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973 きばつ
しおりを挟む「わたしたちずっと友だちだよね」
「もちろんだよ。手紙書くから」
「うん。わたしもぜったいに返事を書くから」
そうして涙ながらに別れたクラスメイト。
メールにライン、携帯電話などなど。
近年、遠方との連絡手段にはことかかない。
だから連絡をとろうとおもえばいつでもとれる。
なのに疎遠になる。
こまめに連絡を取り合っていても、次第に話題がかみ合わなくなる。
それもそのはずだ。各々にて流れている時間が、生活がちがうのだから。
同じようでちがう環境。住む地域によって考え方もちがえば、流行も異なるし、好みも変化する。
あるところではホットな話題が、他所では箸にも棒にもかからないなんてことはしょっちゅう。
テレビの内容だって地域によって異なる。
当然ながら共通の話題はない。もとからあった分は限られるので、次第に底をつき、ついにはぐるぐるマンネリ化。
やがてめんどう臭くなって、倦怠期に突入しおざなりな対応になってくる。
そして週一が、二週に一回となり、それが月一となり、三か月に一回となり、気づけば年に一回あればマシ、だいたいがそのまま自然消滅して没交渉となる。
距離とはそれだけやっかいなのだ。
たとえ愛し合う恋人同士ですらもが、じょじょに冷めてしまうほどに。
遠くの親戚より近くの知り合いとはよくいったもの。
なんぞということが起こってしまうかもしれない。
いままさに出発しようとしている引っ越しのトラック。
その姿から勝手に妄想するミヨちゃん。人生はかもしれないの連続なのだ。
「むかしよりもずっとつながりやすいはずなのに、手軽になったぶん、むしろありがたみが失せているような気がする」
メールは簡単だけど、どこか重みに欠ける。言葉がどうにも軽くて上滑りしている感がある。
往来の自粛とかのせいで、分断される人々。
孫にあえないおじいちゃんおばあちゃんたちはとってもさみしそう。
友だちと気軽に遊べない子どもたちもとってもさみしそう。
買い物帰りに井戸端会議をしているおばさんたちは、わりといつも通りにくっちゃべってる。
物理的距離もやっかいだが精神的な距離の乖離もまたやっかい。
「やれリモートだとかいってるけど、けっきょく最後は対面になるんだよねえ。やっぱり面と向かってツノを突き合わさないと、人間はダメなんだよ」
それらが本当に不要であれば、そもそもビジネスの出張とかいらないという話になる。
でもちっとも無くならない。
古いだとか新しいとか関係なしに、人の本質がそれを求めているのだろう。
どうしても捨てられないモノがある。
「やっぱり温もりが必要なんだと思う。そこでわたしは考えたの」
それはほんのり温かいスマートフォンの開発。
熱暴走を避けるために、メーカーさんは極力温度があがらないようにと苦心してきたけれども、そこをあえて逆転の発想で。
触れているとやすらぎを感じるひと肌の温度。
理想はイヌかネコをギュッとしたときぐらい。
ついでにモフモフ毛も生やしちゃってもいいかもしれない。
なんとも奇抜なアイデアをミヨちゃんよりきかされて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「たしかにこの頃の商品には遊びが足りない」
機能の向上を優先するあまり、なんとなく方向性が定まって
すっかりつまらなくなった新作の発表会。そんなに画質ばかり
良くなってもねえ。ワクワクがちっとも足りない。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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