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530 渦
しおりを挟む週末、地元の神社の境内にて開かれたフリーマーケット。
お店を出すには事前申し込みが必要だけれども、「ショバ代をよこせ」なんてケチなことは言わない。場所もクジにて神頼みだから公平。
まぁ、規模も五十人ぐらいまでしか受け入れられないので小さなもの。
ご近所のご近所によるご近所のための譲渡会みたいなフリマ。
この頃ではスマートフォンでピッ、ポッ、パッと売り買いできるので、以前ほどの活気は失われつつあるものの、どっこい開催すれば人はそこそこ集まってくる。
なんだかんだで、いくつになっても「ごっこ遊び」は楽しいのである。
そこそこ賑わっている中を手をつないで歩くミヨちゃんとヒニクちゃん。
「フリマにくれば、時代の移ろいがよくわかるねえ」
しみじみそんなことを漏らしたのはミヨちゃん。
幼女の視線の先にはぬいぐるみ。
それはほんの半年ほど前に一世を風靡した癒しキャラを模した品。
大小のぬいぐるみ、キャラクターが印刷されたグッズの数々が、そこかしこに陳列されてある。しかも捨て値同然にて。
あれほどみんなから熱狂され、ちやほやされていたというのに。
世の無常を儚まずにはいられないミヨちゃん。
「何世代にも渡って愛される子もいるのに、あっという間に忘れられちゃう子もいる。この差はいったい何なんだろうねえ」
ミヨちゃんの疑問。
きっと世界中のクリエイターやデザイナーたちが知りたいこと。
そのナゾを解明することが出来れば、天下をとれる! がっぽり稼いでウハウハ。
しかしそう簡単には解けないからこそ、ナゾはナゾ。
「そういえば『気合を入れたのにかぎって、さっぱりだよ』とか、近所のお姉さんが前にぼやいていたっけ」
インターネットにて趣味で小説を公開しているというご近所の大学生のお姉さん。
内容はムキムキのファンタジーらしい。
ノート三冊分にも及ぶ膨大な設定資料。練りに練った世界観、アクションあり、友情あり、サービスシーンあり。
他にも読者に受けそうな要素がてんこ盛りにて、「絶対にイケる」と当人は確信しての投稿。
が、結果はいまいち伸び悩んでいる。
かとおもえば箸休め的に、適当に書き殴った自作の方がウケが良かったりして、お姉さんは「正解がわからない」と絶賛お悩み中。
生憎とインターネットに縁のないミヨちゃんにすれば、いまいち理解に苦しむ。
あと「原因はそこはかとなく漂っている腐臭のせいじゃないのかなぁ」とも思っている。
とにもかくにも世に隆盛があり、凋落がある。
諸行無常とは、昔の人はうまいこと言った。
なんぞという話をつらつらしながらミヨちゃんとヒニクちゃんが歩いていたら、友だちのお店を発見!
チエミちゃんが出店すると聞いていたので探していたのであるが……。
そこには例のキャラクターグッズがたくさん並んでいた。
これを見てミヨちゃんは「あー」
ヒニクちゃんはおもむろに口を開く。
「消費社会の先行逃げ切り型商売の弊害。おかげで死屍累々」
創り手側が悪いのか、売り手側が悪いのか、買い手側が悪いのか。
豊かになる。安価になる。いつでも買える。修繕するより新しいモノ。
回転ばかりがグングン上昇して、大きな渦の中でみんなあっぷあっぷ。
……なんぞと、コヒニクミコは考えている。
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