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546 微震

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「おはよう」の挨拶から始まる朝の教室。

 さぁ、これからまたいつもの一日がダラダラと始まるよー。
 その段になって一人、うつらうつらと舟を漕いでいるのはミヨちゃん。
 一時間目の授業から居眠りなんて論外。
 だから目をしょぼしょぼとさせながらも、必死に眠気と闘っていたが、ゆらりゆらりと頭が左右へ、酔拳のごとき動きをみせる。くせっ毛のはしがピコピコと跳ねて踊る。
 では、どうしてそんなことになっているのかというと……。

 夕食後、早々にお風呂に入り、楽しみにしていたテレビ番組を視聴後、ドラマの予約録画をバッチリ済ませて、九時過ぎには自室に入ったミヨちゃん。
 なにせ小学二年生なので、夜更かしは週末にしか許されていない。
 ならば自室でこっそりとしたいところだが、お母さんが様子を見に来るのでそうもいかない。
 だからおとなしくベッドに潜り込んだのだけれども。
 時刻は深夜の午前一時過ぎ。
 ふいにパチリと目が覚めたミヨちゃん。
 過去の経験則からいって、このような状態になるのは昼寝のし過ぎか、カフェイン系の摂取の影響、あとは地震……。
 なぜだかピコンと勘が働くミヨちゃん。ぐらりと来る前に、体がなんらかの異常を感知する。
 案の定、揺れた。
 しかし極めて軽微にて、せいぜい震度一か二レベル。
 が、それはあくまで数字上のこと。体感となるとまたちがってくる。
 ミヨちゃんの部屋は何故だか振動が強く反映する。表を大型トラックでも通ればグラグラ。柱の数も多く家の構造に問題はない。しいて理由をあげれば、細かな条件が重なってたまたまそうなっただけのこと。
 安全が脅かされるわけでもないので、そのまま。
 そんな環境下にて幼女の身ともなれば、三近い揺れを味わうに等しい。
 普段ならば「またか」ぐらいで、さらりと受け流す。
 でもその時は真夜中にて、ちゅうと半端に寝たあと。
 妙に神経が高ぶってしまい、すっかり体が目覚めてしまう。
 こうなると、もう、とても眠れやしない。

「明日も学校があるんだから、早く寝なきゃ」

 焦るほどに、遠のく夢の国。
 瞼を閉じてもちっとも眠気がやってこない。むしろギンギンにて、目を閉じていることすらもが苦痛に。それがまたイライラを募らせて、一層の興奮状態を誘うという負のスパイラルに突入。
 そして「こうなったらしようがない。ちょっとだけ」と枕元の照明をつけたミヨちゃん。
 マンガに手をのばした。
 これが大失敗。気がついたら、すっかり目が冴えてモリモリと巻数を重ねることに。
 思わぬ集中力を発揮して、すっかり作品世界にのめり込んで、気がついたら空が白じみ、チュンチュンと鳥の声が。

「やっちまった……」

 悔やんでも時すでに遅し。
 かくして今朝のごとき、ゆらゆら幼女が仕上がってしまったと。
 そんな友の姿を目の当たりして、おもむろにヒニクちゃんが口を開いた。 

「地震が来る前に目が覚める現象。案外、多いらしい」

 電磁波の乱れを感知。地震により発生する二つの波のうち、
 早い方に反応している。静電気にて毛や肌がピリリ。
 単純に横になっているので接地面が多いからとも。
 ゴーッとナゾの音が聞こえるという人もいるし、今後の解明に期待。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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