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894 かぼちゃ

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 聖なる夜が性盛る夜となり、ケーキをつつく行事となってひさしい。
 そしてハロウィンもまたよくわからない行事になりつつある。
 東洋の島国にて、お祭り騒ぎのネタと化す西洋のイベントたち。
 これもまた民族や文化の多様性がもたらした結果か?

「まぁ、コスプレとか楽しそうだけど、これってたぶんバレンタインデーとかと同じだよね?」

 家の軒先にある木に、クリスマスツリーのように小さなかぼちゃの飾りが吊り下げられてあるのを目にして、ミヨちゃんがそうつぶやいた。

 バレンタインデーのチョコレート商戦しかり、クリスマスのプレゼントはケーキ商戦しかり、節分の恵方巻きしかり、スイートテンダイヤモンドしかり、土用の丑の日のウナギしかり……。

 もっとも定着して成功したのは、やはりバレンタインデー。
 いまや本命チョコ、義理チョコ、友チョコ、自分へのご褒美チョコ、男性から女性に贈る逆チョコなどなど、手をかえ品をかえ、しぶとく生き残っている。
 年間の総売り上げの一割近くを、バレンタインデー期間に叩き出すというのだから、おそろしい。
 一発当たればドカンとデカい商業イベント。
 近年のインターネット情報社会化によって、ますます勢いをみせつつあるのだけれども、なんでもかんでも打ち上げればドカンとはじけるのかというと、そうでもなくて。
 人間とは天邪鬼な一面も持っている。「いかにも」な空気を感じてしまうと、とたんに興がそがれてズーンと冷めてしまう。
 景気がいいのは歓迎するけれども、がっぽり儲けていますみたいなのはダメ。
 お金の気配が見え隠れしたとたんに、潮がひくかのようにして下火になってしまう。
 情報を拡散してイベントを盛り上げるにしても作為的なのは、むしろ逆効果。
 とはいえ自然に盛り上がったり、定着するまでには時間がかかりすぎるので、やはりテコ入れは必須。でもそのへんのさじ加減がめっぽうムズカシイ。
 ぶっちゃけ確実に流行させるすべなんて誰にもわかっちゃいない。
 やれ、マーケティングだどうの、情報戦略がこうの、とそれっぽいことをやっているが、毎回、成功するわけじゃないのが実情。

 流行させようとは企んでいるし、相応に戦略を練り、実行に移している。
 が、その種がちゃんと芽吹くのかどうかは神のみぞ知る、なのである。
 最近ではAIを活用してなんて話もあるけれども、成果は微妙らしい。
 単純なようで複雑、素直なようでへそ曲がり、秋の空のごとく気まぐれで、妙に意固地になったかとおもえば、あっさり手の平を返す。かと思えばしょうもないことに命をかけたりもする。まっこと人間は不可解な生き物なり。

 で、話がだいぶんと横道にそれてしまったけれども、ハロウィンである。

「そもそもの話、ハロウィンって何のお祭りなの?」

 いまさらな質問をミヨちゃんが言い出したところで、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「魔除けっぽい?」

 日本でいうところのお盆のシーズン。いろいろ寄ってくるので
 それらを追い払うために仮面を被ったんだとか。大古には
 お菓子のかわりに生贄を……なんてこともあったんだとか。
 トリック・オア・トリート。何げに怖い言葉だと思うの。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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