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655 すぽっと

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 血にかかわる罪を犯したものが落ちるのが血の池地獄。
 あるいは聖なる水域を穢した女性たちが落ちる場所。
 もしくは有名温泉地にいくと、ある赤い熱泥の池。
 それが血の池と呼ばれるモノ。
 お寺にある地獄絵図とかでは、わりとお馴染み。
 針山か血の池かというぐらいに、メジャーな存在。
 女性だけ落ちるとか、いささか腹立たしいものの、ずっと昔の男尊女卑が全盛期にて、女性は穢れているとされていた愚かな時代の話なので、いったん脇へと置いておく。

 そんなおどろおどろしいシロモノが、なんとミヨちゃんたちの住む地域に出現!
 という、ウワサが聞こえてきた。
 中学校の裏山の向こう側。中腹の林の中にあるお池がそうなんだという。
 わりと近所にて、「よし、いっちょ冷やかしに行ってやろうか」と思い立ったミヨちゃんたち。
 イヤがるアイちゃんを半ば強引に連れて、例の場所へと向かう。

 ミヨちゃん、リョウコちゃん、チエミちゃん、アイちゃん、ヒニクちゃんの五人組。
 よちよちと裏山に設置された階段をのぼる。
 山となっているが丘程度の高さにて、元気なお年寄りならば軽く超えられる程度の傾斜。
 とはいえスポーツ万能にて、足が長く背が高いリョウコちゃん以外の幼女たちには、そこそこしんどい道程。
 オシャレな格好をしているアイちゃんと山道の類は特に相性が悪く、額に汗して「ふーふー」息も乱れがち。
 団地暮らしにて、階段には慣れているはずのチエミちゃんですらもが、「けっこうヘビーだね。大自然、なめてたよ」

 それでも互いを励ましつつ、進んでいくと上から中学生とおぼしき女子の一団がやってきた。

「あら? あなたたちも血の池を見に来たの。えっ、どうだったかって? うーん、それを教えたらネタバレになっちゃうし。せっかくここまで来たんだから、自分の目で確かめたほうがいいでしょう。この少し上にある広場にある脇道から行けるから。でも途中、道が細くなってるから気をつけてね。あと暗くなるまえに帰るのよ」

 優しいお姉さんからのアドバイスを受けて、幼女探検隊は目的地を目指す。
 石段をようやくのぼりきり、脇道へと足を向ける。
 周囲の木々は葉がすっかり落ち、木肌もむけてしまっているのか、どれもこれもが白く枯れ木のよう。
 なんともさみしい風景にて、「まるで骨みたいだ」とつぶやいたのは、誰であったか。
 そんな雰囲気もあって、ちょっとビクビクしつつ前へと進み、ついに話題のスポットへと無事に到着。

「池だねえ」とチエミちゃん。
「池だな」とリョウコちゃん。
「わりとキレイよね」とアイちゃん。
「少なくとも赤くはない」とミヨちゃん。
「……」黙ったままのヒニクちゃん。

 竿を垂らしたら、そこそこ外来種が釣れそうなお池というか、ため池?
 血の池とは似ても似つかない場所。

「てっきり不法投棄とかで、ヤバい液体の入ったドラム缶でも捨てられてるのかと思ってたけど、キレイなもんだな」
「いやいや、こんなところまでドラム缶を担いでくるのなんてムリだから。不法投棄とかって、こっそり楽に捨てられる道路沿いが基本らしいよ」

 リョウコちゃんとチエミちゃんがそんな会話をしているのを、聞き流しながら「デマだったか」とガッカリしているミヨちゃんと、怖い目に合わずにすんだとホッとしているアイちゃん。
 それらを横目にヒニクちゃんがぽつり。

「正体見たり、枯れ尾花」

 心霊スポットとかいって騒がれている場所って、たいがいコレ。
 っていうか、本当に危ないところはきちんと立ち入り禁止となっている。
 もちろん霊的な意味ではなくて、物理的に危ないとの理由から。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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