ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

878 れじ

　
　ひさしぶりに行った郊外のスーパーマーケット。
　店内はとりたてて変わっちゃいない。少し棚の配置とか雰囲気が変わっているのは、店長さんがかわったせいだろうか？
　スーパーに限らず他のお店でもそうだけど、店長さんがかわると微妙に店内が変化するもの。
　これは指導方針やら、その人ならではのこだわりとか、考え方が反映されるから。
　とはいえ店内まるごと自分色に染めるのはたいへんなので、ちょこちょこ部分的に手が加えられるのがつね。
　ゆえにミヨちゃんがおつかいで訪れたスーパーも、大まかには昔と変わってはいない。
　でも明確な変化が二つあった。
　ひとつは時節柄、感染症対策のためにレジ回りに設置された透明パネル。中途半端な囲いにどこまでの効果があるのかは疑問だが、たとえ紙装備とて、丸出しよりかはマシという考えなのかもしれない。
　いまひとつはレジそのもの。
　支払いがセルフのタイプに変更されてあった。
　だからレジで店員さんが行うのは、あくまで商品のバーコードを機械に読み込ませるだけ。
　清算の方はべつの機械が自動で行い、客は指定された番号の機械にて支払いをする。
　何気に増えているこのタイプのレジ。
　もの凄い勢いにて業界を席捲中。
　この分ではコンビニエンスストアのような対面方式は、いずれ完全に駆逐されてしまうかも。じじつコンビニでも電子マネーを使った自動化が進行中だし。
　とはいえ、まだまだ試運転段階にて全自動化にはほど遠いのが現状。
　どうにも我が国の風土や文化とＩＴ化は相性があまりよろしくないみたい。ＳＦちっくな未来は遠い。
　なんぞと考えつつも、おつかいの商品の購入を済ませたミヨちゃん。
　あとは支払いをするだけなのだが、ここでちょっとトラブルが発生。

「うぅ、とどかない」

　お金の投入口に手が届かない。
　そればかりか画面にて認証ボタンを押さなければいけないのに、そこにいたっては見ることもかなわない。
　そう。レジ回りの機械はすべて大人準拠に設定されているから、小学二年生の幼女にはキビシイのだ。
　見かねた親切なおばさんが手伝ってくれたので、このときは無事にすんだけれども。
　これを踏まえて、ミヨちゃんは主張する。

「子どもにやさしくない社会はよくないとおもいます」

　大人はちょいとしゃがめばすむけれども、子どもはいくら背伸びしても届かない。
　ならばどちらに合わせるべきかは自明の理。
　なのに現実は逆だ。世の中こんなのばっかり。
　ひどいお店になるとカートを借りるのに百円玉を差し込まなければ使えないところもある。
　盗難防止やら、いろいろと店側にも事情があるのだろう。
　とはいえ、先立つものがなければ幼女にカゴで重たい荷をかつげというのか？
　一部のマナーの悪い客のあおりを受けて、善良なる客が不利益をこうむる。
　これはちょっとヘンじゃないの？
　とのミヨちゃんのグチを受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「社会を動かすのは正悪ではない」

　社会を動かしているのは、ずばり数の論理。
　多数派がまかり通り、少数派は異端児扱いにて迫害される。
　数の暴力ならぬ、数こそが正義。だから子どもの主張を通すには、
　子どもの数をどんどん増やすしかないんだけど……。
　大人ががんばってくれないと増やせないんだよねえ。
　……なんぞと、コヒニクミコは考えている。