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しおりを挟むとある化粧品の代理店の前を下校中に通りかかったミヨちゃんとヒニクちゃん。
自宅兼販売店にて、表のポスターや看板はすっかり色あせており、いまではちょっとレトロ感が漂う昭和スタイル。
店主もご新規さんの獲得に躍起になることもなく、ご贔屓筋とゆるゆる商売を続けているだけ。
お客さんもお店におしゃべりに来ているのか、買い物に来ているのかわからないような雰囲気。
かつては化粧品が購入できる場所は限られていた。
でもいまではドラッグストアが乱立し、スーパーマーケットやホームセンターでも扱っている。それどころか百円均一でもそこそこの品が手に入る時代。
わざわざその店で買う理由がないので、若い人が入店することもない。
それどころか、ここで化粧品が買えることすら知らないのかもしれない。
「時代がかわろうとも、女性の美へのしゅうちゃくはかわらないねえ」
お店を前にしてしみじみとミヨちゃんが言った。
「そういえば今年もキレイな女性の顔ランキングとかが発表されていたね」
世界中のモデルやら女優などのキレイ処を選りすぐって、その年のもっとも美しい女性を決めちゃおうというイベント。
昨今、容姿のみで女性をランキングするのはいかがなものか?
という意見もずんずん増えているというのに、まったく空気を読まないイベント運営側は、我が道を突き進む。
当然ながら賛否両論が世に渦巻いており、ネットは大賑わい。
しかしそれすらもが、きっと運営側にとっては「してやったり」なのであろう。
「顔だけで判断するなんて失礼! って怒る人もいれば、べつにいいじゃん。キレイだってホメられて気を悪くする人なんていないんだし。って意見もあるんだってさ」
本音と建て前。
正論と異論。
キレイごとと、世の実情。
どちらの言い分もわかるし、どちらの言い分にも共感を覚えるし、どちらの言い分にも首をかしげる点もある。
時代によってかわるし、国によってもかわる。年代やら性別、信仰上の理由からもかわる。
とかく「美」の問題はむずかしい。
これに付随されるようにて持ち上がる「心」の問題もまたむずかしい。
「ココロのキレイって何? みにくさが顔に出るっていうけれども、だったら犯罪者なんてこの世からとっくに消えているよね」とミヨちゃん。
水商売の女性や営業職の人は、お客さまにとびきりいい笑顔をみせる。
お年寄りを騙すような悪い人たちもまた、とびきり人懐っこくてチャーミングな場合が多い。だからこそ、みんなコロリとダマされる。
つまり見た目や言動なんてものはあてにならないということ。
そして相手のことをよくよく知ろうと思えば、それこそ年単位のつき合いが必要。
でもたとえ生涯を寄り添ったとて、自分の伴侶のことがよくわかっていなかったなんてこともあるから、人間ってわからない。
「ランキングがいいかわるいかは別にして、単純に顔だけで決めるのは、わかりやすくて、いさぎよい気がするんだけど」
まぁ、だからといって勝手にノミネートして査定するのは失礼だから、せめて事前に当人に了承をとるべし。
とはミヨちゃんの意見。
これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「悲しいかな、異議を唱える人もまた美に属するばかり」
世間から美人とされている人が言えば「なるほど一理ある」
そうじゃない人が声高に叫べば「ひがみかよ」と嘲られる。
何を発するのかより、誰が発するのかを見ているうちは、
世の中、当分ダメダメだということ。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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