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619 ファフロッキー
しおりを挟むコン、コン、コンカララン。
音を立てたのはドングリ。
校舎の階段の上から転がってきたので、足を止めたミヨちゃん。
見上げてみるも誰もいない。
しゃがんで落ちてたドングリを拾って、しげしげと眺めてみる。
するとまたしても、コン、コン、コンカララン。
二つ目のドングリがころころ。
すぐさま顔をあげたのだが、階段の踊り場はやはり無人。
さらに視点をあげてみると、天井にてチカチカしている蛍光灯が視界に入るも、それ以外は特に何もなし。
「???」
首をひねったひょうしに、ミヨちゃんのキャラメル色のクセっ毛の端がピコピコ揺れた。
拾ったドングリをスカートのポケットに入れたところで、コンカラランと音がして、三つ目のドングリが姿をあらわす。
今回はドングリころころの動きを追わずに、階段の上をばっと見る。
しかし誰もいない。
幼女は「えいや」と一段飛ばしにて階段を駆け上がり踊り場へ。
折り返し地点にて、何者の仕業かを見極めようとする。
が、その目論みは失敗に終わった。
影も形もありゃしない。耳を澄ませても廊下を逃げていく何者かの足音もせず。
わけがわからない。
なんとも不可解な現象にて、三つのドングリを証拠として教室に持ち帰ったミヨちゃんであった。
ミヨちゃんから階段での話を聞いたチエミちゃんが言った。
「あっ! それっていま話題になってる階段の怪だよ」
階段の怪。
一人で校舎北の階段の前を通りかかると、上からコロコロと物が転がってくる。
ただし、転がってくる品はまちまち。
ミヨちゃんのようにドングリもあれば、消しゴムだったり、くしゃくしゃに丸めたプリント、短くなった鉛筆、ビー玉、ゴルフボール、松ぼっくり、小石、ひな人形の首……。
数も一つきりのときもあれば、五つ以上のときもある。
ナゾの怪現象として、ひそかに話題になりつつあるらしい。
「へー、ってか人形の首はヤダな」
チエミちゃん情報をいっしょに聞いていたリョウコちゃんが、「げぇー」と舌を出す。
でもこの手の話が苦手なアイちゃんは耳をふさいで「聞こえない」と現実逃避をしていた。
「ミヨちゃんはラッキーだよ。ひどいのだと、湿り気のある脱ぎざらしの汚れたくつしたの丸まったのが、顔にびちゃりってなったケースもあるって。尋常じゃないクサさとショックで、かわいそうにその子は保健室に担ぎ込まれたって話だよ」とチエミちゃん。
もたらされる追加情報に、幼女たちは怖気をふるい、ガクブル。
「それにしても何なんだろうねえ。やっぱり動物の仕業かな?」とミヨちゃん。
「リスとかネズミとか」とはリョウコちゃん。
「あとネコの可能性もあるかも」とはアイちゃん。
「一階と二階の中間にある踊り場の鏡の向こうから……なんて話も」とはチエミちゃん。
四人がきゃあきゃあ盛り上がっているのを聞き流しながら、ヒニクちゃんがぼそり。
「ファフロッキー現象の可能性が高い」
よくわらかないモノが降ってくる現象を指す言葉。
どこから飛んできたのかわからない天狗飛礫とかのこと。
狐狸の仕業とも言うけれど、当たると病気になるとか。
まぁ、野生動物の仕業ならば、たしかに病気になるかも。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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