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507 巣

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 下校途中にある家の軒先にて、ピーピーと鳴き声。
 見ればツバメが巣を作っていた。
 下からだと、鳴き声と、ときおりウゴウゴしている頭とかクチバシの先っぽしか見えないけれども、五匹ばかしいるようだ。
 ミヨちゃんとヒニクちゃんが見上げていると、どこぞよりヒュルリと飛んできた親ツバメが戻ってきた。
 腹を空かして鳴いている子らに、せっせとエサを与える親ツバメ。
 えらい動物学者なんぞは、「アレは愛情からの行為ではなくて、反射行動のようなもの」とのたまう。まぁ、それは真実にて、そもそも動物の行動に、勝手に人間的な解釈をつける方が間違っている。
 だから学者先生の言ってることは、きっと正解。
 でも、あんまりにも夢がないのでミヨちゃん的にはノーサンキュー。
 子どもらにエサを与えながら、ちらりとこちらを見た親ツバメ。
 これを受けて、ミヨちゃんは自主的にやや後退して距離を置く。
 ミヨちゃんはモフモフ系との相性がとにかく悪い。蛇蝎のごとく嫌われる。当人はとっても恋焦がれているのだけれども、それは切ない片想い。よって鳥類もダメ。
 それがわかっているからの行動。ミヨちゃんなりに子育てに忙しい親ツバメに気を遣ったのである。

「ツバメって毎年、同じところに巣をつくるんだって。ツバメが居着くのは縁起がいいって、まえにやっこ姉さんが言ってた」とミヨちゃん。

 これは昔から言われていること。
 幸運を運ぶとか、富をもたらすとか、いろいろあるけれども、実際のところは家の造りがシッカリしており外敵より攻められる心配がない立地。
 そういった意味では、確かにツバメが巣をつくるお宅は裕福であるとも言えなくもない。
 とはいえ、いいことばかりでもない。
 ワンシーズン限りとはいえ、糞害にて巣の下は汚れる汚れる。
 ツバメが渡り鳥であるがゆえに、病気を運ぶと考えて、敬遠されることもある。
 昨今では人間さまにも余裕がないのか、難癖をつけては撤去しちゃうこともある。
 生き物が生きていく以上、キレイごとだけでは済まないのだ。

「なんだかどんどん、めんどうくさい世の中になってる気がする」

 ノラネコやカラスに目くじらを立てる。
 かといって放置していい問題でもない。理想は人間にも動物にも望ましい解決案が見つかることだけれども、それは現状、発見にはいたっていない。
 どれもこれもその場しのぎの方法ばかり。

「これってどっちが悪いのかなぁ? 少なくともツバメさんはちゃんと子育てしてるよね。でも人間の方は、あんまりしてないよね」

 幼児虐待、育児放棄、あげくには躾けと称して、我が子を殴り殺めてしまう愚か者も巷にはちらほら。
 痛ましいニュースが流れない日はなく、自身と同じぐらいの年の子が、そんな辛い目に会っているのを知って、ミヨちゃんはたいそう心を痛めている。
 ツバメの親子を眺めながら、ちょっと切なそうな表情をみせるミヨちゃん。
 それを見たヒニクちゃんがおもむろに口を開いた。

「そろそろ養育費の強制徴収と去勢は実施してもいいと思うの」

 養育費が払えない? マグロ漁船にのせて世界一中。
 再婚してそっちが大事? そんなヤツが幸せな家庭とかムリだから。
 幼子を殴る蹴る? 腐ったタネは後世に残さないほうがいい。
 ……なんぞと、コヒニクミコは考えている。


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