上 下
917 / 1,003

913 よがり

しおりを挟む
 
 飲食店が次々に閉店へと追い込まれている。
 というか、もともとあまり長続きはしないらしい。
 だいたいが三年ともたずにつぶれる。
 老舗と呼ばれ、うん十年も続けられるほうが稀らしいけど、それは他の業種も似たようなものなので、いちがいにどうこう判断できることではない。
 で、その飲食店なのだけれども、シャッターが閉まったカレー屋を前にしてミヨちゃんは首を傾げる。

 嫌いな人を探すほうがムズカシイ食べ物の二大巨頭といえば、カレーとらーめん。
 街頭アンケートにて「好きな食べ物は何か?」とたずねたら、必ず上位にランクインしているであろう。
 老若男女関係なしに、みんな大好き。
 もちろん中には苦手とか、あんまり好きじゃないという人もいるだろうけれども。それはごくわずか。
 大多数から支持されている料理。それをあつかっている。しかも専門店だ。
 だというのに、そんなお店がつぶれる。
 わざわざお店を開くぐらいだから、相応に研究を重ね味はいいはず。
 事実、行列ができたり、マスコミにとりあげられたりして、人気が出ることも珍しくはない。

 なのに数年後には消えていることもしばしば。
 これについて、ミヨちゃんは「意味がわかんない」と首をかしげる。
 だって好きな人が多いんだもの。
 それすなわち客にはこと欠かないということ。
 たしかにライバルは大勢いる。でもそれ以上に客層も厚い。それこそ掃いて捨てるほどにいる。
 なのに立ちゆかなくなる。
 この辺の理屈がどうにもわからない。

「マズイわけじゃない。値段が高すぎるでもない。欲をかいてやたらと商いの手を広げたのならばわからなくもないけど、そんなこともない。好きな人は遠方からでもわざわざ通ってくるし、待ち時間だって気にしない。むしろ行列に並ぶことを楽しんでいる風ですらもある」

 立地条件が必ずしも客足や経営を左右しなくなった時代。
 以前よりも出店するのがやや楽にすらなっている。
 趣味が高じて……。
 なんて話も珍しくない。
 好きこそものの上手なれではないが、そのおかげで成功している人がいる一方で、目の前のシャッターを閉じた店舗のような憂き目にあっている人もいる。
 その差はどこにあるのかとミヨちゃんは「むむむ」と考え中。
 すると隣にいたヒニクちゃんがぼそり。

「独りよがり」

 ずっと愛され変わらない味。
 これは何もしていないという意味ではない。
 守るべきを守り、変えるべきは変え、積み重ねた
 努力の結果。けっして何もしなかったわけじゃない。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...