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678 こんじゃく

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 歩き慣れた通学路。
 テクテク歩くのは、ミヨちゃんとヒニクちゃんの二人の幼女。
 土手の上の遊歩道を歩くと、左手には川の流れ、右手には街並みが広がっている。
 つと立ち止まったミヨちゃん、街の方を眺めつつ言った。

「昭和、平成、令和……、なかにはもっと古い時代の建物もあるから、そう考えると街ってスゴイよねえ」

 新旧ごちゃまぜ。
 建てたり、壊したり、区画を整理したり、あえて保存したり、線路や道路が通ってガラリと姿をかえたり、そこだけとり残されたようにちっとも変化がなかったり。
 日々の積み重ねにて現在がある。
 当たり前といえば当たり前なのだが、改めて考えてみると、「へー」と感心しちゃう。

「そういえばさぁ、お年寄り連中が集まるときまって『昔と比べていまの若いのは』とか『俺たちの時代はこうだった』みたいな話が出るじゃない? アレってどう思う」

 年末などになると、増えるテレビの特番は一年を振り返るもの。
 あんな事件があった。こんな話題があった。そんな流行もあったよね。
 目まぐるしく動く世相。次々とイベントが起こるから、「あー、そんなこともあったよねえ」ということもしばしば。
 その番組の中のコーナーにて、時代ごとに振り替えっては現代と比較されることも多い。
 古きに学び、新しきを知るという目論み。
 これらを踏まえて、ミヨちゃんは常々考えてしまう。

「確かに昔はハードだったかもしれない。戦争なんて持ち出されたら、何も言えやしないよ。でもね、今だってけっこう負けず劣らずハードだと思うんだよねえ」

 戦争、天災、人災、乱高下する経済、混迷する世界情勢、変化するパワーバランス、迷走する政治と国家運営、次々と登場する新技術、事件事故、突発的に流行する伝染病……。
 喜劇と悲劇が盛りだくさん。
 きっとこれからもいろんな出来事が発生することであろう。

「大人たちはまだいいよ。自分のチカラで荒波を泳いでいけるんだもの。でもわたしたち子どもはどうしたらいいの? 大人たちの気まぐれで、ずっとふり回されっぱなしだよ」

 教科書の内容が変われば、勉強する内容も変わる。
 社会の制度が変われば、それに従わざるをえない。
 試験の仕組みが変われば、試験勉強の方法も合わせる必要がある。
 そのくせかけられる予算は、どんどん目減りする一方。
 なのに知らぬ間に借金を背負わされて、負担ばかりがずんずん増していく。
 恩恵はあまり実感できない。
 未来に展望が抱けない。ぶっちゃけお先まっくら。
 な、気がしなくもない。
 ミヨちゃんがひとしきり不安を吐き出したところで、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「安心感が経済を回す」

 将来に希望が見いだせないから、ずっと俯いたまま。
 なのに現状では、釣った魚を気まぐれに与えるかのような行為ばかり。
 道具を渡し釣り方を教えないと、マジで姥捨て山とか復活するかも。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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