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951 あっさり

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「今年もいろいろありましたなぁ」

 と振り返るミヨちゃんとヒニクちゃんの二人。
 ところは、河川敷の堤防の斜面にて。
 わりと陽気がよくてぽかぽか。
 急に寒くなったとおもったら、一転して日中は暖かくなったりもする。
 でも陽が暮れるとやっぱり寒い。
 しょせん冬は冬なのだ。
 なのに今年はちょっとちがう。
 まずいまだに窓に結露が発生していない。おかげでこまめに拭き掃除をしなくてすむので助かっているけれども、なければないで少し不安になる。
 朝一の冷え込みがそれほどでもない。
 布団から出るのをためらわない。着替えがおっくうにならない。
 吐く息がちっとも白くならない。
 モンスターがゴーッと吐く炎のごとくなるはずなのに、ハァハァしてもちらりとも出てこない。
 水が凍えるほど冷たくない。いつもならば手を洗ったら真っ赤になるのに、それがない。
 同様に風もいまちい冷たくないので、外から帰ってきた直後なのにキンキンに手が凍えていない。だからこたつに突撃するようなこともない。
 服装がわりと少ない。
 例年であれば重ね着しまくってモコモコだというのに、である。
 おかげでカイロもあまり出番がない。

 まぁ、だからどうしたといえばそれまでのこと。
 冬は冬だ。そして年末は年末だ。
 だから今年にあったことを薄ぼんやりと振り返る幼女たち。

「なんだか不倫が多かったよねえ」とミヨちゃん。

 俳優、芸人、政治家などなど……。
 とにかく有名どころが多かった。そして世間の目がとっても厳しい。
 もう容赦なしのフルボッコ!
 たしかに犯罪をしたわけではないけれども公私において失うものが多すぎる。
 いっときの悦楽と引き換えにするにはあまりにも割に合わない。
 スポンサー関連への巨額の賠償責任とか想像するだに恐ろしい。

「政治家の失言も多かったよねえ」とミヨちゃん。

 言わなくてもいいことを、ついポロリ。
 たちまち大炎上となって火の車。
 もしくは自業自得にて自ら火中へと飛び込む者も。
 うっかりミスから、確信犯、もしくは隠していた正体が明らかになったり。
 地元の有権者からは「はずかしい」とまで言われたりもする。
 なのに議員バッジは意地でもはずさない。
 ウソばっかり口にしていたとて、裁判にかけられたとて、周囲からいかに問責されたとて。
 以前からも責任をとらずに、すぐに秘書のせいとかにしている人が多かったけど、ここのところはより顕著になりつつあるようだ。
 これはあまりよろしくない傾向であろう。

「ごめんなさいですめば、警察はいらないよねえ」とミヨちゃん。「そういえばあおり運転とかも多かったよねえ」

 自動車の運転トラブル。
 道をゆずるゆずらないだの、割り込んだ割り込んでないだの、こっちをにらんだにらんでないだの、追い越した追い越してないだのと、じつにしようもないこと。
 なのについカッとなっての無謀運転。なんという稚拙で短慮か。
 ハンドルは凶器なのだと教習所でもしっかりならっているはずなのに……。

 他にもいろんなことがあったこの一年。
 もちろん世界的に流行したアレも忘れちゃあいけないけれども、あえて触れるほどでもない。というかいい加減にうんざりだから。連日、テレビをつければ耳にタコ状態にてすっかりお腹いっぱい。
 そんなミヨちゃんの繰り言を受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。 

「けっこうな激動の時代」

 お気楽ご気楽かとおもいきや、怒涛の展開。
 物語ならば盛り上がるところだけど、現実だとグダグダ。
 どうにも現実の脆弱さばかりが目についてしようがない。
 もしかしたら人類はあっさり滅亡とかしちゃうかも。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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