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547 学校の階段
しおりを挟む小学校の階段はちょっと特別。
まず大きくて広い。造りもしっかりとしている。
毎日、大勢の子どもたちが上り下りをしている。
かと思えば、授業中や放課後になるとピタリと人の気配が無くなる。
静と動、光と影、そしてちがう世界へと繋がる場所。
学校は階ごとに学年が振り分けられているので、自分の教室がある階から他の学年の階へと行くと、雰囲気がガラリと変わってドキリ。
六年生と一年生ではまるで別物。年少組からすれば巨人の国に迷い込んだ小人のよう。
五年生と六年生というたった一年のちがいでも如実にあらわれる。漂う空気が、交わす言葉が、その内容が、服装や仕草も劇的に変化。
子どもは日々、成長し進化しているということ。
そういった意味での別世界。学校の階段は一段ごとに大人の世界へと通じている。
が、そんな感傷的な側面をのぞけば、学校の階段は子どもたちの絶好の遊び場でもあるところが困りもの。
階段に腰かけての友だちとのおしゃべりは楽しい。特に夏場はお尻がひんやり涼しい。
手すりを伝って、シャーと滑り降りるのは楽しい。たいした速度は出ていないというのに。
階段を使っての鬼ごっこは楽しい。立体的な動きが加わるのはジャングルジムに通じるものがある。もっとも遊び終わったあとには、足がガクガクしちゃうけど。
グリコ遊びなんかも楽しい。
いつもの平面遊びに、上下移動となるだけで、とっても新鮮。子どもたちは人生においてマンネリこそが最大の敵だと学ぶ。
ただテニスボールを上から転がして、下でキャッチするだけでも楽しい。
ピョンピョンと跳ねては、気まぐれな動きを見せるボールに翻弄されるばかり。それなのにワクワクが止まらない。ネコやイヌたちもきっとこんな気持ちなのだろうか。
バネがビヨンビヨンとしながら、階段を降りていくオモチャがある。
スリンキーという御大層な名前がある。優美で流れるように動くとの意味があるそうだが、その名で呼ばれることはまずない。この子がもっとも輝けるステージ。それが学校の階段。マンションや団地の階段じゃダメなの? とのご意見もあるだろうが、何だかちがう。何がどうというわけではないのだが、学校でオモチャ遊びという組み合わせの妙なのだろう。ある種の背徳感?
学校の階段といえば、数々の都市伝説をも産み出してきた。
上りと下りで数が変わる階段。普段は十二なのに夜になると十三となるとか。
階段の踊り場にある大鏡。午前零時にその前に立つと、鏡の中に連れ込まれちゃうとか。
誰もいない放課後、ヒタヒタとついて来る足音。追いつかれて肩を叩かれてもけっして振り向いてはいけない。もしも振り向いてしまったら……とか。
学校の階段はマンガやアニメの世界でも、たびたびドラマを産み出すシチュエーションでもある。
少年マンガでパンチラといえば、階段。階段といえばパンチラというぐらいにラッキースケベの温床。
うっかり足を踏み外したヒロインをイケメン王子が抱きとめたり、イジワルな子がヒロインを「えぃ」としちゃうのもここ。
……といった具合に、学校の階段はそんじょそこらの階段とはちがう。
放課後のこと。
「テーテレー」という生徒に「さっさと帰れ」と促す音楽を聞き流しながら、昇降口にて上履きを履き替えていたら、ミヨちゃんが階段を見つめながらそんな話を唐突に。
「イケメンの上級生とか降りてこないかな」とのオマケ付き。
これを受けておもむろにヒニクちゃんが口を開いた。
「いいモノほど上から降ってこない」
棚からぼた餅はあまり期待しないほうがいい。
なぜなら棚の上の人が、そんないいモノを手放すわけがないから。
基本的にポイ捨てされるのは、いらないゴミと相場が決まっている。
欲しのならば自分から上に行って掴み取るしかない。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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