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995 のちのち
しおりを挟む学校の行事には楽しいものとそうでないものがある。
遠足は楽しい。
決められた予算内でオヤツをどうするか。あれを考える時間は至高。
工場見学は楽しい。
見るも聞くもはじめてばかり。大きな機械がぐぉんぐぉん動いては、せっせと商品を造り出す姿には目を見張るモノがある。そして見学先がお菓子メーカーとかパン工場とかだと、お土産に袋菓子やクリームパンがもらえてホクホク。
体育祭はわりと楽しい。
赤組と白組に分かれてわちゃわちゃ。でも人によっては苦手という子もいるから注意しないといけない。
マラソン大会はちっとも楽しくない。
寒い時期に行うのもイヤだけれども、何より長い距離を延々と走らされるのがツライ。足に自信のある子にとっては晴れ舞台だけれども、そうじゃない子、運動が嫌いな子、特にマラソンが大嫌いな子にとっては地獄の一日。
水泳大会も盛り上がるけど、やはり人を選ぶ。
水の中とはふしぎなモノで、陸では敵なしの運動が大得意な子が、泳ぎとなるとからっきしなんてことがある。逆に走るのがさっぱりな小太りな子が、水を得た魚のごとくスイスイ泳いだりもする。どうやら筋肉と脂肪の量のせいらしく、なまじ頑強な体の持ち主は水に浮かないのが原因っぽい。沈むから余計に手足をバタバタさせる必要があり、終わったあとにはグッタリしちゃう。
徒歩訓練。
なんてものもミヨちゃんの通っている小学校にはある。
ひたすら歩いて遠くの目的地を目指し、そしてまた歩いて帰ってくる。
これが楽しいかどうか判断に困るシロモノ。
仲のいい子たちとおしゃべりしながら歩く。
それは楽しい。けれどもこれが二時間、三時間と続くとさすがにヘロヘロになる。さらに四時間、五時間、どころか学年によっては夜通しなんてことも。
はっきりいって苦行である。
いちおう救済措置は用意されており、体調不良になったりへばったりでどうしてもダメな場合には、マイクロバスにてピーポーピーポー運ばれる。
そうなったら「楽ちんにてラッキー!」かと思いきや、そうは考えられないのが子どもの複雑な心情。
みんなとゴールできない。自分だけ脱落した。なんだか情けない。
自縄自縛となり、みるみるしぼむ意気地。「しかたがない」と割り切れずに、ものすごくへこむ。
なかには迎えにきたバスに乗ることを泣きわめいて拒む子も出たりするほど。
それほどまでに子どもたちの中では、かっこ悪いことのように考えられているのだ。
いろいろと目論みがある徒歩訓練なのだろうけど、ヘタをするととんでもない挫折感を植えつけられる恐ろしい行事でもある。
そして今年もまた徒歩訓練がやってくる。
「いまどきこんなのって……と毎回思うんだけど、終わったときの達成感がすごいんだよね。でもなんだか場の雰囲気にダマされているような気がしないでもない」
ミヨちゃんがしみじみそんなことをもらしたので、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「受け入れ甘やかすだけが教育じゃない」
とはいえ「コレが正解!」というモノもないから困りもの。
なにせ農作業といっしょで成果がわかるのは、ずっとあと。
リモート教育、吉とでるか凶とでるか。はてさて。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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