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022 レジェンド・ツインズ
しおりを挟む背筋をのばし整列して待つ園芸部一同。
その前で停まった軽トラック。
ドアが開いて「よっこらせ」と姿をあらわしたのは、法被姿がいなせなおじいちゃんがふたりなのですが……
つるんとしたタマゴ頭にねじり鉢巻に、脚絆、足袋までお揃いにて。
何から何までそっくりのうりふたつ。一卵性の双子のようです。
ですが、なにやらその顔に見覚えがあるような気がしたもので「はて?」
クダンちゃんは内心で首をかしげました。
すると向こうも同じだったようで、「おやおや?」「おやおやおや?」
「なにやら見覚えのあるメンコイのがおるぞい、右門や」
「ふむふむ、たしかに見覚えのあるメンコイのがおるぉ、左門よ」
右門と左門。
互いをそう呼ぶのを耳にして、遅まきながらクダンちゃんも「あっ!」
相手の正体に気がつきました。
誰かとおもえば、自宅に出入りしている庭師の方々です。クダンちゃんのところにくるときには、いつもどちらか片方だけなので、こうしてふたり揃っていたがゆえに印象が異なっており、すぐに気づけなかったようです。
これはうっかり。
そして驚いていたのは、当事者ばかりではありません。
園芸部の先輩方も「えぇー!」と目をぱちくりさせては、ざわざわざわ。
「与謝野郡さんってば、レジェンドの御二方とお知り合いだった?」
と大谷部長。
「えっと、はい、そうです。昔からうちの庭の手入れをお願いしておりまして。
にしてもレジェンドとはいったい?」
レジェンド・ツインズ。
それは生きた伝説にて、勇名は園芸業界に轟いている。
なにせ世界庭師コンテスト・グランドスラムにおいて、前人未踏の八連覇という偉業を成し遂げ、殿堂入りを果たしたのだから。
ちなみにグランドスラムは、全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープンの四大大会において高成績をおさめた者のみが参加できる特別な大会。
文字通り世界の頂点、キング・オブ・キングを決める大会です。
参加できるだけでも末代までの誉れとされているんだとか。
興奮しながら嬉々として語ってくれる大谷部長は、とっても前のめり。
ズズイと迫るたわわなお胸とその熱量に、クダンちゃんはちょっと圧倒されつつも「へー」と感心する。
右門さん、左門さん。
おふたりが腕のいい庭師なのは知っていましたけれども、まさかそんなにスゴイ方々だったとは夢にもおもいませんでした。
だって、いつも剪定用の長柄のハサミを持っては、ぶらりとやってくるんですもの。
そしてチョキチョキ、チョキチョキ……
庭木の手入れをしたとおもったら、縁側でカゲリさんが淹れた熱々の番茶をすすったり、たまにトトさまと将棋をさしていたりする。
その姿は近所のご隠居さんみたいで、世界に名を馳せているような人物にはとてもとても。
人に歴史アリ、縁は異なもの味なもの。
そして世間は意外と狭かった?
……ということは、いったん脇へ置いておき。
まずはやるべきことをしなければいけません。
お仕事! お仕事!
〇
長柄のハサミを自在に振り回しては、チョキチョキ。
刃が疾駆しては、切られた葉がはらりひらりと舞い落ちる。
華麗にして繊細な作業にて、みるみる整えられていく庭木の枝葉。
かとおもえばジョッキン!
大胆に枝を切り落とすこともあります。
(えっ、そんなにバッサリいってもいいの!?)
とクダンちゃんは心配になりましたが、でも大丈夫。
じつはその枝葉は内部が虫食いにて腐っていたのです。もしもそのまま放置をしていたら、いきなり折れて、誰かの頭の上に落ちていたかもしれません。
傍目にはさっぱり気づけませんでした。
さすがの眼力に、園芸部の部員一同は「ほー」「はー」と感嘆しきり。
高い場所の剪定は青竹を組んだハシゴを用います。
けれども、これがまた妙技にて。
長いハシゴを支える者はおらず、絶妙なバランスを保ったままで、ひょいひょい上に乗った状態で器用に操っては、ひょこひょこ移動しつつ。
「よっ、シャチホコ」
右門さんがハシゴの天辺でポーズを決めれば、負けじと左門さんも「はっ、カラカサ」とやり返す。
おじいちゃんたちはとっても元気。
ですが、下から見ているクダンちゃんたちは、落ちたらどうしようと、ドキドキはらはらです。
クダンちゃんがいるせいか、いつもよりもサービスしてくれているレジェンド・ツインズ。
よほど嬉しいのか大谷部長なんてちょっと涙ぐんでいました。
ですが、その時のことです。
「た、たいへんです、部長!」
あたふた駆け込んできたのは部員のうちのひとり。
ちょっとお花摘みへと行っていたのですけれど、血相変えて戻ってくるなり言いました。
「伝説の木のところにモ、モズラが!」
その名を聞いて、とたんにみんなの顔からスンと表情が抜け落ちました。
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