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957 はれ
しおりを挟む明け方近くのこと。
布団の中でぶるる。
ふるえたミヨちゃん。
「さ、さむっ」
自室の中のベッドの上だというのに、顔がきんきんに冷たい。
あまりにも冷たいもので目が覚めた。
戸締りはしっかりしているし、パジャマだって布団だって冬仕様。
天気予報では夜更けあたりから冷え込む。ところによっては雪のおそれも、という話だったのでしっかり着込んで温かくして眠ったというのに、いったいどうして?
なにゆえこんなに部屋の中が寒いのか。
理由は簡単。
単に外が凍えるほどに寒いから。
みんなが寝静まって火が消えた家の中は、とってもしんしんしている。
それこそ空気が冷蔵庫ばりに冷たくなるほどにも。
こうなると同じ六畳一間でも、ミヨちゃんみたいな小ささな幼女一人と、兄たちのような大きな男性、もしくはお父さんやお母さんみたいな大人たちとでは、ただそこにいるだけでも微妙に室温に変化が生じるもの。
体という熱源に差がでるのだ。
だから小さな子どもの部屋はいっとう寒くなる。
おかげですっかり目が覚めてしまったミヨちゃん。
しかし窓の方を見ればまだ真っ暗。
冬の夜明けは遅い。それこそ朝の七時ぐらいまで明るくならない。
壁かけ時計を見れば、まだ六時ちょっと過ぎ。
起きるのには早すぎる。
でも寒くって、とてもではないが寝ていられない。
ズボッと布団に潜り込んで縮こまるミヨちゃん。
これでだいじょうぶ。でもちょっと息苦しい。ネコじゃないので、狭いところじゃ落ち着かない。
結果として寒さはしのげても、かえって目が冴えるという事態に陥る。
いっそのことエアコンで暖房を入れるべきか。
でも倹約家の祖母の薫陶を受けて育った末孫は、「朝ちょっと寒いぐらいで、エアコンを使うとかもったいないかも」とか考えちゃう。
同じつけるのならばすっぱり起きて、リビングの暖房をつけた方がまだみんなのためになる。
悶々と悩んだ結果、ミヨちゃんは「えいや」と布団を跳ねのけた。
そして気合を入れて手早く着替えをすませてから、カーテンをシャーッと勢いよくひく。
するとそのタイミングで空が明るくなり始めた。
窓から見える空は雲ひとつないどっぴーかん。
あまりにもキレイだったから、寒さも忘れて窓を開けて顔をだしたミヨちゃん。
白い息を「はーっ」とだしながら冬の朝の清涼なる空気を味わい、しみじみ。
「不要不急がどうとか、世の中、何かときゅうくつでうるさいけど、空はかわらず青いんだよねえ。うん、今日もいい天気」
……などという朝の一幕をミヨちゃん当人から語って聞かされたヒニクちゃん。ここでおもむろに口を開いた。
「基本的にひと昔前に戻っただけだから」
いろんなことがあったけど、あわてているのは人ばかり。
冷静にふり返ってみると、アレ? なくても平気かもが多い。
かくして陽はまた昇り、地球は回り続ける。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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