655 / 1,003
655 すぽっと
しおりを挟む血にかかわる罪を犯したものが落ちるのが血の池地獄。
あるいは聖なる水域を穢した女性たちが落ちる場所。
もしくは有名温泉地にいくと、ある赤い熱泥の池。
それが血の池と呼ばれるモノ。
お寺にある地獄絵図とかでは、わりとお馴染み。
針山か血の池かというぐらいに、メジャーな存在。
女性だけ落ちるとか、いささか腹立たしいものの、ずっと昔の男尊女卑が全盛期にて、女性は穢れているとされていた愚かな時代の話なので、いったん脇へと置いておく。
そんなおどろおどろしいシロモノが、なんとミヨちゃんたちの住む地域に出現!
という、ウワサが聞こえてきた。
中学校の裏山の向こう側。中腹の林の中にあるお池がそうなんだという。
わりと近所にて、「よし、いっちょ冷やかしに行ってやろうか」と思い立ったミヨちゃんたち。
イヤがるアイちゃんを半ば強引に連れて、例の場所へと向かう。
ミヨちゃん、リョウコちゃん、チエミちゃん、アイちゃん、ヒニクちゃんの五人組。
よちよちと裏山に設置された階段をのぼる。
山となっているが丘程度の高さにて、元気なお年寄りならば軽く超えられる程度の傾斜。
とはいえスポーツ万能にて、足が長く背が高いリョウコちゃん以外の幼女たちには、そこそこしんどい道程。
オシャレな格好をしているアイちゃんと山道の類は特に相性が悪く、額に汗して「ふーふー」息も乱れがち。
団地暮らしにて、階段には慣れているはずのチエミちゃんですらもが、「けっこうヘビーだね。大自然、なめてたよ」
それでも互いを励ましつつ、進んでいくと上から中学生とおぼしき女子の一団がやってきた。
「あら? あなたたちも血の池を見に来たの。えっ、どうだったかって? うーん、それを教えたらネタバレになっちゃうし。せっかくここまで来たんだから、自分の目で確かめたほうがいいでしょう。この少し上にある広場にある脇道から行けるから。でも途中、道が細くなってるから気をつけてね。あと暗くなるまえに帰るのよ」
優しいお姉さんからのアドバイスを受けて、幼女探検隊は目的地を目指す。
石段をようやくのぼりきり、脇道へと足を向ける。
周囲の木々は葉がすっかり落ち、木肌もむけてしまっているのか、どれもこれもが白く枯れ木のよう。
なんともさみしい風景にて、「まるで骨みたいだ」とつぶやいたのは、誰であったか。
そんな雰囲気もあって、ちょっとビクビクしつつ前へと進み、ついに話題のスポットへと無事に到着。
「池だねえ」とチエミちゃん。
「池だな」とリョウコちゃん。
「わりとキレイよね」とアイちゃん。
「少なくとも赤くはない」とミヨちゃん。
「……」黙ったままのヒニクちゃん。
竿を垂らしたら、そこそこ外来種が釣れそうなお池というか、ため池?
血の池とは似ても似つかない場所。
「てっきり不法投棄とかで、ヤバい液体の入ったドラム缶でも捨てられてるのかと思ってたけど、キレイなもんだな」
「いやいや、こんなところまでドラム缶を担いでくるのなんてムリだから。不法投棄とかって、こっそり楽に捨てられる道路沿いが基本らしいよ」
リョウコちゃんとチエミちゃんがそんな会話をしているのを、聞き流しながら「デマだったか」とガッカリしているミヨちゃんと、怖い目に合わずにすんだとホッとしているアイちゃん。
それらを横目にヒニクちゃんがぽつり。
「正体見たり、枯れ尾花」
心霊スポットとかいって騒がれている場所って、たいがいコレ。
っていうか、本当に危ないところはきちんと立ち入り禁止となっている。
もちろん霊的な意味ではなくて、物理的に危ないとの理由から。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる