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しおりを挟む商店街をテクテク歩いていたミヨちゃんとヒニクちゃん。
ドラッグストアの前を通りがかるとチラシが張り出されてあった。
『トイレットペーパーとティッシュ、売り切れ中』
世界にて同時多発的に発生した山火事やら森林火災。
とんでもない規模にて広がり、何日どころか何週間、下手をすると数か月にもおよんでボウボウと燃え続けている。
焼けた土地面積なんて、下手な小国よりもずんと大きい。
宇宙から衛星越しに映し出された映像を見れば、それこそ大地が燃えているように見えるほど。
何気に世界滅亡の危機じゃないの?
と、驚くほどに燎原の火が席捲。
それだけ大量の森林が燃えれば、焼け出される野生動物は数多。
人間だって逃げ出すことに。
たとえ完全に鎮火したとて、ここまで被害が出てしまうと、もはや元の環境に戻るのはほぼほぼ不可能っぽい。
植物はわりとタフだから、またにょきにょき生えてくるかもしれないが、問題は動物の方。
ふだんは我が物顔にて大地を闊歩しているケモノたち。
人間もこれに含まれるのだが、存外、環境の変化に弱い。
草食動物たちはエサがない。住処となる森も草原も失せてしまった。大移動して活路を見出せるモノなどほとんどいない。
そうなると草食動物らをエサとする肉食動物たちも、大弱り。
ドミノ倒しに崩れていく自然環境。地球規模にて長く影響が残ることは明白。
で、紙の材料となるのが木。
ただでさえ森林伐採が問題化していたところに、今回の大火事にて、ムダに灰となってしまった材料たち。
材料が失せれば、製品が作れない。
それゆえに「トイレットペーパーやティッシュが手に入らなくなるかもしれない」というデマが拡散されてしまったがゆえの、この売り切れ中。
「テレビで心配いらない。十分な在庫があるって言っても、どこもこんな調子だよね。いまや影響力はテレビよりもスマートフォンの方が強いってことを、まざまざと見せつけられたような気がするよ」
ドラッグストアの軒先に設けられたトイレットペーパー売り場。
すっからかんとなっている場所を前に、ミヨちゃんがぼそり。
「いまやスマートフォンのひとつも持っていないと、ロクに情報も入ってきやしない。こういうのを情報弱者っていうんだってさ。クーポンとかお得な割引、キャッシュレスの還元サービス……。なんでもかんでもスマホ、スマホって、いまやスマホを持ってない者はヒトにあらずって感じだよ。せちがらいよ。幼女とお年寄りと家計にやさしくないよ。月の料金ぼったくりだよ」
そんな情報弱者ゆえに、デマにおどらされることがないという皮肉な状況。
こうなると便利も良し悪しだと、ミヨちゃんがひとしきり文句を吐き出したところで、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「オイルショックの頃から、いちミリも成長していない」
二十四時間、三百六十五日、いつでもどこでもだれでも情報ゲット。
なのにやることなすこと、トンチンカンなことばかり。
先進国を名乗っている国の人々すらがコレだもの。度し難きはヒトか。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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