ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

967 へんけい

　
　自動車がロボットに変形する。
　バイクがロボットに変形する。
　電車がロボットに変形する。
　飛行機がロボットに変形する。
　ヘリコプターがロボットに変形する。
　戦艦がロボットに変形する。
　ウソかまことか、ずっと昔にはライターがロボットに変形していたこともあったらしい。それで何がどうなるのかは、はなはだ疑問だが……。
　乗り物だけじゃない。
　恐竜がロボットに変形することもある。
　動物がロボットに変形することもある。
　もっとも生き物がモチーフになっている場合は、もとからロボットということになるから変形といっていいのか微妙なところ。
　で、いろんなものがガシャガシャ、ギミックを駆使して変形する。
　それはもう、ありとあらゆるものが変形しているといっても過言ではないほど。
　だがしかし……。
　いったい変形の何がそんなにみんなを魅了してやまないのか？
　ミヨちゃんは首をかしげる。

「リバーシブルのダウンジャケットみたいなものかしらん？　一着で二つの色味を楽しめるみたいな。あるいはひつまぶしみたいな味変？」

　ウナギの刻んだやつをのせたごはん。
　一杯目はそのままで楽しむ。
　二杯目は薬味などをのせて楽しむ。
　三杯目は出汁をかけてお茶漬け風でさらさら楽しむ。
　これもまた変形といえなくもない、のか？

「そもそも変形するメリットってあるのかなぁ。機械って複雑になるほど壊れやすくなるよね」

　精密機械ほど扱いには注意が必要。
　豪快に変形するのはかっこいいけど、チャックですらもちょいと糸くずを巻き込んだだけで固まってしまい、ウンともスンともいわなくなってしまう。
　ましてやそれがロボットともなればどうなることやら。

「変形しないと使えない武装があるとかならば、まだわかるんだけど。それとてもあまり意味がないような」

　そもそも人間を模した形というのが、本当に戦いに適しているのか疑問が残る。

「っていうか宇宙空間で足はいるのだろうか」

　やたらと変形ロボットにかみつくミヨちゃん。
　なぜかといえば、次兄のタカ兄がこしらえているプラモデルをみたから。
　男の子がかっこいいと夢中になるものと、女の子がかっこいいと夢中になるものは、微妙にちがう。
　女の子の場合、どちらかといえばロボットを操っているイケメンパイロットの方に目がいく。
　しかし男の子はロボットの方一辺倒。
　で、ロボットの良さについて兄に質問していたのだが、どうにも要領を得なかった。

「好きで、かっこいいって力説するんだけど、いまいちチンプンカンプンなんだぁ」

　そのくせ着せ替え人形は否定することに「意味がわかんない」とミヨちゃん。
　これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「変形と合体は男のロマン、らしい」

　当人の変身願望が反映されての憧れからくる
　変形への憧憬なのか。お得感からくる興味なのか。
　たんに機械やカラクリ好きという線も捨てきれないけど。
　……なんぞと、コヒニクミコは考えている。