ミヨちゃんとヒニクちゃんの、手持ち無沙汰。

641 ちか

　
　各地にて次々とイベントが中止されたり、自粛されたりしている。
　風邪っぽいけど風邪じゃなく、インフルエンザっぽいけどそれともちがう病気が猛威を振るっているからだ。
　アイドルたちの握手会は中止になった。
　夢の国ではお客とキャストたちの間に実際の距離とココロの溝ができた。
　ゆるキャラに無邪気に抱き着くこともご遠慮ください。
　カメラの世界的な見本市が中止となったけれども、なぜだかモーターショウはやっている。
　映画館から客足が遠のく一方で、スポーツ観戦はそうでもない。
　対応がまちまちにて、どうしたものやらと不安になって病院にいったら、そこで感染しちったりするから、「えー！」
　衛生管理がトップクラスの病院にて院内感染している時点で、街のどこにいてもうつるような気がする。
　かといって、怖がってずっと家に閉じこもっているわけにもいかない。
　極力、人混みには近寄らないとかいっても、学校に通う子どもたちなんて、毎日、いやでも大勢の子らと交わることになる。
　で、マスコミはさんざんにあおった挙句に「みなさん、おちついて」とか同じ口で言い出すから、もうわけがわかんない。
　そんな状況がしばらく続くうちに、「あー、もう、なんかめんどうくさい。マスクしてもダメって、どうすりゃいいのよ。そもそもマスクもアルコール消毒もどこにも売ってないってーの」となって、ついには「なるようにしかならん」と開き直る。

　これが現在のミヨちゃんの周囲の反応。
　そりゃあ、うがい、手洗いには気をつけるし、外出も控える。
　だからとて社会生活を止めるわけにはいかないから、あとは野となれ山となれ。

「小学二年生の身としては、じーっと事のなりゆきを見守るしかないんだよねえ。で、思うんだけど、コレってとっくに世界中に広まってるよね？　飛行機とか船とかでいっしょに過ごしていると、けっこうな確率で感染するみたいだし、自覚症状がない人もいるっていうから」

　検査をしても陰性。二度目も陰性。でも三度目で陽性反応が出ちゃう！
　どうしてこのような現象が起こるのかというと、体内にあるウイルスなり菌なりの数のせい。
　ある程度の量に増えてくれないと陽性にならない。
　よくよく考えてみれば当たり前のことだけど、とっても怖いことでもある。
　とどのつまり、「だいじょうぶ」があまりアテにならないということだから。

「へへん。うちは厳格に対処しているから国内に入る前に完全シャットアウトだぜ。おまえんところは対応が甘いんだよ。緊急事態に人権とか法律がどうとか、頭カチカチなんだよ。ばーか」

　とかいう感じのことを海外のマスコミやら専門家とかいう人が言っているけれども、ぜひととおたずねしてみたい。

「ちゃんと追跡調査しているの？」「何度も検査したの？」「そもそも国によっては気軽にお医者さんにかかれないよね？」

　出てないのではなくて、出ていても把握できてないだけなんじゃあ……。

「まっ、それはそれとして、ぶっちゃけ大国でのインフルエンザの流行の方が問題のような気がする」

　ミヨちゃんはとっても危惧している。
　だって罹病者数の合計二千二百万人だよ！
　死亡者数は一万二千人だよ！
　べつにどっちが上だの下だの言うつもりはないけれども、これってけっこうヤバくない？
　そしてつくづくミヨちゃんは思うのだ。

「インフルエンザの大流行を抑えられない国が、最新式のやつをどうにかできるものなのであろうか」と。

　ごもっともな意見を受けて、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。

「ムリ」

　とっとと病気の流行が沈静化してくれないと、あちこちに問題が生じる。
　工場が止まり、物流も滞り、人の動きも阻害され、景気は確実に下がる。
　目下、危機的状況を迎えているのは地下アイドルたち。このままだと
　せっかく華咲いた文化とスターの芽が絶滅しかねない。ヘルプ！
　……なんぞと、コヒニクミコは考えている。