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902 あだな

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 あだ名をつけるの禁止。
 なる風潮がじわじわと巷に広がりつつある。
 その理由はわかるところもあるし、首をひねるところもある。

 親しみを込めたあだ名がある。
 それは真からのものにて、呼ぶ方も、呼ばれる方にも認知された愛称。
 仲良しの証。
 一方で、そうではないあだ名がある。
 容姿をからかったり、あげつらったり、当人が嫌がっているのにもかかわらず、それと知って呼び続ける悪意あるもの。
 もしくは当人が享受しているからとて、傍からみれば「ちょっとひどいんじゃないの?」というものもある。
 表向き享受していても内心では、とても悲しんでいることもある。

 テレビにて奇抜なあだ名を即興でつけるという芸がもてはやされたこともある。
 これまた賛否両論にて、おおいに世間を賑わせた。
「愛ある貶し」とか「玄人により絶妙なイジリ」とか称賛されるほどに、それを真似したことによる被害が拡大する。ぶっちゃけイジメを助長したというケースもけっして少なくはない。
 発信者としてはそんなことまで責任を負えないといえば、それまでの話。
 だけれども、それを「無責任だ」と糾弾する一派もいるわけで。

 何事もそうなのだけれども、つきつめたらややこしいことになる。
 なぁなぁであったからこそ成立していた関係が、とたんにめんどうなことになる。
「そういったものだろう」程度の認識に、きちんとした型をハメようとして、事態がおかしなことになる。
 とかくままならぬのが世の中。白と黒、なんでもくっきり分ければいいというわけでもなく、また分けられるものでもない。
 なのにデリケートな部分にやたらとメスを入れたがるのもまた、人の性。

 ミヨちゃんのところにもあだ名論争が絶賛波及中。
 教師陣をはじめとした大人たちは「どうしたものか」と悩み、でもって子どもたちもまた当事者ゆえに、頭を抱えることになる。
 この手の問題は考え方も千差万別にてストンとまとまるはずもないというのに。
 いっそのこと国の方でバシッと決めてくれたら、あとは従うだけでラクなのに、肝心な時に責任を負いたくないから沈黙を守るのもまた、えらい人たちのお約束。
 まぁ、そういったことは脇へと寄せておき、ミヨちゃんが気になったのは仲良しのコヒニクミコこと、通称ヒニクちゃん。
 これこそ渦中のあだ名であろう。当人的にはそこんところどうなの?
 との言及について、ヒニクちゃんがコメントを発した。

「うん。どうでもいい」

 イヤがる子に、それを強要するのはまちがっている。
 かといってイヤがっていない子のソレを禁じるのはちとちがう。
 だいたい大人が良かれとおもって介入した事案について、
 いい結果が生まれたケースって、とっても稀なんだよねえ。
 あと他にもっと考えるべき大切なことって、あると思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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