ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

755 ばくろ

　
　芸能人のスキャンダル。
　過去の関係を相手の女性に暴露されて、火だるまとなりてんやわんやとなる俳優や芸人、あるいはスポーツ選手なんかがけっこういる。
　噂ではそれを目的としてわざと近寄ってくる悪質な女性もいるんだとか。
　女の勲章、あるいは箔付け。
　遊び感覚の狩りだというから、おそろしい。
　狩猟本能は男性だけのものではなかったのである。
　そういえばライオンでも狩りをするのはメスと決まっている。
　カマキリだって、メスがオスをばくばく食べちゃう。
　あるサメの種類ではメスがでっかくて、オスがおどろくほどに小さいなんてことも。
　はたして調子にのってのぼせた男が悪いのか。
　それともそんな遊びをする女が悪いのか。

「でも、そういうのって、何だかいやかな。昔付き合っていた女のことを、得意げにべらべらしゃべる男とか、ぜったいに許せない」

　とは、アイちゃんのご意見。
　クラスのオシャレ番長は、精神年齢も一番高いのだ。
　それゆえにその手の話は墓場までもっていけというご意見。

「こっそり写真をとったり、録音したり、あげくには週刊誌に情報を売る女もたいがいだよ。ハメられたスポーツ選手が気の毒すぎる」

　とは、リョウコちゃんのご意見。
　地元のサッカーチームに所属している運動少女からすると、そのせいで自分の好きな選手がスキャンダルに巻き込まれたり、チームが被害を受けるのは困るとのご意見。
　ただし、家庭持ちがそんな女の誘いにホイホイのったケースでは、同情するに値せずと、少々厳しい。

「っていうか、その手の話ってよく聞くけど、そんなにポンポンと『お持ち帰り』って、できちゃうものなの？」

　とは、チエミちゃんの疑問。
　芸能人の合コンやら飲み会で、ちらほら聞く都市伝説。
　しかし偉大なる凡と裏で言われるほどの、平均的な一般人である幼女からすると、ちょっと理解できない感覚。
　テイクアウトのハンバーガーじゃああるまいし、そんなバカな。
　なんぞと首をかしげている。

「ばくろ本もどうかと思うよ。とくに王族とかは、やったらダメでしょう。ああいうのをうしろ足で砂をかけるとか、たつトリあとをにごす、っていうんだよね。なんていうかエグすぎる」

　とは、ミヨちゃんのご意見。
　完全に嫌がらせレベルにて、それを出版する出版社もだが、それを書く当人もかなりイカれている。そしてそんなくだらない本をけっこうなお金を払って購入する読者層も理解不能。
　そんな本を読まなくたって、世の中にはもっと有益でおもしろい本や少女マンガがいっぱいあるというのに、なんてもったいない。資源と時間は有限なのに……。

　世の中に完璧に守られる秘密なんて存在しない。
　それはもっとも身近な女の友情が証明している。「ぜったにヒミツだよ」が守られたためしがない。だからとて、自らべらべら吹聴するのはちがうでしょう。
　というのが大勢のご意見。
　これを受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「暴露本に関しては電子書籍で十分」

　ビニール袋を減らしましょう。環境問題のために。
　ペットボトルの使用を控えましょう。環境問題のために。
　紙の本を作るのに消費される自然を考えれば、
　しようもない暴露本もその枠でいいと思うの。
　……なんぞと、コヒニクミコは考えている。