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909 かいでんぱビビビ
しおりを挟む「近頃、ちょっとヘンだ」
とはミヨちゃんの言葉。
いつものごとく仲良しのヒニクちゃんとの下校中のこと。
剥がし忘れられた選挙用のポスターを見つけて、幼女がそうつぶやく。
政治家が公然とウソをつく。
選挙公約といえば聞こえがいいけれども、耳障りのいい言葉と内容だけで、実現するための道筋にはいっさい触れていない。
何をするにも先立つものが必要。
だがその予算を確保するのがちとむずかしい。
なのに安易に策を打ち出す候補者たち。
そりゃあ実現すれば、有権者としてはたいそうありがたい。
でも絵にかいた餅で終わることがあまりにも多すぎる。
「やるだけやってダメって話ならばまだわかるよ。でもはなから出来もしないことを声高に叫んで、まんまと当選しては、それであっさり撤回して『無理でした』はないと思うの。それってもうサギじゃないの?」
口が軽く、言葉も軽く、発言に責任を持たない政治家が増えている。撤回して頭を少し下げてみせればそれでいいという問題ではない。それだけの立場であり、権限と恩恵を与えられているのだから。
それを肌で感じてミヨちゃんはプンスカ。
だがヘンなのはそれだけじゃない。
「なんだか言ったもん勝ちみたいなことが横行している気がする」
媒体が増えたせいか、誰でも主義主張をしやすくなった。
それ自体はとてもいいこと。
でも何でもかんでも発信すればいいというわけじゃない。
根拠のないことを、さも真実であるかのように発する者がいる。
ありもしないことを、さも本当のことのように発する者がいる。
自己のあやまちを一切認めず、悪いのは周囲であると発する者がいる。
一方的な主張をくり広げて、平然と他者を誹謗中傷する者がいる。
聞くにたえない、観るにたえない、そんなことを臆面もなく発する者がいる。
それで注目されて悦に浸っている者すらいる。
歪んだ承認欲求が明らかに暴走している者もいる。
誰にでも使える便利なツールは、それゆえに本来の目的から大きく逸脱して、おかしな使われ方をされることもしばしば。
あやまった情報も正しい情報もあっという間に拡散される。
でもって、延々と残り続け、くすぶり続ける。
数年前にちょっと口を滑らした発言が、のちのちに祟るなんてことも珍しくはない。
何かのひょうしにひょっこり顔を出しては、大炎上となることさえも。
なのに軽率な行動をとる者があとを絶たない。
「まえに電磁波がどうとか騒いでいたことがあったでしょう? あれってまんざら与太話でもなかったのかも」
なんぞと心配するミヨちゃん。ひょっとして脳が正常な判断を下せなくなっている?
それほどまでに幼女の目から見て世の中ちょっとヘンなのだ。
これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「ない、とは言い切れない」
怪電波でビビビビビーッ、とか。昔の特撮やマンガなんかで
たまにあったけれども。現状を見るかぎりではちょっと笑えない。
なにせ液晶画面に接する機会が格段に増えているから、
洗脳、思考誘導、サブリミナルとかやり放題な気がするもの。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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