものともせず。稲光の下にあって勢いはいささかも衰えず。

 すると星骸二十二号は、七つの顔のうち無事な五つの顔の目から灼熱の光線を放ち、獅子のごとき口からは轟々と蒼炎を吐き出した。
 すべてを焼き切る熱線、蒼い炎にみえたそれは触れたモノすべてを凍らせる極寒の冷気。
 これらを正面から受けることになった白銀のケンタウロスであったが、当たる瞬間にその身につけた甲冑がぶぅんと唸って小刻みに震えた。
 かとおもったら熱線は表面を滑るようにしてはじかれそれて、冷気にて凍った部位がすぐさまパラパラと砕けては、なんら影響なし。
 雷撃もまた地面へと放電されるばかり。
 ギガラニカの叡智を結集して造られた白銀のケンタウロスは止まらない。
 突進から繰り出されたドリルランス、対する星骸二十二号はならばとばかりに凶悪な爪を持つクマのような太く逞しい前足にて、これを薙ぎ倒そうとする。
 だがしかし――

 轟っ!
 風が唸り、振り下ろされた星骸二十二号の一撃。
 しかし当たる寸前にて、これをすくいあげたのは白銀のケンタウロスのランスである。
 流れるような洗練された動き、見事な槍捌きであった。
 遠隔操作や自動運転ではありえない反応と技能、どうやら白銀のケンタウロスには熟練したパイロットが乗り込んでいるようだ。
 いなされ隙だらけとなった胴体に、ランスの切っ先が突き立つ。
 ギュルギュルと回転しては、より深く大きな穴を穿とうとする攻撃に星骸二十二号が悲鳴をあげた。


しおりを挟む
感想 138

あなたにおすすめの小説

転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯
ファンタジー
 異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。  成長したアウルムは冒険の旅へ。  そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。 (ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)  お時間ありましたら読んでやってください。  感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。 同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269 も良かったら読んでみてくださいませ。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

天才ピアニストでヴァイオリニストの二刀流の俺が死んだと思ったら異世界に飛ばされたので,世界最高の音楽を異世界で奏でてみた結果

yuraaaaaaa
ファンタジー
 国際ショパンコンクール日本人初優勝。若手ピアニストの頂点に立った斎藤奏。世界中でリサイタルに呼ばれ,ワールドツアーの移動中の飛行機で突如事故に遭い墜落し死亡した。はずだった。目覚めるとそこは知らない場所で知らない土地だった。夢なのか? 現実なのか? 右手には相棒のヴァイオリンケースとヴァイオリンが……  知らない生物に追いかけられ見たこともない人に助けられた。命の恩人達に俺はお礼として音楽を奏でた。この世界では俺が奏でる楽器も音楽も知らないようだった。俺の音楽に引き寄せられ現れたのは伝説の生物黒竜。俺は突然黒竜と契約を交わす事に。黒竜と行動を共にし,街へと到着する。    街のとある酒場の端っこになんと,ピアノを見つける。聞くと伝説の冒険者が残した遺物だという。俺はピアノの存在を知らない世界でピアノを演奏をする。久々に弾いたピアノの音に俺は魂が震えた。異世界✖クラシック音楽という異色の冒険物語が今始まる。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 この作品は,小説家になろう,カクヨムにも掲載しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...