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942 しんばしら
しおりを挟むピシっ!
なんら前触れもなく、唐突にそんな音がしてビクリ。
自宅の部屋の中でのことだ。
ふんふん機嫌よくベッドに寝転がり、ミヨちゃんがお気に入りの少女マンガのコミックを読んでいたときのことである。
三世代住宅にてちょくちょく手を入れているとはいえ、今どきの家と比べるとお世辞にも機密性は高くない。さりとて不便を感じるほどでもない。
でもそのせいなのか、ちょくちょく家鳴りがする。
家鳴り。
家が音を立てて動くこと。動くといっても微々たるもの。建材の収縮やらかみ合わせによって起こるといわれている現象。
かつてこれは妖怪の一種だと考えられていたこともあるとか。
なんでも家に住み着いた小鬼みたいな連中がこぞって、柱とかをゆさゆさしていたと考えられていたそうな。
西洋ではポルターガイストの一種とされていた。
でもって現代ではある種の共鳴現象ではないかといわれている。
ビキッ!
さっきよりもさらに大きな音がして、いつもは特に気にしないミヨちゃんも不安になった。音がしたのは窓の方。
寒暖さが増すと、もっとも気温の影響を受けやすいのが窓辺。
ガラスとサッシと窓枠。これらがピキリパキリと鳴りやすいのである。
そろそろ冬も本格的になってきたことだし、結露も気になる時期だから、ミヨちゃんが窓辺に着目したのも当然のこと。
だがしかし、近寄ったとたんにまるでちがう方向がパキリと鳴ったものだから、ミヨちゃんは驚いてふり返る。
音がしたのは天井の照明付近。
ミヨちゃんの部屋は二階なので屋根に近いところにある。そして瓦屋根なのでお日さまの影響も残りやすく、そのせいで屋根が鳴くこともめずらしいことではない。
とはいえ……。
「今日はなんだかやたらと家鳴りがするねえ」とミヨちゃん。
ちょっとお花摘みにて廊下へと出ると、今度は廊下の床でピシっと鋭い音がした。
家鳴りが自然現象にて、これはこういうものと理解していても、やっぱりちょっと気味が悪いミヨちゃん。いそいで用事をすませてしまうことにする。
トイレでは鳴らない。あそこはたぶん狭くて頑丈な造りになっているからであろう。
出すモノを出してそそくさと自室に戻ったミヨちゃん。
部屋へ入り扉を閉めたとたんに、またぞろピキリパキリと鳴り出したものだから、さすがにちょっとイラっとした。
だからつい声を荒げて「うるさい。いい加減にして」と文句を言うと、ふしぎなことにピタリと音が止んでしまう。
しーんと静まり返る室内。
望み通りになったというのに、どうにも居心地が悪くてしようがない。
「……なんてことがあったんだよぉ」とミヨちゃん。いつものごとく仲良しのヒニクちゃんとの下校中のことである。
「文句を言ったとたんに静かになるとか、かえってこわいよ」
そんなミヨちゃんのぼやきを受け、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「家鳴りのする家は丈夫って話もある」
設計に遊びがない建物が地震に弱いのは有名。
静音設計もけっこうだけど、生活音や家鳴り程度を
許容できない時点で、心の柱がかなりグラグラ。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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