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116 親善交流試合
しおりを挟む三十九ヶ国もの代表らが一堂に会するのは、なかなかたいへんである。
連合軍の上層部や中央との兼ね合いもある。基本的にきちんと仕事をしている偉い人ほど忙しい身の上だ。よって連合評議会の日程に余裕はなくスケジュールはカツカツだ。
舞台というパドックで散々に好奇の目に晒された新米勇者たちは、そのあとすぐに健康診断と再鑑定を受けた。
成長具合を確かめるのと、あとは「その後どうよ? 新生活にはもう慣れた? 何か困ったことはない?」などと心理カウンセリングが実施される。
ここでもコウケイ国の星クズの勇者は後回しにされた。
ようやく枝垂の順番となり、ひとしきり終えた頃には、すでに日付が変わっていた。
ギスギス空の長旅の末に、この扱い。
そのせいであてがわれた宿舎の部屋につくなり、枝垂はバタンキュウ。
で――寝たとおもったら、はや朝となり強制的に叩き起こされて、寝ぐせもそのままに試合会場に直行である。
会場に到着したとおもったら、今度は高校のラグビー部の部室のような、むさい控室に飛梅さんとフセともども押し込められて、「試合の順番が来たら呼びにくるので、それまでおとなしくしているように」とだけ告げられた。
先日の案内係の男の人は礼儀正しかった。
けれども、本日の女の人はかなり居丈高にて感じが悪い。
明らかにこちらを侮っている。そのくせ、控室に向かう途中でえらい人やイケメンの同僚らとすれ違うときには、とたんに愛想がよくなり、クネクネしなをつくっては媚びた笑みを浮かべる。
どうやら彼女は相手によってコロコロ態度を変えるタイプのようだ。
この手のタイプは同僚女性からめっぽう嫌われる。
……と、女性週刊誌の記事で枝垂は読んだことがあったもので、「なるほど」と密かに独りごちたものである。
まぁ、そんなことはさておき――
ついに始まってしまった親善交流試合という名の公開処刑、ならぬ吊るしあげの舞台。
試合の後にはパーティーが予定されており、互いの健闘を称えてノーサイドとの話だが、さぞや気まずい空気にて、きっとギスギスした雰囲気になることであろう。
なおエレン姫やジャニスたちは用意された貴賓席から試合を観戦し、枝垂は室内壁面に設置された画面越しにこれを視聴する。
画面は五十インチの薄型テレビそっくりの魔導具。
中の仕組みこそは地球のテレビと違えども、機能はほぼ同等なのだろう。
コウケイ国では見かけない魔導具にて、もしかしたら中央五ヶ国内にはテレビ放送みたいなものがあるのかもしれない。
なにせ地下深くをリニアモーターカーみたいなのが走り、地上には摩天楼がそびえ立つほどに発展した文明なのだもの。あっても不思議はない。
でも、あったとしても星骸の脅威を抱えている世界情勢からして、娯楽目的というよりも国威発揚とか、人心掌握や世論操作のために活用していそう。
「ギガラニカの文明って、魔法と機械が融合したみたいな感じで、地球に比べていろいろ優れているんだけど、一方で魔素濃度の影響をモロに受けているからなぁ」
それがネックとなって活動限界が存在する。
世界の中で自由に動けるところと、そうでないところが明確に線引きされている。
空の上、海の彼方、そしておそらくは地の下にも……
地の下といえば、ハチノヘたちの巣がある海底大空洞の扉も気になるところ。
いったい何が封じられているのやら。
そんな枝垂の思考が中断された。
モニター越しに聞こえてきた歓声のためだ。昨夜のお披露目の会とは違って、試合会場の客席は軍服が埋め尽くしている。おそらくは連合軍の兵士たちなのだろう。もしかしたらアリエノールやラジールも来場しているのかもしれない。
アナウンスが流れて、第一試合の選手入場。
丸い石舞台にあがったのは、ムクラン帝国の星の勇者とカララバの国の星の勇者である。
よもやの浩然(ハオレン)の登場!
枝垂は、画面を食い入るように見つめる。
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