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693 まなー

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「近頃の若いやつは、マナーがなっちゃいねえ」

 どこぞの年寄りがぶつくさ文句をこぼす。

「そういう年寄り連中だって、たいがいヒドイぞ」

 どこぞの若いのが、「あんな風にはなりたくねえや」と吠える。

 例えば横断歩道。
 ほんの五メートル先には信号とセットであるのに、そこまで行く労を惜しんで、道路を横断。
 若いのは自転車でシャーッと。
 いきなり飛び出すもので、車を運転している方はドキリとさせられる。
 若くないのは、よちよち歩きながら。
 当人は間に合うと思っているけれども、わりとギリギリアドベンチャーにて、これまた車を運転している方はドキリとさせられちゃう。

 例えばゴミ。
 町内のルールで決められた分別を守らずに、ごちゃまぜにしてポイっ。
 これは老若双方にある。
 道端へのポイ捨ても、これまた老若双方にある。
 これだけ禁煙ブームにて、愛煙家には肩身の狭くなった世の中なのに、あいも変わらずタバコのポイ捨てはある。喫煙家が絶滅危惧種になりつつあるというのに……。

 例えば行列。
 何かの販売とかの列ならば、わりとキチンと並んでいるので、あまり割り込みとかはしにくい。まぁ、それでも平然とやってトラブルになる人が稀にいるけれども。
 身近に多いケースでは、エレベーターとか電車の乗り降り。
 どうしてもごちゃごちゃしやすいので、どさくさ紛れに割り込む者がちょいちょい。
 これに関しては、若いのよりもやや年寄りの方が多めか?

 例えば乗り物の座席。
 優先座席は除外して、それ以外の場合。
 これは育った世代による認識のちがいが大きい。
 かつては子供は立って、目上に席は譲るものという時代があった。
 けれども今では子供がちょろちょろしているとかえって危ないからと、席に座らせる考えもある。
 若いのが老人に「どうぞ」と譲ったら、「年寄り扱いするな!」と逆切れされたなんて話もある。
 かと思えば、さも譲られるのが当然とばかりに踏ん反りかえっている、かんちがいしている方も多々いる。
 若いからとて、じつは病院帰りとか、体調が思わしくなかったり、ケガをしていることだってある。
 逆に老人だからとて、エベレストやキリマンジャロなんかを踏破するような猛者もいる。
 見た目や年齢だけでいちがいに判断はできない。

 どうして素直に「ありがとう」「どういたしまして」って言えないのかなぁ。
 社会のマナーを啓発するポスターを前にして、つぶやいたミヨちゃん。コテンと首をかしげたひょうしに、クセっ毛の端がピロロンと跳ねた。
 これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「重ねた年齢と成長は必ずしも比例しない」

 むしろ体力や気力はピークを過ぎたら、緩やかに下降。
 いつの世も若者はキレやすく、また年寄りもキレやすい。
 総じて人はキレやすい生き物。上の口も下の穴も。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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