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170 メガモンスター祭り

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 枝垂たちの当初の予定では、まずは手頃なのを一匹釣りあげる。
 それを囮にして、さらに大きなのを釣りあげる。
 それをまた囮にして、さらにさらに大きなのを……といった風にして、順を追って大物をゲットするつもりであった。
 だがしかし、その予定は大幅に狂った。
 なぜなら初っ端から、デカいのが食らいついてきたからである。

 空中にいるオウランの背にまたがり、釣りをはじめること、ほんのわずか。
 浮きがピクリと反応するよりも先に、波が荒れ水面に不穏か影が浮かんできた。
 見た瞬間に枝垂は「あっ、これはシャレにならないやつだ」とすぐに悟った。
 だからすぐに竿をあげようとしたのだけれども、そのタイミングで海中より飛び出してきたのは、デカいサメみたいな海洋生物である。

 メガロドーン――
 全長二十メナレ級の海洋生物。
 見た目はホオジロザメに酷似しているが、地球のホオジロザメの泳ぐスピードが時速八キロメートルぐらいなのに対して、メガロドーンは八十キロメートルぐらいにて、マグロなみの瞬足を誇る。
 大きな口には鋭い牙がずらりとならび、獲物を容赦なく喰い散らかす。
 背ビレは刃のごとき切れ味にて、敵や航行中の船を通りがかりに一刀両断することもある。尾ビレの一撃もまた強烈にて、ちょっとした津波を起こすほどの威力を持つ。
 別名、海の武闘派。
 なお身はそのままでは独特の臭みがあって食べにくいものの、干物にすると美味くなる。

 そんなのがいきなりあらわれた!
 大口を開けては真下から飛び上がってきて、釣り糸の先に吊りさげたエサの特製の超高級梅干しごと、枝垂たちを丸呑みにせんとする。

「やれやれ、一発目は外道か。にしても海の連中はあいかわらず荒っぽいのぉ」

 嘆きながらオウランは回避行動をとろうとする。
 ちなみに釣りで外道とは、狙った魚以外の種類のことを指す。
 どうやらギガラニカでもそれは同じらしい。
 枝垂はまたひとつ無駄知識を得た。
 でもって本日狙っているのは禍獣なので、ただの海洋生物はお呼びではない。
 まぁ、それはさておき……

 ぶっちゃけ黄金級の禍獣であるオウランからすれば、メガロドーンなんぞは敵じゃない。
 だからサッと避けながら、爪で切り刻んて撒き餌にでもしようかとしたのだけれども、これを邪魔したのが、突如として横合いから突っ込んできた巨影である。
 頭から生えた長大かつ鋭い一本角が、メガロドーンの横っ腹を突き刺し、貫く。
 新手が出現した!

 チョクチョウセンコウ――
 全長三十メナレ級の海洋生物。
 見た目は地球のイッカクっぽいけど、地球のイッカクの角のように見えるのが、じつは牙なのに対して、チョクチョウセンコウのはまんま角である。
 七メナレほどもある角はドリル状にて硬くて、先端は鋭く、ぎゅるぎゅる回転するから貫通力も抜群だ。
 別名・海の尻堀り。
 ごく稀にだが、海底に深々と角を突き刺したせいで身動きがとれなくなって、死んでしまう間抜けな個体もいるという。
 その身は淡泊かつボリュームのある白身にて、ステーキにすると食べ応えがある。

 チョクチョウセンコウの刺突をモロに喰らって、メガロドーンが悲痛な叫び声をあげた。

(うわー痛そう、当たり所が悪かったね。あれは助からないだろう。南無南無)

 なんぞと考えながら枝垂が眼下の惨状を眺めていたら、そこへいきなりのびてきたのは白くて長いニョロニョロ!
 十三本ものニョロニョロが、メガロドーンとチョクチョウセンコウの二体をまとめて絡め捕る。
 さらなる乱入者だ。

 アオリマクリ――
 地球で言うところのダイオウイカっぽい海洋生物。地球の奴より足の数がちょっと多い。あとガタイもよくて、チカラも強い。
 胴体のみで三十メナレほどもあり、長い足をいれたら全長で五十メナレを越える。
 とにかく気性が荒く、誰彼かまわず煽りまくる。
 別名・海のウザ絡み。
 なお身の味は大雑把にて、歯ごたえがある。食べれなくもないが、アゴがだるくなる。獣人以外にはあまりオススメしない。

 よもやの大型海洋生物が三つ巴となる展開!
 乱闘騒ぎにて、釣りどころではない。
 とんだメガモンスター祭りに枝垂れは「えぇーっ」
 ギガラニカの海がヤバすぎる。


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