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886 あきのす

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 害虫駆除。
 昔は汚れ仕事あつかいにて、これを生業としているとあまりいい顔をされなかった。
 さりとて必要な職業だというのに……である。
 しかし近年、その風向きが変わりつつある。
 人々の職業に対する偏見などが薄れて、より理解が深まったことも大きいが、なによりもテレビなどでこの手の仕事が取り上げられる機会が増えたことが、一番の要因。
 眠らない大都会とて、そこには自然があり、人間以外の多くの生き物たちも暮らしている。
 そのなかにはネズミやらゴキブリやら、あまり好ましくない生き物も多々。
 一般生活においても出来れば顔を会わしたくないような相手なのに、これが衛生に気をつけなければならない飲食店ならばなおさら。
 けれどもそういったところほどエサとなるモノが豊富なので、どこからともなく寄ってくる。
 ビルの高層階とか、地下深くでもおかまいなし。
 そんな時に頼りになるのが、害虫バスターたち。
 豊富な知識と経験を活かして、困ったちゃんたちをバッタバッタとなぎ倒す。
 彼らの活動に密着したドキュメント番組は、放映されるやいなや反響を呼び、たちまち各局にて似たような特集が組まれるほど。
 それだけ悩まされている人たちが多かったということである。

 そんな害虫バスターが学校にやってくる。
 この一報に子どもたちは浮足立った。
 体育館の裏手の軒先。
 そこにいつの間にやら巨大なスズメバチの巣が!
 大人が抱えきれないほどもあるサイズにて、おそらくは内部にて無数のスズメバチが蠢いているはず。とてもではないが素人が手を出していいシロモノではない。
 これをやっつけてもらうために、学校側が業者を手配したというわけ。
 学校側としては「危険だからくれぐれも巣に近寄らないように」と子どもたちに通達しているも、言われるほどにうずくのが幼い好奇心。友人らと連れだっては見物しようと画策するも数多。
 おかげで休憩時間ごとに先生のうちの誰かが、見張り番に立つハメに……。
 しかしそんな日々もついに終わるときがきた。

 白いワゴン車で来訪した駆除業者。
 案内されるままに現場を確認すると、ちゃっちゃと完全防備の作業着に着替えて、道具をそろえて、巣の撤去にとりかかる。
 脚立をかけて、巣に近づき、周辺で暴れる個体を虫取り網でサクサク確保しつつ、巣の入り口の穴には発煙筒みたいなのを突っ込む。
 しばらくしてスズメバチたちの動きが鈍くなったところで、大きて丈夫なビニール袋を使って、巣そのものを軒先から切り離して確保。
 あとは周囲にいた取り残しを掃除機みたいな機械でしゅぽしゅぽ回収して、駆除作業は終了。
 任務完了までにかかった時間、わずかに二十分足らず。
 見事な手際と完璧な仕事ぶりに、先生たちはみんな大満足。
 しかしせっかくの害虫バスターたちの活躍を見れなかった子どもたちは、ブーブー文句をたれた。
 ミヨちゃんも「あーあ、見たかったなぁ」と不満顔。
 これを受けてヒニクちゃんがおもむろに口を開いた。

「スズメバチは秋が一番危険らしい」

 鳥のスズメほどもの大きさがあるから、スズメバチ。
 あるいは巣の模様が鳥のスズメの模様に似ているから、
 そう呼ばれているらしいけど、ぶっちゃけどっちの説も微妙。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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