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825 けんけつ
しおりを挟む献血がピンチらしい。
不要不急の外出を控えるようにとの大号令。
でも、不要不急って何?
個人差がものすごくて、アイドルの熱心なファンにしてみれば、イベントなどは絶対に欠かせない用事だけれども、ファンじゃない人にしてみれば、「はあ?」となる。
仕事だからという理由もあやしい。
優先事項、重要度、その他もろもろを突き詰めてみたら「それって、いまやらなくていいんじゃないの」ということも多々。
最終的には自分で判断するしかないわけで。
基準があいまいだから、ぶっちゃけ世間はそこそこ混乱した。
それでも手探りで、どうにかやりくりを続ける。ここがガマンのしどころ。
しかしこの過程で一般人が予想だにしない問題が発生!
「献血が足りない」
各地におもむいて積極的に集めることができない。
おもむいても人の出が極端に少ないので、おもうように集まらない。
センターに足を運んでくれる人も減る一方。
けれども使用する量が減るわけではないから、在庫は減る一方。
完全に負のスパイラルに入っている。
専門家や医療関係者などは早くから、この危険性を声高にさけんでいたのだけれども、いまいち実感が持てないので、世間からはけっこうスルーされてしまった。
というか、みんなは知らなかったのだ。
血液のことについて何も……。
「えぇっ! 血って一か月も保存できないの?」
おどろくミヨちゃん。
本日はヒニクちゃんともども、大学院生の長兄の献血につきあっての見学会。
本当は自分たちも協力したいのだけれども、小学二年生の幼女にはちと早い。
そして現場の看護師さんから教えられたのは血液の保存期間は、だいたい二十日前後だという衝撃の事実。
なお成分別では、赤血球ならば有効期間二十一日、血漿ならば有効期間約一年、血小板ならば有効期間わずかに四日!
「てっきり大きなタンクとかに貯めて、冷蔵庫に入れておけば、数年単位で保管できるんだと思ってた」
保存がひと月もたないと教わって、ミヨちゃんは「えー」
だって、こと血液という面に限ってみれば、社会はかなりの自転車操業状態だということなんだもの。
ぶっちゃけめちゃくちゃ危ないし、危うい。
いざというときのために必要なこと。
なのにそれを人々の善意に頼っている。
災害時のボランティア活動とかもそうだけど、対処において、はなから人の善意を組み込むことは、あまりにも見積もりが甘いのではなかろうか?
「いっそのこと買い取ったら? もしくは義務化?」
ミヨちゃんのそういった意見に、看護師さんとお医者さんは苦笑い。
どうやら大人の世界は、そう簡単にはことが運ばないらしい。
命にかかわる大事なことを、ずっとないがしろにしてきた。
やるべきことをやらずに、不要不急?
自身をとりまく社会や環境、将来に、いちまつの不安を隠しきれないミヨちゃん。
幼女が「なんかおかしいぞ」と小首をかしげたところで、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「先進国とかいっても、ひと皮むけばこんなもの」
高度な工業化をなし、高い生活水準を維持し、
経済が大きく発展した国を指すけれども、
意識や人心までもが急成長するわけじゃないから。
というか千年前から、人類、ほとんど成長してないし。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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