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704 きせき

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 人が二人以上集まれば、必ず起こるのが争い。
 とっても仲がいい友だち同士ですらもが、ときにはケンカをする。
 親友にて互いのことを肉親よりもわかっている者同士ですらもが、ときにはケンカをする。
 愛し合っているはずの恋人同士ですらもが、ときにケンカをする。
 愛し合って結婚したはずの夫婦ですらもが、ときにケンカをする。
 半世紀以上も寄り添った老夫婦ですらもが、ときにケンカをする。
 血を分けた肉親同士ですらもが、ときにケンカをする。
 とある主張をする集団と、べつの主張をする集団が、ときにケンカをする。
 とある国と国境を接している国が、ときにケンカをする。
 とある国と、海を隔てたはるか向こうの国が、ときにケンカをする。
 誰かと誰かのケンカに、まったく関係のない誰かさんが混じって、ときにケンカをする。

「そりゃあ、イヌネコだってケンカをするんだもの。人間だったらなおさらだよ」

 とは誰かが言った言葉だったか?

「人類が発生して以来、争いが絶えた日は一日たりともない」

 とも誰かが言った台詞であったか?
 数多の宗教が、この悲しい現象を喰い止めようとがんばった。
 数多の政治家が、悲劇を二度と繰り返すまいと、がんばった。
 数多の啓蒙家が、哲学者が、芸術家が、指導者が……、なんとかしようと立ち上がっては、がんばった。
 けれども、ちーっとも無くならない。
 いつもどこかで誰かがケンカをしている。

 トボトボと二人して土手の遊歩道を散歩中の幼女たち。
 ミヨちゃんが空を見上げて言った。

「なんだか空がきれいになった気がする」

 世界中がわちゃわちゃしている。
 けっこう長引きそう。数か月単位はかかりそう。
 そのせいで、モノ、ヒト、カネ、その他もろもろの動きがすっかり鈍くなった。道路を走っている車もずいぶんと減った。工場も止まっている。
 そのせいか、大気汚染がかつてない規模にて激減し、空がふたたび本来の青さを取り戻しつつあるという、この皮肉な現状。
 そして……。

「もう戦争どころじゃないって、どんどんヤメちゃってるらしいよ」

 ミヨちゃんの言葉の通りにて、ドンパチしている場合じゃないと、みんなてんやわんや。
 かつて誰もなしえなかった奇跡。
 それを実現しかけている相手が、アレなもので、素直にこれをよろこべない。
 心中複雑なミヨちゃん。「なんだかなぁ」とつぶやいたところで、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「いっそのこと、これを機会にみんなの休日を決めればいい」

 年に三回ぐらい、誰も何もしない期間をもうける。
 たぶん下手な環境対策とかをして、ムダに予算を垂れ流すより、
 みんなが家でじっとしている方が、よっぽど効果的。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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