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981 もんもん
しおりを挟む夕食はギョウザパーティーだった。
お父さんが出張のお土産に大量に買ってきた品。
向こうでたまさか食べたらおいしかったので、紙袋いっぱいに買ってきた。
で、さっそくホットプレートにてじゃんじゃん焼いて食べる。
皮はパリッとジューシー、それでいて具は肉にくしい。
近所のスーパーで売っている具の量が微妙なギョウザとちがって、とにかくミッチリ、もっちり、食べ応えがある。
これに付属の味噌ダレがいいアクセントとなって、食べ出したらヤメられない止まらない。
大学院生の長兄と高校生の次兄は競うようにして焼けたはしから、胃袋へと放り込んでいく。
それを尻目にマイペースでギョウザの味を堪能しているのは末孫と祖母。
「おいしいねえ」にっこり笑顔のミヨちゃん。
「あぁ、こいつは当たりだ」やはりにっこり笑顔のミヨちゃんのおばあちゃん。
とかくお土産選びはむずかしい。
現地で食べたときには「おぉ、こいつはウマい!」と感激しても、それは旅先のテンションやら、シチュエーションやら、愛想のいい店員のお姉さんのヨイショなど、いろんなスパイスが加味された状態。
いざ、家に帰ってからつまんでみたら「あれ? こんなのだったっけ」となることも多々。
その場所で、その道のプロの手による調理にて、ちょいと摘まみ食いをする。
ぶっちゃけ包丁の扱い一つ、切り口でも、かまぼことかの味に差がでるもの。
慣れない素人がチカラまかせに処理したモノと、プロとでは比べるまでもない。
調理系はとくにそれが如実にあらわれる。
以前にお父さんがお土産として買ってきたフリカケ。あれは悲惨だった。
現地の名産を加工したフリカケなんだけど、食べれば食べるほどに後味がおかしくなる仕様ゆえに、さしもの食いしん坊である二人の兄たちも一度試しただけでそっぽをむき、以降半年近くを棚の肥やしとして過ごし、ついにはお母さんから戦力外宣告を受けポイされちゃった。
というか、お父さんのお土産は圧倒的にハズレが多い。
もちろんお父さんにセンスがないのも原因だが、お土産そのものにもハズレが非常に多いのだ。
受けを狙うことは否定しないけど、悪ノリの果ての狂気の産物はいただけない。
ギョーザをたらふく食べたヤマダ一家。
お父さんは家族の様子にしてやったりと大満足。
家族の方もすっかりお腹が膨れて大満足。
けれどもちょっとした誤算がこのあとに生じる。
それはお風呂も済ませて、各々が部屋に引きこもり就寝し、すっかり家の中が静まり返った深夜のこと。
今夜に限ってちっとも眠れないミヨちゃん。こんなことは見栄をはってコーヒーをがぶがぶ飲んだとき以来。どうにも気が昂っている。ノドもやたらと乾く。これはたぶんギョウザをたくさん食べたせい。タレだか具の方にけっこう塩分が入っていたのだろう。
しようがないのでトイレに起きたら、ばったり出くわしたのは次兄。
まぁ、そういうこともあるだろうとわかれて用を足し、水を飲もうと台所へと向かったら今度は長兄とばったり。
父母どころか祖母まで似たような行動をとり、これには全員が苦笑いをすることに。
「どうやら具に元気になる何かが入っていたみたい。たぶんニンニクなんだろうけど、ふだんあまり食べなれてないから、やたらと効いちゃったみたいで」
照れながらそんなエピソードを披露したミヨちゃん。
これをウンウンうなづきながら聞いていたヒニクちゃんが話し終わりに口を開く。
「古代エジプトの時代からもりもり食べていたニンニク」
どうやら滋養強壮のクスリあつかいだったっぽい。
ニンニクの語源は忍辱という仏教用語。悶々するから
食べちゃダメって僧侶の間ではされていたんだって。
清廉の士をも惑わすんだから、庶民が悶々してもしようがない。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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