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921 あいだもの
しおりを挟む世の中には二種類の人間がいる。
モテる者とちっともモテない者。
ミヨちゃんの通う小学校にもモテモテの男子がいる。
この手の男の子はどこの学校にも一人や二人はいるもの。
背が高い。足が長い。勉強もスポーツもそこそこできる。なにより顔がいい。そして性格は……ちょっとわからない。
外面と本性はちがう。内面までは遠目に眺めているだけではわからないもの。
だからこそ世の中にはDV夫なんぞに苦しめられる奥さんがいるのだ。
いい人だなぁ。と思って結婚したのに、しばらくしたら馬脚をあらわす。そこから先はもう悲惨だ。
というような話を大人向けのドロドロレディスコミックで読んで知っているミヨちゃん。あれはけしからん。暴力反対とぷんすか!
とはいえモテる男子にきゃあきゃあ騒ぐのもまた女子の習性みたいなもの。
今日も今日とて校庭でサッカーをしているモテモテ男子に、黄色い声援が飛んでいる。
「で、実際のところはどんな人なの? 彼ってば」
「うーん。なんどかグランドでいっしょになって話したりとかもしたけど、わりとふつうだよ」
アイちゃんから話をふられて、リョウコちゃんがそう首をかしげる。
地元の女子サッカーチームに所属しているリョウコちゃん。モテ男も同じ球技をしている関係で、わりと顔を会わせる機会が多い。だからアイちゃんがモテ男の人となりを訊ねてみた次第。
「ちっとも悪い話は聞かないかなぁ。告白されてもけっこうきちんと断っているらしいし」
なんでも彼には意中の人がいるらしい。
そんな情報をもたらしたのはチエミちゃん。なにげに人脈が広く情報通なところがある彼女。
「くるものこばまず、とかだったら最低だけど、マジメに対応してくれるのはいいかもね」
うんうん。独りごちているのはミヨちゃん。
適当にお茶を濁さず、また相手に気を持たせるようなこともせず、きっぱり断る。
当たり前のようで、これがなかなかむずかしい。
自分に対して特別な好意を寄せてくれる相手ともなれば、なおさら。
なのに問題が起こっていないということは、それだけ誠実に対応しているということ。
ミヨちゃんの中で、彼に対する好感度がピコンとあがった。
とはいえ、それはあくまで一人の人間としてのこと。異性を意識したものではない。なにせミヨちゃんのところには二人の兄がいる。
それすなわち男の本当の姿を知っているということなのだ。
異性への幻想なんてシロモノは、幼稚園にあがる前にドブに捨ててきた。
イケメンだろうが、ブサメンだろうが、アイドルだろうが、出すものは出す。だって人間なんだもの。
乙女の夢を壊さないのは少女マンガの中の王子さまだけなのである。
「でもそうなると彼の意中の人ってのが、どんな女性なのか気になるよねえ」
アイちゃんの言葉にミヨちゃんたちがそろってうなづく。
本命の情報はチエミちゃんのアンテナにも引っかかっていないらしい。
なんだかんだでイケメンをネタに盛り上がる幼女たち。
するとじっと話に聞き入っていたヒニクちゃんがぼそり
「なにも女とはかぎらない」
愛は素晴らしい。愛は大切。愛は尊い。誰もが愛を賛美する。
なのに対象によっては微妙な反応になる。
不倫はダメ、略奪愛もダメ、同性愛はダメじゃやないけど、
いざ身内となると、うーん。でもアレもコレも愛は愛なんだよねえ。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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