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しおりを挟む理科の授業で顕微鏡を見て、目には見えない世界を垣間見たとき。
単純に「すごい!」とよろこぶ子どもがいる一方で、「なんだかこわい!」とおびえる子どももいる。
前者は知的好奇心をすくすく育てれば、末は博士か大臣か。
後者はこれをキッカケにして潔癖症になったりして。
知識とは禁断の果実。与えられたからとて必ずしも益になるとは限らない。
世の中には知らずにいれば幸せでいられることも、ままある。
また同じ教育を受けても、感じること、学ぶこと、理解すること、印象や影響、その他もろもろ、子どもによって千差万別。
だからこそ教育はむずかしく、だからこそ教育は面白く、だからこそ教育は悩ましい。
その歴史は数千年にも及ぶが、いまだに「コレだ!」という教育方法は確立されていない。
紀元前から、あいもかわらず読み書き暗記が、なんだかんだで一番だよね。
という体たらく。
今日、ミヨちゃんのクラスは理科の時間に校庭へと出た。
虫メガネを使った実験をするためだ。
紙を黒く塗ったモノにレンズでお日さまの光を集めて、じゅうじゅう焼く。
そして「太陽ってすげー」ということを学ぶもの。
少々曇り空ながらも、雲間から差し込む陽光はチカラ強く、ピカッと光ったかと思えばレンズ越しに、あっという間に紙が白い煙を立て始める。
ぶっちゃけ楽しい。
理由はわからないけど、何だか楽しい。めっちゃ興奮する。
だから子どもたちもテンション高めにて、あちこちで夢中になってじゅうじゅうやっている。
ミヨちゃんもまた、地面にしゃがみ込んで、じゅうじゅう。
となりでヒニクちゃんもじゅうじゅう。
するとミヨちゃんがぽつり。
「これってさぁ、面白いけど、ちょっとヤバいかもしれない」
何かにハマる瞬間というものがある。
例えばマラソン、やり始めてみると気分爽快にて、長距離を走り切ったときの充足感、達成感たるや、経験した者にしかわからない悦楽の境地。
いわゆる「キッカケ」というもの。カチリと自分の中で歯車がかみあって、そこから先はぎゅるぎゅる勢いよく回るばかり。
特に幼少期に受ける影響とならば、計り知れない。
だからこそミヨちゃんは危惧する。
虫メガネから始まる火遊びロードの幕開けを。
「どう考えても、悪い予感しかしないんだけど……。バカにハサミならぬ、子どもに虫メガネだよ」
たいていの大人は子どもに「火遊び厳禁!」を申しつけている。
昔から火遊びするとおねしょすると言って、子どもを躾けているほど。
実際に火を出したらとんでもないことになるし。
もしかしたら、この中にも未来の放火魔の予備軍が……自分だって無いとは言い切れないのかも。なんぞと考えてちょっとブルっとふるえたミヨちゃん。
それを見ておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「教えて育てる。問題は何が育つかわからないところ」
ダメなことはダメとしっかり教えるのも教育の役割。
でも言われたことを鵜呑みにしないことを学ぶのも教育。
ぶっちゃけ卒業後のことまでは、面倒みてられないのもまた教育。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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