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812 ならび
しおりを挟む郊外にある大型の古本屋さん。
物流の倉庫をそのまま居ぬきで活用しているらしく、店内の造りはまんま倉庫。
でも本だけじゃなくて、ゲームに雑貨やらスポーツ用品、その他いろいろ。
とにかく扱っている商品がてんこ盛り。
だから店内をブラブラしているだけでも、けっこう楽しい。
ミヨちゃんとヒニクちゃんも、たまに遊びにくるし、買い物もする。
中古品が雑多ゆえに、掘り出し物なんかもあって、宝探しみたいで楽しいのだ。
あと、夏場は涼しく、冬場は暖かい。雨の日は天気を気にしなくてもいい。
あまりハシャがなければ、店員さんもうるさいことは言わない。
それどころか顔見知りの店員さんがいるときには、休憩時間にお茶をご馳走してくれたりもする。
そんなお店の店長さんがかわった。
若いながらもやり手だとの下馬評であったのだけれども……。
「なに、これ?」
本棚を前にして、ミヨちゃんがうめいた。
小説の類は作家別に並んでいる。これはいい。昔からずっとこのスタイル。
が、それ以外の棚がちょっと困ったことになっている。
ジャンル別といえば聞こえがいいんだけど、ぶっちゃけごちゃ混ぜ状態。
棚がカオスと化して、たいへん!
「うわ、目がしんどい」
ミヨちゃんがそうつぶやいたのもムリはない。
以前は出版社別に並んでいた。
出版社ごとに本のデザイン、とくに背表紙は色合いがそろっているので、並べればとってもまとまりが生まれる。
本屋さんなんかでも導入しているところが多いスタイル。
これを廃止して、ジャンルごとにまとめたのが現在の棚の状態。
その結果、デザインがごちゃまぜで見た目がとってもとっちらかった。
ジャンルごとにまとまっているほうが、利用者の便利がいいだろうという店側の配慮はわかるのだけれども、はっきりいっていらぬお世話。
本の区分って、アレでけっこうデリケートな問題。
知識も興味もない人間が、内容を確認することなくタイトルだけで選別してまとめた結果、せっかくの分類が機能を発揮しておらず、棚が荒れた状態に。
ある程度、詳しい人間からすると「なんで、コレがここにあるの?」みたいなことが多々。
おかげで棚を眺めているだけで、とってもストレス。
かえって客の利便性を下げることに……。
馴染みの店員さんをつかまえて「どういうことなの?」とたずねれば、新しい店長の指示で行った改悪らしい。
新店長としては「より宝探し気分を高めた」つもりらしいのだが、お客から不評なのは言わずもがなであろう。
ミヨちゃんは「やれやれ」と肩をすくめ、ヒニクちゃんがおもむろに口を開いた。
「他所から来た人間が犯しがちなミス」
元いた業界ではこうだったから。前の店ではこうだったから。
過去の成功体験をそのまま安易にスライドしてもウマくいく
わけじゃない。金持ちになれる本を読んでもなれないのと同じ。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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