634 / 1,003
634 ますく
しおりを挟む風邪やインフルエンザが流行したり、花粉がぶんぶん飛ぶ季節になると売れるのがマスク。
そしてより重篤な症状へと発展しかねない病が発生したときには、これがもう面白いように売れていく。
通常の十倍以上もの注文が問屋や製造している会社に殺到。
ドラッグストアなどの棚からは商品が消えて、新たに入荷した端からぽんぽん売れて、あっという間に完売。
スゴイときには五分ほどでケース入りのマスク百箱が消えてしまうとか。
で、現在、世界的にインフルエンザっぽいのが大流行。
倍々にて増える感染者と、肺炎をこじらせて亡くなってしまう人も千に届こうかという猛威にて、巷はすっかりあわてふためいてしまう。
おかげでマスクが売れる売れる。
あまりに売れすぎて、転売されてとんでもない金額で取引されている。
五十枚入りのケースのマスク、ふだんは五百円以下なのにこれが十倍どころか百倍の値をつけても、売れちゃうというから驚きだ。
売る方も売る方だが買う方も買う方にて、どっちもどっち。
なお「こんな大事なときに、儲けようなんてけしからん!」と怒っている人も多いらしいけど……。
「でも商売としてはまちがっちゃいないんだよねえ。安く仕入れた品を高く売って、利ザヤをかせぐのが商売だし」
意外にも転売肯定派なのはミヨちゃん。もちろんモノには限度と節度があるので、あんまりむちゃくちゃなのはノーサンキュー。
まぁ、誰かのピンチは誰かのチャンス。
なんでも世界の幸せの総量は決まっているらしく、不幸の総量もまたしかり。
二つは天秤にて右にふらふら、左にぐらぐら。そんな感じでバランスが保たれているとの説もあるんだとか。
だから幼女的には「ほどほどにしとけよ」といった程度の感覚。
でも……。
「マスクってウイルスにちっとも効果ないって、えらいお医者さんがテレビで言ってたよ。アレをつけたからって病気にならないわけじゃなくって、誰かに病気をうつすのにはちょびっと役に立つ程度だって」
とどのつまり、高い金を払おうが、百円均一で買った品だろうが、感染リスクはほとんど変わらない。
それなのにみんな競うようにしてマスクを着用している。
理由はもちろん病気が怖いからだ。
けれどもそれに意味はないのが真実。
マジで気休め程度らしいと知って、ミヨちゃん「えー」とのけぞったものである。
「なのに売れまくっている。マスクを巡って騒動が起きている。マスクなしでちょっと咳払いでもしようものならば、周囲からものすごい目でにらまれる」
そこでいったん言葉を切ったミヨちゃん。
ややもったいぶってから言った。
「でもね、効果がないの。多少、ノドが潤うからイガイガしなくてすむけど、ウイルスは出入り自由でフリーパス。……これってようはみんなデマに踊らされている状態だよね? お守りを持ってたら必ず受験に合格するわけじゃないのと同じだよね? 交通安全の破魔矢を車に乗せていてもドカンといくときにはいくのと同じだよね?」
身も蓋もないことを口にしたミヨちゃん。「これって悪霊がどうとか言って、高いツボを売りつけるのと、どうちがうのかなぁ」と首を傾げた。
これを受けてヒニクちゃんはおもむろに口を開いた。
「マスクは病気の拡散防止の品であって、予防の品ではない」
西洋人は鼻が高いし、骨格も大きいから、マスクをつけるのが苦手。
国によっては、そもそもマスクをつけるという習慣すらもない。
本当にすごい効き目があるのならば、とっくに世界が放っておかないって。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる