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642 すうじ

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 若者がテレビを見なくなったと言われるようになって久しい。
 その証拠に視聴率はずんずん低下。
 社会現象を巻き起こすようなドラマでさえも、せいぜい二十パーセント前後。
 かつては五十パーセントを連日超えていた時代と比べれば、散々たる結果。
 けれども昔と比べて、いまでは娯楽がわんさか増えたから、それもムリからぬこと。
 それにやることも、やれることもたくさんにて、みんな忙しい。
 テレビだけに割ける時間は、どうしたって減っていく。
 逆に考えれば、かつてはテレビが家庭の中心だったとも言えなくもない。
 それでもわりかしテレビの電源をつけっぱなしにしている人は多い。
 外から帰ったら、まずはリモコンの電源をポチっとする。
 とくに見てはいないけれども、BGMがわりにつけている人もいる。
 中にはゲームやインターネットをしている一方で、テレビもちらちら見ているなんて猛者もいる。
 実況とかで忙しい人も。
 そしてなんだかんだで影響力はやはり絶大。
 ちょっと「アレが美容にいいらしい」との情報が垂れ流されたら、翌日には店頭から商品がごっそり消える。
「あの病気にはこの食材がいい」と聞けば、こぞって群がる消費者たち。
 やらせだの、誤報だの、出演者がトラブルを起こしただのと、なにかと不祥事があろうとも、映像電波のことを根底ではみんな信じている。

「で、ドラマの話なんだけど、やたらと数字を気にし過ぎだと思うの」

 視聴率。
 ある地区における、対象番組が見られている割合を表す推定値。
 なお視聴率には、個人視聴率と世帯視聴率の二種類があるけれども、一般的には後者のことを指す。

「新しいドラマがはじまるでしょう? そうしたら決まって初回の視聴率はどうの、二回目は下がったの上がったのって」

 視聴率が高ければ、それだけみんなに見られている。
 それだけ社会の注目が集まっている証拠。
 そしてこれが継続されることにって、ドラマの内容の良し悪しも判断されるが……。

「ヒットするのって、時間帯とかタイミングとかあるよね」

 どれだけ立派なヒューマンドラマでも、放送される時間や曜日の影響がでかい。
 視聴者を世帯とひとくくりにしても、チャンネルを握っている人物は、わりと時間ごとに変化している。
 子どもがメインの時間帯、お父さんがメインの時間帯、お母さんがメインの時間帯、祖父母がメインの時間帯といった具合に。各々がテレビを保有しているケースも多々。
 また各局にて似たり寄ったりの題材が重なることもある。
 やたらと医療モノだらけになったり、刑事モノだらけになったり。
 またマジメな内容と軽いタッチの内容とでは、どうしたって軽いほうに数字が偏る。
 いかにいい内容でもシンドイ想いをしたくないのが人情。
 テレビで疲れるのはイヤという人も多く、どんどん増加傾向にある。

「なのに『あの女優は視聴率が稼げない』とか、『あの俳優はもうダメだ』というのは、ちょっとひどくない?」

 たしかに役者にも優劣がある。
 存在感抜群な人、人気がスゴイ人、演技が上手い、かっこいい、キレイ、逆に微妙だけど味がある、個性的というものから、「絶対に事務所のチカラだろ、コレ」という配役まで。
 けれどもいち視聴者としてミヨちゃんは、声を大にして言いたい!

「ぶっちゃけ中身だから。シナリオがつまらないと誰が演じてもいっしょだから。っていうか役者のプライベートの問題とかどうでもいいし! むしろ役者の人気に頼ってるんじゃねーよ!」と。

 面白いお話があってこその視聴率。
 どんなに名優が全力でがんばったって、お話がクソつまらなくてはどうしようもない。
 どこの誰に向けての主張なのかはわらかないが、ミヨちゃんの声を受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「オリジナルを書ける人が絶滅の危機」

 制作側が視聴者ではなく、スポンサーの顔色ばかり見ている。
 そんなスタンスで制作された作品が面白い道理がない。
 マーケティングとかに踊らされ、置きにいったモノは、
 どこまでいって、そこそこの域をでることはない。トガれ!
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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