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004 伝説の樹
しおりを挟む入学式は校内の西側にある体育館で行われます。
新入生たちは直接向かい、入り口にある受付で氏名を告げたら配属するクラスを教えてもらい、クラスごとに固まっている席へと座る手順となっています。
ちゃんと入学案内に書いてありました。
だからクダンちゃんは、体育館の方へと向かいましたが、その足が途中の中庭のところで止まりました。
「うわー、おっきい」
見上げたのは一本の大樹――楠木です。
青々と茂る葉、たくましい幹、力強くのびた枝、どっしりとした不動の根っこ。
梢の端々にまで生命力がみなぎっています。
威風堂々、それでいて霊験あらたかな御神木のようでもあり。
四階建ての校舎と並んでも、ちっとも見劣りしていません。
「うーん、これは只者じゃありませんね」
優しい木漏れ日を浴びつつ、おもわずクダンちゃんがうなっていると不意に背後から声がしました。
「立派なものだろう。なにせこれは我が校のシンボルである伝説の樹だからね」
いきなり声をかけられて、驚きふり返ったクダンちゃん。
けれども、うしろにいた上級生にもっと驚きました。
なぜならとてもキレイな女性だったからです。
腰までのびた黒髪は艶々しており、背は高く、ウエストは細く、手足はすらりと長い。
体のすべてのパーツが理想的で、黄金律の集合体のよう。
顔の造形については、いちいち語るのが口幅ったい。
発せられる声は、ややハスキーボイスですが、それすらもが落ち着いた雰囲気とマッチしており、魅力の一助となっています。
男装とかして舞台にあがったら、とんでもなく人気がでそう。
キレイでカッコいい先輩の登場に、クダンちゃんはポーっとのぼせてしまいます。
そうしたら先輩はくすりとの笑みにて、伝説の木について教えてくれました。
この木は、かつて実在した大樹を模したレプリカ。
もっともいまの時代、たいていの物が復活されたレプリカなので、それはべつに珍しいことではありません。
では、どうして伝説と成り得たのか?
オリジナルはとある学園にあったそうで、卒業式のあと、この木の下で愛の告白をして、もしも受け入れらえたら、そのカップルは永遠に結ばれ幸せになれるという。いつから語り継がれるようになったのかはわからないけれども、おかげでシーズンになったら大人気の告白スポットになっていたんだとか。
いまとなってはもう、真偽を確かめようがありません。
ですが、ステキな話ですね。
クダンちゃんがそんな感想を口にしたら、「そうだね」と先輩もにこり。
「おっと、いけない。かわいい後輩とのおしゃべりが楽しくて、ついのんびりしすぎたかな。入学式に遅刻してしまう。さぁ、行こう」
そう言って差し出された手を、クダンちゃんはおずおず取りました。
クダンちゃんは先輩に手を引かれて体育館へと向かいました。
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