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938 たいあっぷ
しおりを挟む悪さをした人が、いざ死を迎えるにあたって涙ながらに己が罪を悔いる。
神父さまがこれに対して「あなたはきっと許されますよ」と慰めて、心安らかに逝かせる。
じつは懺悔をしていた男が神父さまの父親を殺した強盗殺人犯という、複雑な設定。
加害者と被害者家族、互いが苦悩のはてに何を見出すのか?
といったテーマの映画のラスト付近のワンシーン。
ある意味、一番のクライマックスといっても過言ではない場面。
それを「ほへー」と眺めていたのはミヨちゃん。
小学二年生ながらにも映画に感銘を受けて、いろいろと想うところはある。
人生の最期に救いを見い出すことに是非については、まぁ、どっちでもいい。
告白してわびる側は、あやまれてスッキリするかもしれないけど、あやまられた側は「ふざけんな!」という意見も多いことであろう。かといっていつまでも憎しみを抱いて生きていくのもつらい。
いまさらあやまるぐらいならば、はなから阿呆なことをするな!
というお怒りの意見もあるだろう。
いやいや、最期ぐらいは許してやろうよ。
という情け深い意見もあったっていい。それぐらいの寛容とやさしさがないと、あまりにも世知辛いもの。あぁ、わたしはやさしい人間になりたい。
ってな具合で、ミヨちゃんの中でもいろんな考えが混在しているので、許す、許さない、さぁ、どっち?
とか簡単に決められるものではない。
だからこの問題はいったん保留。
ただし、そのかわりにといってはなんだが、ミヨちゃんはこんなことを考えた。
「いんちき占い師とか心霊やら宗教の人たちってたくさんいるけど、ああいう人たちって最期はどうなのかしらん」
金儲けに悪用しているぐらいなんだから、根本ではその手の話を微塵も信じちゃいないのだろう。
運命? 死後の世界? 神様? 天国と地獄?
そんなのあるわけねーじゃん。だというのにちょっと匂わせて脅したらビビって金を注ぎ込んでくれるんだから、笑いがとまらねえぜ。世の中ちょろいぜ。的な思考の持ち主たち。
だからこそ詐欺行為なんかに手を染めているのだろうけど、いざともなるとどうなのか。
お化けなんてまるで信じていない人でも、お化け屋敷は怖いし、ホラー映画も怖いし、ホラーゲームもやっぱり怖い。
見えないものの存在なんて信じてはいない。
科学的根拠のないものはありえない。
そう豪語する人でも寂しい夜道はやっぱり怖いし、廃屋とか山奥とか、夜の学校とかふつうにビビる。
それすなわちどれだけ理論武装していようとも、どれだけ剛毅な性格の持ち主であろうとも、やっぱり怖いし、不安になるということ。
でもってサギ系の中でもあの世とか見えないものをネタにしてきた者たちの心中や、いかばかりか。
いつものごとく仲良しのヒニクちゃんとの帰り道。
「どう思う?」
ミヨちゃんからたずねられたヒニクちゃん。しばらく首をかしげつつ熟考してからおもむろに口を開いた。
「占い師や霊媒師と探偵事務所がタイアップ」
持ちつ持たれつ、それが世の中。はたから見ればサギでも
当人が納得していたら、それはそれで成立しちゃうし。
憎まれっ子世にはばかる。なんてことわざがある辞典で、
まぁ、そういうこと。あとよごれた雑巾は基本的に灰色のまま。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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